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UXとDX、変化は待ってくれない。


テクノロジーとUXを備える人は、社会を変える力と責任がある。

本書では、アフターデジタルという世の変化に対して、私たちが持つべき「精神」と「ケイバビリティ」(能力と方法論)を提示しています。

「精神」とは「物事の基本的な理念」とか、「そうした理念に基づいて何かを成し遂げようとする心の動き」という意味で本書では使っています。

アフターデジタルでは精神が重要です。

あらゆることがオンライン化され、すべてがデータとして得られる世の中になると、管理される社会が想起されます。デジタルが浸透したアフターデジタル社会において、「UX」(ユーザーエクスペリエンス)と「テクノロジー」を掛け合わせた力は非常に強くなります。

悪用しようとすれば、人の行動も支配することも、人々の格差を助長させることも可能です。だからこそ「精神」が必要だと考えています。

もう一つの「ケイバビリティ」は、本書では「能力」とか「方法論」という意味で使っています。なぜケイバビリティかと言えば、データとUXの基本リテラシーが危ういからです。

データを持っていてもそのままではまったくお金にならないことを理解する必要があります。

データをそのままお金に換えるという考え方ではなく、どうようにUXに還元し、ユーザーに価値を提供するか、という考え方でないと、日本はテクノロジーの恩恵を受けられず、国際的な競争力を失ってしまいます。

著者 [藤井保文]   株式会社ビービット 東アジア営業責任者                         2019年3月に「アフターデジタル、オフラインのない時代に生き残る」を出版し、各界著名人から推薦を頂いている。また、政府の有識者会議、経営者会議など「アフターデジタル」におけるアドバイザリや講演活動も多数行っている。



■オフラインのない状態が来る

中国や米国、一部の北欧や東南アジアの国々で見られる現象として、日常の支払い、飲食、移動など、もともとオフラインだった行動のすべてがモバイル(つまり、オンライン)で完了できるようになっています。

ここで読みとるべきことは「日本でも同じサービスが普及するかどうか」というより、オンラインがオフラインに浸透し、もともとオフライン行動だった生活が次々とオンラインデータ化し、かつ、個人のIDに紐づけられ、膨大かつ高頻度に生まれる行動データが利活用可能になるということです。

そう捉えると、今の日本もだんだんとそうなっていることが実感できるのではないでしょうか。

カギは「行動データ」です。行動データによって顧客管理の解像度があがり、付加価値を高めることができるようになるのです。

アフターデジタル社会とは、「行動データを利活用できないプレイヤーは負けていく時代」なのです。



■アフターデジタルという考え方

「アフターデジタル」という言葉には、「日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、その立脚点がそもそも間違っているのではないか」という問題提起を含んでいます。

日本のDXは、「リアルを中心に据えて、デジタルを付加価値と捉える」という「ビフォアデジタル」的な考え方に根差している例がほとんどといったイメージです。

「店舗でいつでも会えるお客様が、たまにアプリを使ってくれる」といったイメージです。このリアルとデジタルの接点の始終関係を逆転させて考える必要があるというのが、「アフターデジタル」というコンセプトになります。

だからといって、「リアルが重要じゃなくなる」というわけではありません。デジタルの中であってもリアルはしっかりと残ります。なぜリアルが残るのかと言えば、デジタルが得意なこととリアルが得意なことが異なるからです。

感動的な体験や信頼を獲得するといったことは、デジタルよりもリアルの方が得意です。リアル接点は「今までよりも重要な役割を持つが、今までよりも頻度としてレアになる」と捉えるのが正しいと考えます。



■商品販売型から体験提供型へ、企業競争の原理が変わる

データ行動の活用において重要なことは「接点頻度」です。

適切なタイミング、コンテンツ、コミュニケーションを捉えて価値提供するには、ユーザーの置かれた状況(ペインポイントや成りたい自己実現)を把握してそれに対する解決策や便益を提供し、ユーザーと定常的な接点をなるべく高頻度に持つ必要があります。

これは商品販売型のビジネスでは難しく、体験提供型のビジネスに優位性が移行していくことを示しています。

こう書けば、モノ消費からコト消費へ、または、非日常的でアトラクション的な体験を想起されるかもしれませんが、ここで言う「体験提供型のビジネス」は、それらと異なるものを指しています。

日常的にユーザーに価値を提供でき、高頻度かつ定常的にユーザーの状況を把握できる形式のビジネスで、サブスクリプションサービスは代表例になります。


■売らないメーカーの脅威

アフターデジタル型産業構造になることで、最も恐怖を感じているのはメーカーです。トヨタ自動車が「モビリティサービスプラットフォーマーになる」と標榜していることからも、多くのメーカーがこの危機感を持っていることが分かります。

自動車は頻繁に購入する頻度が低く、顧客理解の解像度がどうしても低くなってしまいます。

ではアフターデジタル時代真っただ中の中国メーカーは、どのようにして対応しているのでしょうか。いくつかのいくつかの事例を紹介します。読者が所属する業界と違っても、どのように接点を構築し、顧客との関係性を作っていくのかについては、参考になる事例だと思います。



■「カギを渡してからが仕事」の自動車メーカーNIO

中国の次世代EV(電気自動車)メーカーの中で、最も販売台数が多いのがNIO(ニオ)です。「テスラキラーの筆頭」とも呼ばれ、自動運転やAI(人工知能)などの導入も含め、先進的なブランドイメージと機能で注目を集めています。

