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セマイロジ〈改行する暇もないほどの光〉

狭い路地、狭い路地、どこまで行っても狭い路地。本能でここまで来たのか、何かに追われてここまで来たのか分からない。ただもう進む以外の意識はなくて。このままどんどん狭くなって、ついには物理的にまで薄い人間になったとて。街と街の間にある、ビルとビルの隙間。風と風の合間、空気と空気の潮目。ただもう進む以外の意識はなくて。壁の汚れがすりついて、服や肌が黒くなる。このままどんどん黒くなって、夜の帳に干渉したとて。見上げれば空は同じ形。斜めに横切る白い雲。斜向かいから流れる鳥と鳥。あれだけ荒くなっていた息づかいも聞こえなくなるほど、取り巻く雰囲気は揺れなくなった。光差す、光差さない、光差す、光差さない。心で花弁を弾いた数だけ、今はもう、こんなにも狭く速い空間に意中の自分を置ける。故郷でかじかむ母さんの指先、パチンコの瞬きに顔を濡らす父さんの目ん玉。僕が由来した2人の記憶が、無音のBGMに休符を打つ。結局、光は差さなかったし、差さなかったわけでもなかった。頭を2つに結んだ少女が僕を指差して、「光」だと言ったんだ。口元の動きで分かった。いつのまにかビルの壁は取り払われたけれど、きっと同じように狭かった。さっきまでより、ずっと速い。見上げれば空は同じ形。斜めに横切る白い雲。斜向かいから流れる首の長い鳥。誰だって皆ロンリーさ。ロンリータイムがコラージュするだけ。バラライカの夕べは明日の予測を難しくさせる。傲慢な将校の影には、転がったフライドチキン。昨日のすぐそばで、はためく3色の国旗。もっと、ずっと、速く速く。もっと、ずっと、速く、速く。取り乱したのは君じゃない。君の感覚だ。さして違わない日曜日と日曜日の間。世界はバランスよく止まってみせた。嗚呼、こぼれ落ちるダイヤモンドの粉を鼻いっぱいに吸い込んで、春から冬へ、秋から夏へスウィングしてごらん。怖くなんかないさ。恐怖はイチジクだと思ってポケットにしまえばいい。奇抜なヨットハーバーで働く、背骨の曲がった彼のように。そう、彼のように。辛辣な嘘はよせよ。トリコモナスが驚くだけだ。聞こえないのは緻密なロックンロールの調べだけ。聞こえるフリをしろ。アカシアが目に飛び込んだら、反射神経が鈍ってきたと思え。昔に比べて、だ。未来じゃない。ストライク、ストライク、ストライク。4つ目のストライクは隠し球に取っておけ。ぶつかり合う衝撃が、窓の外、木漏れ日となって消えた日。あの時を思い出しながら笑うだろう。味気の無い街は、ネオンサインにキーワードを隠す。誰彼構わず、もてなすわけじゃないからな。拮抗したご長寿社会、鼻から伸びたチューブの長さを競う。ざっくばらんに話しておくれよ。もうここまで来たんだから。あの日のアイツを教えてくれよ。何度も何度も、もう何度もすがったんだから。ジャイロの渦が吐き気を誘う。冗談じゃないなんて、俺はもう思わないぜ。アカシアが目に飛び込んだら、反射神経が鈍ってきたと思え。お前自身に比べて、じゃない。お前に比べて、だ。冒険心が豊富なんだな、定量的に。俺自身に比べて?バカ言え。寒い寒い土地のカナディアンに比べて、だ。もっと言うと彼らのママに比べて、だ。ジャブ打って、ディスタンス、ジャブ打って、ディスタンス。空振って、ジャーニー。ランデブークレイジー。邪魔しないで、デューティー。謝って、チャーリー。見ず知らずのダーティ。尊厳丸出し、水飛沫のダンスパーティー。トリックはお馴染み。スクープは金次第。マンネリ気味のパーラメント。デイアンドナイト、デイアンドナイト。フレデリック、エレキテック、なんとかテックのその先に、その先の市場にスイカが3玉売ってるぜ。誰も買いやしない。なぜかって?なんでだろ?聞いてみろよ。そして、後で教えてくれ。ああ、もちろん電話でな。声じゃなきゃ認めねぇ。電子音だとすぐバレるぜ。周波数の波を打ち消して、ナチュラルで来いよ。アナログの澄んだ音、もう何百年も聞いてねぇ。何百年かって?3桁の計算は得意じゃねぇ。教えてくれよ、ダイアログ。あの娘は確かに言ったんだ。「光」だって。口元を見れば分かる。返さない。帰れない。光の街。視神経にあふれる、光のコラーゲン成分。このまま、このまま。まだ速くなれる、きっと。

今のところサポートは考えていませんが、もしあった場合は、次の出版等、創作資金といったところでしょうか、、、