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小話(2) 小さな日常、共存する大きな日常の存在
ある夏の話です。
金曜日の朝、仕事内容や人間関係に疲れ、朝仕事に行くのが億劫で、小さな頭痛を理由に会社に行かなかった日がありました。
同じメンバーと顔を合わせ、業務進捗や体調の確認、新製品開発や工場の生産技術的課題の解決、工場内の定例の打ち合わせをこなすルーティン的な日々に心が疲れてしまったんだと思います。今考えると、小さな悩みかもしれませんが、当時は結構しんどかったです。
急な休みだったため、チームが混乱しないよう1時間ほどかけて、当日メンバーへの仕事内容の指示や会議での確認事項などをメールでフォローし、家の中で午前中はボーっとしました。
一通りボーっとした後は、綺麗な自然に浸りたい気分となり、平日の金曜日のお昼過ぎから車で市内の滝を見に行きました。
途中、ラーメン屋に行くと、平日のお昼過ぎにもかかわらず満席で、外にはお父さんと中学生ほどの男のお子さんが並んでいました。平日のお昼は働いていることが日常であった私には、このラーメンを食べている父子の風景が驚きでした。
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ラーメン屋のおかみさんが、お待ちいただいてありがとうございますと店内に笑顔で迎え入れてくれました。白醤油の優しいラーメンとともに疲れた心に沁みました。
車で人里離れた滝への散策道の入口へ。その間、山道を颯爽と駆け抜ける何人かの自転車に乗る人や車でドライブする人たちとすれ違いました。
散策道入口に着く。その道を進んでいく。
余談ですが、
「熊注意!」の看板を見ていたこともあり、癒されに来たにもかかわらず、森の中の木々の折れる音や入道雲の雷鳴、折れた大木の黒い形を熊かもしれないと疑心暗鬼で、恐怖に怯えながら進みました。しかしある瞬間、「熊が見えてから、怖がればいいじゃん!」と心の中でつぶやきました。そうして開き直った後は、ぐんぐん前だけを見て進めました。あぁ、きっと普段の会社でも見えない熊の姿に怯えていたんだろうなぁと思った。
ただそこに存在する森を30分ほどで抜け、滝つぼに到着しました。
そこには、平日の金曜日も、私の憂鬱な気持ちも、関係ないと言わんばかりに、轟々と流れ落ちる滝の姿がありました。そして、滝つぼには1組のお母さんと子供たちの姿がありました。
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毎日のルーティンが私の世界でしたが、その小さな日常を一旦抜けてみると、ラーメンをすする父子、風と一体になるサイクリストやドライバー、ただそこに存在する森や囂々と流れ続ける滝、滝つぼで遊ぶ母子といった、別の日常が広がっていました。
私の小さな日常の外に全く別の大きな日常が広がっているということに気づき、小さな日常での息苦しさから少し解放された。
自分の小さな世界の外にも多様な世界が存在することを認知することで、救われるそんな体験だった。
そういえば、10年以上前、仕事でこの街に来て間もないころ、まったく別の気持ちでこの滝を見たことを思い出した。初心に帰ろう。
ある夏の話でした。
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