しかも価格はテスラの半分程度、日本円で600万~700万程度です。

「テスラは車のカギを渡すまでが仕事だが、NIOはカギを渡してからが仕事だ。我々が提供しているのはライフスタイル型高級会員サービスのようなもので、その会員チケットを買うために600万~700万を払ってもらい、ギフトとして車を差し上げるようなものです」

では、その「会員サービス」はどんなものなのかというと、以下の4つが主なサービスになります。

①NIO Power(充電関連)

②NIO service(メンテナンスサポート)

③NIO House(会員用ラウンジ、イベント)

④NIO App(コミュニケーションEC)

通常カーメーカーは「顧客接点」を持つことが非常に難しく、購入時点だけしか接点を持てないものですが、NIOは定常サービスによって顧客との接点を確保し、いつでも顧客の相談に乗れるような関係性を作っています。



■データは意外とお金にならない

アリババのポール氏の発言から改めて社会に起きていることを俯瞰してみると、すべての行動データの可視化が可能となり、つなぎわせることでできることは変わります。

しかし、すべての生活を網羅するような広範囲な形で他社と共有してソリューション化するのは、実際には中国においてもアリババ程度しか実現できていません。

そもそも、ペイメントデータや行動データを「直接的に」マネタイズに使おうとすると、方法は限られます。現状の事例から整理すると次に示す3パターン程度しかありません。

①マーケティング・広告に活用する
「この人はどのあたりで何をいつ頃買っている」という情報から、マーケティングソリューションを企業向けに提供して、そのソリューションフィーで稼ぐことができます。

②金融に活用する
どれくらいの支払い能力があり、どのような消費行動をとるのかがわかることで、主に個人向け融資の与信管理効率が良くなります。

③インフラに活用する
人の動きのデータを活用し、交通や医療の効率を向上させることで、それ自体でのマネタイズは難しいが、スマートシティに対する投資や管理費用として。国、自治体、エンタープライズからのマネタイズが可能になります。



■UXへの注力なきDX

非本におけるDXは「デジタルを導入せよ(多くの場合、意味としてはAIやデータを活用せよと同義)」という命令がでてしまい、この「顧客提供価値をアフターデジタル社会に照らし合わせて再定義する」という大上段の議論が抜けがちです。

「ユーザーにどうのようなUXを提供するのか」を考える前に、業務や人事のデジタル化を先に行ってしまうことが多い状況だと言えます。

多くの場合、ユーザーが今どのように企業に触れていて、何を価値だと捉え、何に困っているのかが分かっていません。

にも関わらず、なるべく未来的で大きな絵を描くことを優先し、ユーザーの状況理解とそこに提供するべきUXの企画がないまま、DXを進めようとしてしまっているのです。

現在の日本において、UXという言葉はUI(ユーザーインターフェース、つまりアプリやウェブの画面上のデザインや使いやすさ)と一緒に使われてしまい、なかなか経営レベルで語られることはありません。

しかし、GAFAやアリババ、テンセントでは、UXの設計がビジネスのすべてを決めるといっても過言ではないことが理解され、経営レベルでUXが語られます。

なぜならUXとは「ユーザー、ビジネス、テクノロジーの3つがそれぞれ関わり合うときに生まれる体験、経験」であると捉えているからです。体験提供型のプレイヤーであるために、いかに高頻度で長く使ってもらえるかがビジネスのすべてを決めると理解しているからです。



■対話型思考による有機的組織

アフターデジタルという変化を理解し、皆が追う絵を提示できて、戦略やビジネスモデルを仮に書き換えられたとしても、それだけでは組織は変われない、と丸井グループの青井社長は言います。

「組織戦略の基盤となっているのは、それを実行する社員であり、それを形作るのは組織文化である」とした上で、「命令型組織ではもううまくいかない時代になっていて、対話型組織でないとDXは実現しないのではないか」と提起されます。

対話型組織とは、「この世界観とは、自分の事業においてはこういうことなんじゃないか」「今皆で合意に至ろうとしているこの方針は、世界観や提供価値に会ってないんじゃないか」といったことを現場で考え、対話し、それによって経営者も言葉にできなかったような、より良い表現や価値提供ができる組織です。

バリュージャーニーで価値を提供する時代において、様々なユーザー視点を担当するメンバーそれぞれが自ら考え、体現しながら動かないとスピードが遅すぎるのです。



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これからさらにオフラインからオンラインに価値提供の場が置き換わっていき、中小企業や個人もUX(ユーザーエクスペリエンス)を考慮したDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進んでいくだろう。

UX、つまり顧客の体験価値のことを考えられない商品やサービスは今後さらに淘汰されていくことになる。

「私達が出来ること、やりたいこと、提供したい価値」それらを提供しているだけでは、顧客の欲しい価値でない。

顧客の欲しい価値の中から「私たちが出来る」体験価値を提供することがUXを考慮したモデルである。

しかし、顧客の欲しい価値というのは変化し続ける。そのため「私たちが出来ること」も変化し続けないといけない。

DX化は変化の一つの方法なのだ。

会社や職場、または自分のビジネスのDX化に取り組むとき、「それは顧客の価値に繋がる変化なのか」を考えなければならない。

どのフェーズでも顧客価値に繋がらないDX化はただの自己満であり、無駄だ。

「私達が出来ること、やりたいこと、提供したい価値」それらを提供しているだけでは、いつの間にか淘汰される側に立たされることになる。

変化の選択肢を知り、変化し続けることこそが、私はUXの本質だと思う。


私の情報が少なからず皆さんのお役に立てればと思います。
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