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エンゲージメント向上のための3つの柱

エンゲージメント向上プログラムを考える際には、「自助」、「共助」、そして「公助」の3つの柱をしっかりと考慮しているでしょうか? これらの言葉は、震災などがあったときによく使われる言葉として有名だと思いますが、エンゲージメントの向上でも重要な概念になります。
まず、「自助」とは、自分たちでできることは自分たちでやろうという考え方です。
次に、「共助」は、半径5メートル以内の中でお互いが助け合いながら様々なことをサポートし合うことを指します。
そして、「公助」とは、会社全体や社会の中で経営ルールや制度を設けることによって、多くの人たちを助けることを意味します。


公助の役割とその問題点


公助、つまり経営ルールや制度の設置は、エンゲージメント向上において重要な役割を果たしますが、これが過度に優先されると問題が生じることがあります。公助の本来の目的は、組織全体の「後方支援」としての枠組みを提供し、全社員が働きやすい環境を整えることです。
しかし、一方でこれは、制度やルールが硬直化したり、現場の実情や個別のニーズに対応できなくなるという問題点と常に隣り合わせです。この場合かえって逆効果になる場合があります。

例えば、パワハラ防止のための教育を実施した結果、管理職が現場の社員と適切にコミュニケーションを取ることが難しくなるケースがあります。管理職がパワハラを恐れて指導ができなくなり、逆にエンゲージメントが低下するという問題が発生します。これは、パワハラ防止の教育が本来では問題にならないはずの指導や注意にまで及ぶかのようになってしまうことが原因です。伝え方が現場の実情に即しておらず、管理職がどのようにコミュニケーションを取れば良いのかを明確に示すことは困難です。実はここには、「公助」を使いながらも現場やケースバイケースの問題を自分たちで判断していくという力が必要になります。

また、男性の育休取得率を向上させる施策でも同様の問題が見られます。形式的に育休を取らせることで数字上は改善しているように見せかけても、実際には1〜2週間しか取得されていない場合が多いのです。これでは真のエンゲージメント向上には繋がりません。育休制度の整備が株主や外部向けのアピールに留まり、実際の取得率や取得期間もしくはその意義は、社員自身がしっかりと考えて、自らどのように撮ればいいのかを考えて貰う必要があるのです。また最近は「子持ち様問題」ということもあるそうです。それは、「子供を持っている人だけが優遇されている」という問題ですが、おそらく現場では「周りのことを考えずに当然の権利のように振りかざして休む人」がいたり、仲間意識が薄れ、「子供を持っている人は悪だ」という過度な一般化が進んでいるという言うこともあるでしょう。

さらに、リモートワークの推奨も同様の問題を引き起こします。リモートワークは柔軟な働き方を提供する一方で、適切に管理されないとチームビルディングがうまくいかず、かえってコミュニケーションが希薄になる恐れがあります。リモートワークが推奨される中で、社員同士の連携が薄れ、チームの一体感が失われるという現象が発生しています。

これらの減少が昨今多く報告されているのは、人的資本経営という言葉が出てきて数年経つ中で、公助頼みのアクションを行った会社が増えたことによる副作用が各地で現れているのだと思われます。

これらの例からもわかるように、公助だけを優先するアプローチは、必ずしも効果的ではありません。制度やルールを整備することは必要ですが、むしろ、制度やルールを過度に強調することで、社員の主体性や協力精神が損なわれるリスクもあります。

自助と共助の重要性


エンゲージメント向上のために、そして公助をうまく使うためには、まずは自助と共助を強化することが重要です。自助には、主体性、すなわち自分の人生の舵を自分で切るという考え方が根底にあります。これには、自己のキャリアや目標を明確にし、それに向けて努力することも含まれます。

一方、共助の精神は、共同体感覚に基づいています。これは、お互いが互いのことを思いやり、必要な時には手を差し伸べるという態度です。会社が強固なエンゲージメントを築くためには、共助の精神が欠かせません。共助が機能している職場では、困った時に自然と助け合いが生まれ、全体としての生産性も向上します。

巷では「自己責任論」と間違えられることもあります。自己責任論の問題は下記のようなものがあります。


過度な自己責任の押し付け
組織が基本的な支援を提供しているとしても、それが全ての社員に対して十分であるとは限りません。特に育児や介護など、個別の事情に対応しきれない場合はあります。しかしそれを「会社は十分用意した。あとは自己責任」として片付けてしまうことがあります。これは、社員が制度を利用できない状況に対して組織が責任を負わず、個々の社員に負担を強いる結果になります。

やりがい搾取
やりがいを理由に低賃金や過剰労働を強いることも、自己責任論の一形態です。「この職場を選んだのは自分の意思だから、厳しい環境でも耐えなければならない」という考え方が強調されると、ブラック企業化するリスクがあります。社員のやりがいを搾取し、適切な報酬や労働条件を提供しないことは、公助の役割を放棄する行為です。

管理職の責任逃れ
管理職が部下の問題を「自己責任」として片付けてしまう場合もあります。例えば、業績不振や職場の人間関係の問題を部下のせいにし、適切な支援や指導を行わないことです。これは、管理職自身が共助や公助の役割を果たしていないことを意味します。

バランスの取れたアプローチ


エンゲージメント向上のためには、自助、共助、公助のバランスを取ることが重要です。
自助は主体性を育み、共助は協力とサポートを促進します。そして公助は、組織全体の後方支援として制度やルールを整備することでこれらを補完します。これら三つが揃って初めて、真のエンゲージメント向上が実現します。

エンゲージメント向上のためには、自己責任論を押し付けるのではなく、個々のニーズや状況に応じた支援が必要です。例えば、育児制度が適用できない家庭や、特別なキャリアパスを必要とする社員には柔軟な対応が求められます。また、やりがい搾取のような不当な労働環境を改善するためには、働く環境そのものを見直す必要があります。

このように、自助、共助、公助のバランスを意識し、それぞれが適切に機能するように取り組むことが求められます。これにより、社員一人ひとりが主体的に行動し、チーム全体が協力し合いながら、組織全体のエンゲージメントが向上し、持続可能な成長が実現します。

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