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独学の技法

知識を使いこなす最強の独学システム。

誰もが簡単に情報を入手できる時代、骨太でしなやかな知性を身につける知的生産システム。

著者[山口周]慶應義塾大学文学部哲学科卒業、電通、ボストンコンサルティンググループ等を経て、組織開発、人材育成を専門とするコーンフェリーヘイグループに参画。現在、同社のシニアクライアントパートナー。専門はイノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成。


■独学を「システム」として捉える

本書の目的である「知的戦闘力を向上させる」という目的は独学をシステムとしてイメージしない限り、達成できない。独学とは大きく、①「戦略」②「インプット」③「抽象化、構造化」④「ストック」という四つのモジュールからなるシステムと考えることができます。

システムの出力はボトルネックに規定されます。例えば、どんなに「インプット」の量が多くても「抽象化、構造化」が出来なければ、そのインプットによって単なる「物知り」にはなれるかもしれないが、状況に応じて過去の事例を適用するような柔軟な知識の運用は難しいでしょう。

あるいはまた、たとえ「抽象化、構造化」ができたとしても、その内容が高い歩留まりで整理、ストックされ、状況によって自在に引き出して使うことが出来なければ、やはり「知的戦闘力の向上」は果たせないでしょう。

インプットした情報のほとんど、感覚的には9割以上は忘却されることになります。この問題に対して「いかに忘却を防ぐか」を考えても仕方ありません。知的戦闘力の向上を図ろうとすれば、むしろ「インプットされた内容の9割は短期間に忘却される」ことを前提にしながら、いかに文脈・状況に応じて適切に、忘れてしまった過去のインプットを引き出して活用できるかがカギなのです。

これまでに書かれた独学に関する本のほとんどはいかにしてインプットするかという点にばかりフォーカスしています。しかし、イノベーションがさまざまな分野で進行し、知識の減価償却が急速に進む現在のような世の中では、こうした静的で固定的な知識を獲得するための独学法は負担が大きいばかりであまり役に立ちません。

なぜなら、知識の多くは短い間に「知識としての旬」を過ぎてしまうからです。


■重要なのは「覚えること」を目指さないこと

独学を動的なシステムとして捉えるということは、必然的にある結論を導きます。この独学法においては「覚えること」を目指さないということです。

恐らく多くの人は「高い知的戦闘力」をそのまま「膨大な知識量=知的ストック」と紐づけて考えると思います。

しかし今日、あらゆる知識はフリーアクセス可能なインターネット上に存在するようになりつつあります。私達は、自分の脳の海馬に記憶された情報にアクセスするのと同じように、インターネットという巨大な「グローバルブレイン」に、いつでもアクセスできる世界に生きているわけです。

このような世界において、「知る」つまり知識を情報として脳内にストックすることの意味合いについて再考すべき時が来ているということです。そしてそれを繰り返せば、本書は、まさに「知るということが時代遅れになりつつある時代」における、新しい独学の在り方を模索し、それを読者の皆さんと共有することを目的に書かれています。


■いま「独学」が必要な4つの理由

まず一つ目が知識の「不良資産化」です。

これはわかりやすく言えば、学んだ知識が富を生み出す期間がどんどん短くなってきているということです。

例えば、ビジネススクールで教えているマーケティングについて考えてみると分かりやすい。ほんの10年程度前まで、ビジネススクールで教えているのはフェリップ・コトラーを始祖とする古典的なマーケティングのフレームワークでした。つまり、市場を分析して、セグメントに分け、ターゲットとなる層に合わせてポジショニングを決め、4Pを確定するというアプローチです。

ところがご存じの通り、こういったフレームワークは今日、ものすごい勢いで時代遅れになりつつあります。

このような世の中であっては、自分が過去に学んだ知識をどんどん償却しながら、新しい知識を仕入れていくことが必要になります。そのような時代において「独学の技術」が重要性を増すであろうことは、容易にご理解いただけることと思います。

