【エッセイ】カリンの花

実家の庭にはカリンの木がある。
この木には少々……いや多少の難点がある。

まず洋ナシっぽい黄色の実がなるが、この実がマズイ。
加工食品でのど飴などとなって売られているが
カリンの実自体には甘味はなく、食感も悪い。
実がなったところで2~3個なる程度なので
食物目的ならば他の木を植えた方が賢明だろう。

つぎに枝にトゲが付いていること。
バラ科に分類されることからもそのトゲの痛さは
想像に難くないのではないだろうか。
枝を切っても数か月後には伸びている頑丈さで
一度ガッツリ切ったが再び生え戻ってきた実績がある。

最後にアブラムシ。
カリンの葉がテカテカになってしまうほど大量に付く。
特に新枝の、硬化してない部分にビッシリ付くので
予見なしに見ると鳥肌がたつ。


そんな百害あって一利ないようなカリンの木だが
私と母が伐採する気にならない理由が花にある。

冬が終わり、春の訪れを感じさせる花が咲く。
閑散とした風景に薄紅をさす。
梅、桜、沈丁花、車輪梅など春に咲く花木はいくつかあれど
人の目線の高さに合わせて咲く花は、華々しくにぎやかだ。

カリンの花

仕事に追われていた時には、カリンの花の存在を知らなかった。
他の果樹の対処は多少なり手伝っていたが
どこに何の木がどこに植わっているかという はした情報など
意識や興味を割く余裕はなかったのだろう。

腰を据える時間と場所が変われば、興味を探す。
四季を感じゆっくり生きる日々も悪くない。

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