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父の帰宅 42
二回目の搬送は午前八時から開始した。車で往復五〇分。三回目くらいから体力的に限界を感じ始めた。引越し先の廊下で一度倒れた。目眩がとにかくひどいので、倒れそうになると、情けない格好だが地面に伏せるようにして、頭を打たないように気を付けた。
あまりやっていると不審者で引っ張られてしまう。書棚の中身を丸ごと全部ダンボールに入れたものは何キロあったのだろう。あんなものを持ち上げる力はないはずだ。脳汁的なものが出てきてるんだろう。
カーステにはガンズ・アンド・ローゼズが入っていた。アドレナリンを全開で放出するために『ナイトレイン』をリピートで流した。そしてこの震えがくるほどクールなサインドと一緒に、今日のこの日を記憶したかった。
荷物の最後は組み立て式の本棚、これを六角レンチで解体して、トランクに詰め込んで完了。母親と母親がもっとも頼りにしてる人、そしておばあちゃんに手紙を残した。
母親が一人で読める内容じゃないので近所にいる松井のおばさんと一緒に読むように封筒の一番見えるところにでかく書いて家を出た。マサは書置きと一緒に橋本クリニックに提出したレジュメも同封していた。これは母親に自分がしてきたことを自覚させるためだ。以後はマサが三人へ宛てた置き手紙を掲載する。
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