二つ目が「産業蒸発の時代」です。

今日、多くの企業・産業において「イノベーション」が重要な課題として挙げられています。イノベーションというのは、それまでの価値提供の仕組みを根底から覆すような変革を指します。

これはつまり、イノベーションの発生以前にビジネスを行っていた企業が、その領域でのビジネスを根こそぎ奪われ、いわば蒸発して消滅するような事態が発生することを意味します。したがって、多くの領域でイノベーションが加速すれば、それはとりもなおさずイノベーションを成し遂げられなった企業や事業の蒸発が大量に発生することになります。

三つ目が「人生三毛作」です。

今日、キャリアを考えるにあたって大変重要な二つの変化が起きています。一つは「現役年齢の延長」です。ロンドン大学のリンダ・グラットンは著書「LIFE SHIFT]の中で、寿命が100年になる時代には、現役年齢もそれに応じて長くなりこれまでの60歳前後だった引退年齢が70~80歳になることで、私達の現役期間が長期化することを指しています。

二つ目の変化が、企業や事業の「旬の寿命」が短くなっている、ということです。「旬の企業」のうち、10年後にも旬を維持できているのはそのうちの約半数であり、さらに20年後になると1割程度の企業しか残れないことが判明しています。つまり、企業や事業の「旬の期間」というのは、ざっくり言って10年程度だということです。

このとき、サーフィンのように「旬の事業・企業の波頭」をうまく乗り越えていくことができる人と、波にのまれてしまう人とのあいだでは、その人が授受できる「仕事のやりがい」や「経済的報酬」や「精神的な安定」という、総体としての「人生の豊かさ」には大きな格差が生まれてしまう。このような社会において、「独学の技術」が重要なスキルとなることは明らかです。

最後が「クロスオーバー人材」です。

クロスオーバー人材というのは、平たく言えば「領域を超越する人」ということです。昨今、人材育成・組織開発の世界でよく言及されるのが「Π(パイ)型人材」の重要性です。Π型人材とはつまり「縦棒=スペシャリストとしての深い専門性」を二つの領域で持ちながら、一方では「横棒=ジェネラリストとしての幅広い知識」を併せ持った人材のことです。

このような世界において、専門性だけを頼りにして蛸壺にこもるような人材のみで構成されたチームでは、イノベーションを推進していくことはできません。イノベーションというのは常に「新しい結合」によって成し遂げられるからです。

この「新しい結合」を成し遂げるためには、それまで異質のものと考えられていた二つの領域を横断し、これをつなげていく人材が必要になります。これがつまり「クロスオーバー人材」ということになります。


■武器を集めるつもりで学ぶ

強大な敵が迫りつつあるとき、皆さんはなんの考えもなしにいきなり武器の収集に走るでしょうか?恐らくそうではないでしょう。迫りくる敵に対して、どのような戦い方をするのか、自分の強みはどこで、それをどのようにすれば強化できるか、ということを考えるはずです。

独学による「知的戦闘力の向上」を目指すのであれば、まずは闇雲なインプットの前に、独学の大きな方針となる「独学の戦略」を決めることが重要です。

さらにこの「戦略」を具体化する際には、もちろん「何をインプットするのか」を考えることも重要ですが、同時にまた「何をインプットしないのか」を定めることが重要です。


■広範囲のソースから自分の五感で行う知的生産

独学というと「本でお勉強」というイメージを思い浮かべる人が多いのですが、実は独学には様々なインプットソースがあり、それらを組み合わせることが重要だということを忘れてはいけません。

独学のインプットをこれだけ広範囲のソースとして用いるかというと、本だけに独学のインプットを限定してしまうと「学びの稼働率」が低下してしますからです。

システムの生産性は単位時間あたりの出力と稼働時間の積によって決まります。いくら処理能力が高い独学システムを作り上げても、肝心要の「独学の時間」が短ければ、学びの絶対量は大きくなりません。さまざまなソースに独学のインプットを求めるというのはつまり、学びのスイッチがオフになる時間を最小化するという戦略です。


