この時代に“同じ空を見上げる”理由をつくる──人工流れ星、ALE2020、広島
多くの人がどうかはわからないけれど、誰かと“同じ空を見上げる”って良いよなぁと、よく思う。
たとえば、2016年の『君の名は。』も、記憶に残るシーンはほんとにたくさんあったけど、個人的には、美しく描かれた“夜空”がとても印象深かった。
(この感情を表す言葉がうまく出てこない。キュンとする?グッとくる?わくわく?エモい?)
僕には、まもなく2歳半になろうという息子と娘がいるのだけど、子どもらも空が好きらしい。
いつも保育園の帰りに、浮かんでる何かを見つけては教えてくれる。太陽(おひさま)、月、飛んでる鳥。いま住んでる場所では、飛行機雲なんかも「こんなに出るっけ?」というくらい見るので、登場回数が多い。
まだ夜に出かけることは少ないから、見上げるのは昼の空だ。もう少し大きくなって、夜一緒に出かけたりするようになれば、星を並んで探すようになるかもしれない。
親としては、今からそれが待ち遠しかったりもする。
世界初の「人工流れ星」プロジェクト
なんて考えてたら、つい先日、トキメキを覚えざるを得ないクラウドファンディングを見つけてしまった。
ALEという「人工流れ星チャレンジ」のプロジェクトである。
上空約400kmの小型衛星から、直径約1cmの粒を放出。大気圏に突入して燃え尽きるタイミングで粒が4色に光り、流れ星となって地上から見られる──ALEは、そんな壮大なプランだ。実現したら、めちゃめちゃスゴいと思う。
ALE初号機はすでに今年の1月、JAXAイプシロンロケット4号機に搭載されて、打ち上げに成功している。
注目の流れ星は2020年の春、広島・瀬戸内地域の直径200kmに及ぶ範囲で見られる予定だ。
いくつか、プロジェクトが伝わりそうなリンクを。まずは動画。
下のGIZMODOの取材記事は、とても分かりやすかった。
プロジェクトを元にした小説『流星コーリング』の著者との対談。(こちらは有料)
成功したらたぶん、僕がいま住んでいるほどの田舎じゃなくても、流れ星がきれいに見えるのかなぁと思う。
もし広島市内、中心近くからでも見えるとしたら、来年にはかなり話題になるんじゃないだろうか。
「共通言語」がなくなる時代に、人はなにを共有できるか
ALEはエンターテイメントとしてだけでなく、事業としても成立しているのもすごい。(ここでは書かないけど、公式ページや、上のような記事をじっくり読めばわかると思う)
ただ僕には、実はこのプロジェクトがいいなぁと思った別の理由がもう一つある。
それは、“同じ空を見上げる”=「多くの人が、細かな違いなんかを超えて共有できる(だろう)体験」を提供できるんじゃないか…ということ。
(大げさかもしれないけど、分断が進むいまこの時代に、「つながりを人に届ける」可能性みたいなものをALEに感じた)
たとえば、「令和」へと元号が変わるこの半年は、なにかと「平成」の時代を振り返る機会が多かった。
その中で、ネガティブなこともたくさん挙げられたけど、僕らが生きる上で取れる選択肢って増えてきてるよね、というポジティブな話も案外多かった気がする。
実際、まだまだ生きづらい側面もたくさんある。それでも昔よりはいろんな選択ができて、やりたいことを我慢せずチャレンジできるようになった、と思う。
一方で、そういう多様化と共に、誰もが語れる「大きな物語」や「共通言語」が失われて、社会の分断が進んでいる側面もある。
僕はこれは、「わかりあえなくなった」というよりは「わかりあえない」ことが可視化された、ということだと思っているけれど、今の社会はまだ、「わかりあえない」前提で人がどう生きるか、という仕組みにはなれていない。
マスが機能せず、スマートフォンの中身は一人ひとりまったく違う時代に、それでも「人とつながっている」ことをどう感じていくか──これは、次の時代の大きなテーマだと思っている。
(以前にしおたんさんも同じようなことを書かれていたのでご紹介。)
話が大きくなった割に、「こうしたら…」的な結論はまったくないのだけど(ごめんなさい)、でも、そんな流れの中で、200km圏の人が同じ時間に同じ夜空を見上げるALEのプロジェクトに、大きな、けれど押し付けがましくない新たなストーリーの可能性を感じたのも事実。
複雑な社会で生活していると、いろんな文脈に巻き込まれて、苦しんだり泣いたり笑ったりするのだけど、夜空を舞う星にそんな細かな話は必要ない。
「共有できる物語」がなくても、見上げた空は、だれかと繋がっている。それを、全身で感じることができる。
星を降らせるプロジェクトは、こんな時代だからこそ、人と人とを繋ぐ体験になるんじゃないか──漠然とだけど、そんなことを思いながら、わずかだけとクラファンの支援もさせてもらった。
奥さんとは来年の春、子どもを連れて見に行こう、と言ってる。成功してほしいな。
Twitter:@masashis06
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