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パニック発作 02

この文章を読んで気分が悪くならない人間はいないと思うが明らかに読んでいてしんどくなってきたので、まだ大阪までには時間があったけれど読むのを止めた。

少し呼吸がおかしくなってきているのも分かった。軽い過呼吸の状態だったと思う。それでも疲れているのかなという程度の受け止め方だった。授業は普段どおり受けた。

この日は午後から、在学中の留学生が集まる懇親会があって、留学経験のある僕も招かれていた。久しぶりに英語が話せるので楽しみではあったが、如何せん体調がよくない。

懇親会の部屋にいくと留学生らしい幾人かの白人や中国人たちが日本人の生徒と談笑していた。しばらくすると三年生で経済学を専攻しているというスウェーデン人に話しかけられた。

僕は自己紹介をして、大学生活や日本文化について、ごくありきたりの会話をした。立食形式でサンドイッチやドリンクが用意されていたが僕はまったく手をつけなかった。手をつけなかったというよりは胃が食べものを受け付けなかった。

会話を進めるうちに手にびっしょりと汗をかいてきて、指先の感覚も少し薄れてきているようだった。僕は久しぶりに英語を話したせいで少し緊張しているのだろうと思っていた。でもやはり会話に集中できず今となっては何を話したかまったく思い出すことができない。

帰りの電車の中で今日はどこかおかしいと思いながら、それが何であるか突き止めることはできなかった。おかしいな、おかしいな、と焦燥感だけが募っていった。

映画でも見れば落ち着くだろうと楽観的な思いも残っていて、大学近くのビデオ屋によってまだ見ていなかったテレビシリーズのルパン三世『1$マネーウォズ』を借りた。

留学生の集いも長かったせいで家に帰るころにはちょうど夕飯の時刻になっていた。家に着くと母親が夕食の支度をしていてそこには普段と変わりない日常の風景があった。あまり食事を取りたい気分ではなかったがとりあえず母と二人で食事をした。

食後はいつものようにテレビを見ていた。このときも不整脈と軽い過呼吸は続いていたがどうすることもできないので、不快感を紛らわすために見たい気分ではなかったが借りてきていた映画を観ることにして、ビデオテープをデッキの中に押し入れた。

映画の主題歌が流れアニメーションが始まる。どういう内容でその場面までいったか思い出せないがあの場面だけは鮮明に全身が覚えている。ルパンが死んで墓地に埋められて牧師がくやみの言葉をいうシーンだ。

神の慈悲によりこの男の魂が平和に憩わんことを、土から土へ、灰から灰へ

この瞬間、宗教、神、天国、循環、という言葉が一気に頭をよぎった。それと同時に圧倒的な、完全に制御不能の恐怖が襲ってきた。アメリカのときよりさらにもっと強い。

冷たい汗が全身の毛穴から噴出し、手足の感覚が薄れ、呼吸が苦しくなり、手のつけられない恐慌状態に陥った。アメリカのときと同じようにそのままソファーに座っていたら狂ってしまいそうなのですぐに自分の部屋にかけ上げってヒサコに電話した。

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