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父の帰宅 44

松井のおば様へ

家庭の問題につき合わせてしまって申しわけありません。たぶん母一人でこの文章を読むのがつらいと思うでの一緒に読んでやってください。

松井のおばさんがいつも僕を誉めてくれて微笑んでくれると本当に元気が出ます。入院中のときもずいぶん支えになりました。

僕はK先生の本を二〇冊ほど読みました。理解できない部分もありましたが本当に素晴らしいことも書いてあったと思います。松井のおばさんからすれば当たり前のことと思われるかもしれませんが、様々な哲学書や心に傷を受けた人が読む本などと同じ内容が書いてあったと記憶しています。

僕が事故で死にかけたとき見ず知らずの男のために「宗教」の皆さん総出で僕の命を救う祈りを捧げてくれたことは一生忘れません、感謝しています。皆さんにもそう僕がいっていたことをお伝えください。

しかし母のことになると話が別になります。僕から見ると母の信仰は依存にしか見えません。「宗教」で学んだなかで僕が一番大切なことは「与える愛、無償の愛」です。その与える愛が前提の信仰であるはずなのに、過去、現在まですべて父のせいのように思われていますが母自身が僕たち三姉弟に苦痛を与え続けています。

そしてそれを理解していないことが一番問題なところです。母も心に傷を受けていると思います。そういった心の傷は次の世代に連鎖しやすいです。母は自分は意識していないと思いますが精神的、言動による虐待をずいぶんしてきています。

僕のカウンセラーの先生はよくいわれます。「虫歯になったら歯医者に行くでしょ、心にけがをしたらプロにかかるべきです」。もちろん本人の意思次第ですが。だから今回僕が出て行った問題を「宗教」のうちだけで済まさないできちんとした医療機関にかかることをすすめてください。

できることならば橋本クリニックへ母と一緒についていってやってください。勝手なお願いをして本当に申しわけありません。母の回復が無ければたぶん姉弟三人が元の関係になることはありえません。どうか母をよろしくお願いします。

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