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もしも本物が混じっていたなら

10月31日、街はハロウィンだった。
夜の札幌、特に狸小路というアーケード街は仮装をした若者たちで溢れかえっており、ハロウィンということを忘れていたので地上に出た時わりと驚いた。

特段関係のないワイ、冷めた目で彼らを見る。否、ガン飛ばしてると思われたら不本意なので柱やベンチと同じように、あるのは分かっているが今さら注目しないようなつもりでアーケードを歩いた。警備員もざっと見ただけで8人くらいはいた。店の前でたむろする若者たちに声をかけるなどしっかり働いていらっしゃった。

普段置かれていないコーンが通路の真ん中で列をなしていて、暗黙の了解なのかそういうアナウンスがあったのか、ごった返しているけれど皆左側通行だった。そういう真面目さはあるのな。仮装者たちが歩く速度は自分と大して変わらず、混んではいても足止めを喰らう感じはなかった。他にも、コンビニ前で座り込んで酒やつまみを広げる者たち、彼女の仮装に付き合っているだけなのかムスッとした小太りの青年、普通の格好だけど顔だけメイクしている者、女装、車を路駐したまま仲間と話している者たちなどがおり、きっと何かそれぞれに事情があるんだろうなという気持ちになった。

用が済んで22時すぎに再びアーケードの近くを通ると、車高の低い車がたくさん列をなして停まっているという現場に、駅までの間に3回も遭遇した。ガラの悪い人が車の横で話していて威圧感があり、自分は透明人間のつもりでそそくさと隙間を通った。くそ、なんで真面目に生きている俺らが「そそくさ」しなきゃいけないんだ。

仮装者はその時間にはもうおらず、さっき見たような座り込んで酒などを広げる者や半グレのような人たちがたくさんいた。普段見かけないような人がたくさんおり珍しさすら感じた。いつもどこにいるんだ?

普段見かけない人たちと自分の生活が交わるという状況は、逢魔時(おうまがどき)という言葉を思い出させた。逢魔時は、昼と夜の中間、移り変わりの時間で、魔物と出会う、災いが起きるなどとされている時間だ。実害もないのに魔物呼ばわりするのも申し訳ないが、いや、仮装しているだろ?「魔」じゃないか、とも思ったり。とにかく物珍しさと怖さを感じたのは間違いない。狸小路を中心に逢魔時が広がっているから肩身が狭く、我々は早く家に帰る必要があった。やるじゃないか札幌のハロウィン。でもあなたたちも早く帰りなさいよ。寝る時間ですよ。それとも本物が混じっていたのか?

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