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日本とアメリカのプライバシーに対する考え方は同じだけど観点が異なる仮説

最初のキャリアは超が付くくらい日本の伝統的な企業風土がある企業で始めて、今はコードクリサリスという創業者がシリコンバレーから来た二人という企業で働いていて、いろいろな面で日本とUSAの違いに気がつく。このブログではプライバシーに対する考え方を、僕なりの目線で感じていることを紹介したい。

日本はプライバシーに対してものすごく敏感な気がしている。例えばSNSでも、自分の名前や顔をさらけ出すことに抵抗感がある人。ものすごく多いんじゃないでしょうか。例えばマンションに住んでいて、一階にあるポストに律儀に名前を貼っている人。なかなかいないんじゃないでしょうか。

僕も生粋の日本人で、日本生まれ日本育ちで、海外に住んだ経験も今のところ(2021/05/02現在)ありません。そんな僕が、コードクリサリスというプログラミングブートキャンプを2018年3月に卒業したときに、SNSで、自分の名前でアカウントを作成して、自分の名前で検索したときに一番最初にヒットする情報が自分のものになるようにしなさいと教えられたときは、まじで180度考え方違うな〜と思いました。僕は元々目立ちたがりなところもあって、あんまり気にせずやりましたが、海外出身のクラスメイトですら「え、まじ?本名で?」っていうリアクションをしていたことを覚えています。

そもそもGAFAMと言われる、Google, Amazon, Facebook, Apple, Microsoftは全てUSA発で、全て情報を司る企業です。そういう意味では情報を吸い上げないと彼らのビジネスはやっていけるはずもなく、日本と違って情報をオープンにすることにあまり抵抗がない文化なのかなあと思っていました。

実はアメリカ人はとんでもなくプライバシーを気にする

が、実際に一緒に働いてみて、それはただの思い込みだったことに気付かされます。人によるかもしれませんが、少なくとも僕が一緒に働いているUSA出身の人はかなりプライバシーを気にする。ただし、そのプライバシーを気にする角度というか、側面が違います。

まず結論から言うと、USA出身の人は自分が出すべき情報と出すべきではない情報をしっかり区別しています。Aという情報はオープンにするべきだし、逆にBという情報は絶対にオープンにすべきではなく、なんなら仲間にも見せてはいけないから自分の中にだけ留めておくといったようにです。情報について、自分でガバナンスするという意識が強い気がしています。

これに僕が気づいたのは、とあるSaaSを会社に導入するときでした。みんなの仕事を楽にするためにSaaSを導入して、スタッフ内での情報共有をソフトウェアの力を使って円滑にしようと思ったのです。もちろん必要な情報はそれによって可視化できるようになりましたが、それでも全ての情報を可視化するには至りませんでした。それはお客様に関する情報が、プライバシーにより絶対に秘匿すべきで、スタッフにも見せられないものだからという主張があったからです。僕の感覚では、スタッフ内であれば良いのではないの?と思っていたのですが、プライバシーを守るためにこれは共有できないという主張がありました。ただしそれにも論理はしっかりあって納得いくものなので、僕も納得しました。

僕の以前いた会社だと、あまり会社の中で限定的なメンバーに秘匿するというのは(僕が偉い人ではなかったからか)そんなになかったんです。社内で秘匿すべき情報はなんらかの基準があって、せいぜいそれに従うまでで、社員一人一人にこの情報は開示すべきとかこの情報は秘匿すべきというこだわりがあったわけではなかった。会社という枠の中に入ってさえすれば良いという、比較的ゆるい印象があります。

今の会社で体験しているのは、結構いろいろな情報を自分でガバナンスする意識があるスタッフが多いということです。これは開示すべき、これは秘匿すべきという意見をしっかり持っている人がいる。この点が違うなと感じています。

自分でガバナンスするという意識があるか?

自分に関しての情報は自分の財産なのですが、財産は使うことによって利を得られることもあるし、当然隠すべきものもあります。自分の財産なのだから自分でガバナンスすべきですよね。使えるものは使ったら良い。むしろこれから情報化社会だから、使えるものを使わないと苦境に立たされるかもしれない。

例えば僕が直近あった例だと、LinkedInにしっかりこれまでの経歴だったりできることだったりを掲載していたおかげで、「こういうこともできるんですね!」ということで話が盛り上がることもありました。Facebookを使っていることによってある意味名刺がわりに使えるようになったし、「Aさんと知り合いなんですね!」ということでアイスブレイクがかなりスムーズにいくこともありました。

ガバナンスしないとネガティブな側面ばかり目立つ

日本では情報が悪いように使われるニュースが目立ち、もう特に考えもなしに情報を秘匿すべきという方向に向かっている気がするんですよね。

犯罪に使われてしまうのはもってのほかですが、例えば就職活動でも人事部の人がSNSを検索して、採用有無を判断されたというニュースもあります。これは一概には言えませんが、もしかすると適切に判断してあまり公にしない情報だったのかもしれません。

で、考えもなしに情報を秘匿すべきという考え方が行き過ぎると何が起こるかというと、情報化社会において活用すべきサービスを全く使えなくなってしまい、時代に取り残されるということになります。これは個人レベルでもそうですし大きな組織でもそうです。情報化社会においては、その社会で生きていきたければ待ったなしに情報を活用することが求められるので、これは受け入れて自分で情報をガバナンスする意識を持たないといけないんですよね。

例えばですけど何かのアカウントのパスワードを使い回してめちゃくちゃ簡単な文字列にしていて、それがハッキングされて情報流出して、組織として対策を打たなければならないということでがんじがらめなルールができて、情報化社会に追いついていけなくて、どんどん時代に取り残される。不幸でしかありませんね。そもそもこの時代において、パスワード一つ管理できないのでは話になりません。が、このリテラシーがない人が非常に多い。

ちょっと検索すればパスワード管理ソフトがいくらでもあります。めちゃくちゃ難しいパスワードにできて、それを覚えてくれるアプリです。そのアプリを開くには一つのパスワードだけ、もしくは生体認証だけでよく、そのアプリの情報はとある暗号技術によってしっかり守られている。

こうやって「セキュリティ」という言葉が一人歩きするんですよね。僕は「セキュリティ大事だよね」っていう人によく聞いてみたくなるんです。あなたの言うセキュリティってどういう意味ですか?答えられない人、絶対いるはず。もちろんルールはあるべきだけど、そもそも一人一人が情報をガバナンスするべきというのが出発点なのに、「セキュリティ大丈夫?」なんて言って他責にすることが一番まずい。なぜなら情報はあくまでも自分の財産だからです。他人のものではありません。

もっと情報を活用しよう

日本人とアメリカ人のプライバシーに対する比較(あくまでも個人的な観察ですが)から、もっと情報をガバナンスしようという話をしてきました。もちろんUSA出身の人でも、SNSには名前を載せたくないという人はいます。僕の知り合いにもいます。論点はそこじゃなくて、プライバシーに関してガバナンスを自分でやろうということです。なぜなら情報はお金と同じで、自分の財産だからです。使えば利益が出るし、隠すべきものは隠して自分を守る。この両方が必要です。

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