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#45 『振る舞い』ー小椋佳さんに学ぶ”キャリア”

1.小椋佳「ファイナル・コンサート・ツアー」挙行中

昨年の秋から、小椋佳「ファイナル・コンサート・ツアー」が挙行中です。当初は、1stアルバム「青春~砂漠の少年~」(1971年)のリリース50年にあたる昨年に完了する予定でしたが、コロナの影響で開催が遅れました。
小椋佳さんのプロフィールこちら↓

昨年11月9日(火)の埼玉(戸田市文化会館)を皮切りに、宮城・山形・東京・大阪・新潟・茨城・鹿児島・北海道・岩手と続き、4月9日(土)の神戸まで、コンサート・ツアー前半戦の4か月は、11都市12公演が開催されました。

コンサート・ツアーの後半戦は、5月5日(木)の高崎から始まり、岡山・広島・栃木・埼玉・長崎・佐賀・沖縄・神奈川・福岡・静岡・宮崎・そして、8月7日(日)の熊本まで、3か月で13公演が開催されます。

ツアー後半戦の方がよりハードなスケジュールになっています。今年1月に78歳になられた小椋さんですが、お元気な姿で有終の美を飾っていただきたいと祈っています。

2.『振る舞い』とは―心に響く小椋佳さんの言葉

(1)2002年2月、こもれびホールの感動

小椋佳さんの曲を初めて意識して聴いたのは、1976年、大学1年の時でした。その透明感あふれる歌声と歌詞に魅了され、以来40年以上、聴き続けています。

当初は、シンガーソングライター「小椋佳」として聴いていましたが、私自身が銀行で働くようになり、第一勧業銀行の友人から、本名「神田紘爾」、銀行マンとしての仕事ぶりを聞くにつけ、”小椋佳と神田紘爾”ーその生き方にも、非常に興味を惹かれました。

銀行マンとしてトップ昇進を果たしながら、小椋さんは役員ポストを断わり、浜松支店長を経て、49歳で銀行を退職。東京大学法学部・文学部/大学院(哲学)で”学び直し”をします。

54歳で、「歌談の会」と称する公演を全国各地で開催しますが、2001年、57歳の時に、「30周年コンサート」で全国を縦断中、最後の開催地である沖縄公演の後にガンが発覚し、胃の4分の3を切除します。

数か月間、演奏活動の休止を余儀なくされた後、初めてのコンサート「歌談の会」が、2002年2月9日(土)保谷のこもれびホールで開催され、私も聴きに行きました。小雪の舞い散る寒い日でした。
かつての偉丈夫なイメージとは程遠く、すっかり痩せておられましたが、2時間半、休憩(インターミッション)もとらず、歌い、語り続けた小椋さんの姿に、感動しました。

小椋さんは、このコンサートを通じて、自身の復活を確認するおつもりだったと思います。フィナーレで小椋さんが選んだ曲は、「山河」(作詞/小椋佳 作曲/堀内孝雄)でした。雄大で骨太のこの曲は、心技体すべてが充実していないと歌えない大曲です。

「山河」(小椋佳作詞/堀内孝雄作曲)より

小椋さんの熱唱が終わった時、会場は万雷の拍手に包まれ、「山河」の雄大な曲想は、私の心の中に深くしみ入りました。

(2)『振る舞い』とは

小椋さんは、ラジオ番組にも、パーソナリティとして、いくつか出演されました。「言葉ある風景」(文化放送)は、音楽、歌、そして言葉に対する小椋さんの深い造詣と思いが感じられる好番組でした。

振る舞い』とは:20年近く前、番組を聴いていて、心に響いた言葉として、書き留め、ブログに残しています。

≪当時のメモ≫
振る舞い
振り」はモノマネ、教わるレベル、「舞い」は自分を確立し、自分から自分の意思で、自分自身の表現として出ていくもの。
「話す」のにもレベルがある。1.しゃべる 2.話す 3.語る~これらは「振り」のレベル。「語る」⇒自己表現のレベル⇒「歌う
<「語る」から、自己表現が始まり、自己表現として昇華した状態が「歌う」>

君の仕草よ舞であれ 君の言葉よ歌であれ
この言葉は、小椋さんの生きる姿勢そのものだと思い、私も心に留めています。小椋さんは、歌の中にも、「振る舞い」に込めた思いを表現しています。「守破離」で言えば、「破」から「離」の境地ではないでしょうか。

3.小椋佳「同心円的キャリア」

小椋さんは、銀行マンとシンガーソングライターとしての自分を、「2足のわらじ」と称されることを嫌いました。
「二足のわらじなんて履いた覚えがない」と。
小椋さんの中では、全てが自己表現の場、「正業」「副業」という意識も希薄だったのではないかと思います。

正に、人生の”マルチステージ”を体現しているような小椋さんの生き方ですが、「人が生きるとは、他人のモノマネではない価値を生み出すこと」という小椋さんの言葉が、全てを表しているように思います。

自身の生き方を、「2足のわらじ」ではなく、”全てが同心円の中にある”、と表現しています。
2009年にリクルートワークス研究所所長(当時)の大久保幸夫氏とのインタビューで語っており、大久保氏は、小椋氏のキャリアを「同心円的キャリア」と表現しています。
https://www.works-i.com/works/item/w96-career.pdf 
 (「静と動、両義性のバランスを統合した”同心円的キャリア”の秘密」(「Works96」 2009年10-11月号、大久保幸夫(リクルートワークス研究所所長(当時)とのインタビュー)

4.今日は、残された人生の初日

今日は、残された人生の初日」:小椋さんが好きな言葉として良く紹介される言葉です。
1960年代にアメリカで流行した格言のようです。
Today is the first day of the rest of your life.”

小椋さんは、歌の中でもこの言葉を使っています。

今日が人生最後の日だと思って生きなさい」:この言葉も、毎日を丁寧に生きる支えとなる言葉です。「一日一生」、一日の重さ、尊さ、有難さに思いを致し、背筋が伸びる言葉です。
今日は残りの人生の最初の日」:一方、この言葉は、何か、元気が、希望が湧いてくる言葉です。

 両方とも、生きていく上で大事にしたい言葉です。

小椋佳ファイナル・コンサートツアー「もういいかい」の後半戦が、ゴールデンウイークの最終日から幕を開けます。「もういいかい?まあだだよ」

小椋佳さんの生き方に、キャリアのヒントと力をいただいていることに感謝しつつ、ツアーの完遂を心からお祈りしています。



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