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第1章 ヨウとおジィ 昔ばなし 13

おジィがなんで、こんな話をし始めたのか、掴めなかった。でも強烈な物語を聞いてしまった気がする。

「兵隊として戦争の渦中におったとき、まだ自分が何をしているのか、どういう目的で戦場にいるのか、理解していなかった。とにかく、陛下のため、家族のため、仲間のために戦い抜くことに疑いはなかった。しかし後になってインパール作戦について知っていくとな、それこそ死にたくなるほどの怒りを覚えた。大本営にも司令部にも、そして何も知らなかった自分にも、腸が煮え繰り返った」

おジィが参加したインパール作戦という、ビルマからインドのインパールへ進行する作戦は、世界史的にみてもそうはない愚策だと、いろんな本に書いてあった。現場の指揮官達が絶対に無理だからと反対したが、司令官が精神力でなんとかなるといって、九万人の兵隊を、武器も食料もろくに持たせないで、インドの険しいジャングルに放った。補給がほとんどこない状況で、兵士は戦い続けた。

北から攻めていた第三十一師団は、これ以上自分の部下を死なすわけにはいかないという、師団長の全うな判断で、独断撤退を開始した。でも師団長は、辿っていけば天皇の命令で出陣しているわけで、それを無断で命令違反するということは、軍人としてありえない行為というものだ。

でも師団長は、何をいわれようが、部下が死ぬと分っている作戦の続行を拒否した。軍法会議で、インパールの愚策を糾弾するつもりでいたが、師団長は気が触れたという理由で、トカゲの尻尾切りにあった。軍法会議になれば、敵前逃亡した師団長の任命責任も問われるし、愚策の責任追及も行われる。

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