■洞察につながる「問い」と「組み合わせ」

インプットされた知識は多くの場合、そのままストックしても知的生産の現場で用いることができません。私達が日々携わっているビジネスとは直接的なつながりを見出すことが難しく、したがってなんらかの抽象化、構造化をした上で「意味付け」が必要になります。

我が国に目を転じてみると、幕府と天皇という、二重の権力構造があったことがわかります。こういった知識は特に歴史に詳しい人でなくても、恐らくはなんとなく知っていることだと思います。

しかし、これらの知識をそのままストックしておいても「知的戦闘力の向上」には直結しません。「知識」から「知恵」にするためには「示唆」や「洞察」を引き出すことが必要です。

ではこれらの「二重権力構造」を抽象化すると、どんな示唆や洞察が得れるでしょうか。それは「長く続く体制には、権力の集中を防ぐカウンターバランスが働いている」という仮説です。

抽象化された定理は仮説でかまいません。仮説というのは「✕✕ではないか?」という「問い」として設定されるわけですが、このような「問い」が、さらにインプットの感度を高め、独学システムの生産性を高める大きな要因となります。

「問い」のないところに「学び」はありません。極論すれば、私達は新しい「問い」を作るためにこそ独学しているわけで、独学の目的は新しい「知」を得るよりも、新しい「問い」を得るためだといってもいいほどです。


■効率的に知識を引き出せるシステムを作る

このように抽象化、構造化された知識は、いつでもこれを引き出せるように、しかるべきファイリングシステムにストックしておく必要があります。なぜかというと、インプットされた情報のほとんどは、いずれ必ず忘れるからです。

やることはそんなに難しいことではありません。なんらかのデジタルデータとして記憶しておき必要に応じて検索やタグから、過去の記録を引き出せるようにしておけばいいのです。


■ストック次第で創造性は1000倍になる

創造性を高めるための有効な手段の一つとして、多くの人が指摘しているのがアナロジーの活用です。アナロジーとは、異なる分野からアイデアを借用するという考え方で、分かりやすく言えば「パクリ」です。

故スティーブジョブスは、創造というものが「新しい何かを生み出すこと」ではなく「新しい組み合わせを作ること」でしかないと指摘しています。実は高いレベルの創造性を発揮した人物の多くが同様の指摘をしています。

すべてのアイデアは、異なる二つの要素の組み合わせによって生まれると仮定した場合。10個の知識を持っている人と100個の知識を持っている人では、組み合わせによって得られるアイデアの数はそれぞれ45個と4950個となります。

つまり、知識の量が10倍になると、その知識の組み合わせによって生み出せるアイデアの数は100倍以上になります。もしこの前提を、三つの知識の組み合わせによってアイデアが生まれるとすれば、生み出せるアイデアの数はそれぞれ120と16万1700となり、差は1000倍以上となります。

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独学というとなにか非効率な印象を持っていないだろうか?

人生や仕事において「師」として教えを乞える人がいるならばそれが一番早く、効率的に目標を実現できる。

いわゆる「メンター」という存在だ。

今現在、メンターがいる人は本当に幸運な人だと思う。

あなたの進みたい道をすでに先を行っている人だからこそ、そこまでのルートにある危険な場所やゴールまでのマインドなどを教えてくれるのだろう。

実際に、行動し、継続することができるのは一握りの人だけだと思うが、教えを乞える人がいることに死ぬほど感謝すべきだと思う。

多くの人は自分の周りの人が自分のメンターになりえる人だってことに気づいていない。

なにか一つでも、その人から学べることがあるんじゃないか?すべての人とは言わないが自分の人生に関わっている多くの人の中にはいるだろう。

しかし、進みたいと思っている道に対してのメンターを見つけることは簡単ではない。

メンターがいれば幸運で、多くの場合は独学だ。

進みたいと思っている道がまだ誰も通ったことのない険しい道だとしても独学で道を進み、誰も見たことのない景色を見れることは最高だと思う。

たとえその景色が万人には「なんでもない」景色だとしても。

私の情報が少なからず皆さんのお役に立てればと思います。
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