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第1章 ヨウとおジィ 昔ばなし 11

戦車隊の砲撃はしばらく続いた。わたしと日野上等兵は、比較的大きな木の陰に身を潜めて、頭を両腕で覆い、後は何もできなかった。祈ることもできなかった。

腕が痺れて感覚が完全になくなるほど、強く頭を覆い続けた。それしかできなかった。聴力が微かに戻り気がついた。速射砲が反撃する音が、戦車の砲撃の合間から消えた。数十人いた砲兵隊は全滅したのだ。

傷口を拭いてやるための水すらない。太ももの裂傷に蛆がわき始めた。蛆は傷口の膿を食ってくれる。あえて取り払わなかったが、蛆がいようがいまいが時間の問題だ。日野上等兵はうわ言のように繰り返した。

あっぱれな射撃術、松下曹長の神技を目の当たりにできて、自分は幸せです。インパールまで、あと少し。あと少し。

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