見出し画像

#12  「発想は移動距離に比例する」

1.「発想は移動距離に比例する」

気鋭の経営学者、入山章栄教授(早稲田大学大学院経営管理研究科)が、「イノベーション」を語る文脈の中で、「発想は移動距離に比例する」という言葉をよく引用されます。「イノベーションとは、既存の知と既存の知の新しい組み合わせ(新結合)である」ー入山教授の「知の『探索』と『深化』」「両利きの経営」の理論には、強く共感します。

入山教授は、両利きの経営の中でも、「知の『探索』」の重要性を力説しています。既知のものを「深化」する方が、未知のものを「探索」するよりも容易ですが、「探索」を分かりやすく表現したのが、「発想は移動距離に比例する」という言葉である、と理解しています。移動距離が長ければ長いほど、未知のもの、思いがけない出来事や発想に触れる可能性が高まります。

2.移動距離世界一は伊能忠敬

富岡八幡宮 伊能忠敬像

この写真は、富岡八幡宮にある伊能忠敬の銅像です。前々職のオフィスが富岡八幡宮のすぐ近くにあり、人材コンサルタントとして営業活動中も、この銅像を日常的に目にしていました。

伊能忠敬(1745年2月~1818年5月)は、移動距離という意味では、最長(世界一)ではないでしょうか。

1821年に大日本沿海輿地全図(伊能図)が完成してから今年で200年。改めて伊能忠敬が注目されているようです。50代半ばから70歳過ぎまで、17年をかけて日本全土を測量し、本格的で精緻な日本地図を完成させた偉業は、当時の技術や平均寿命を考えても、色々な意味で驚異的です。

▼17年間で踏破した距離は、約4万キロ                ▼49歳で隠居後、50代から新分野にチャレンジ             ▼自分より19歳も若い高橋至時を師と仰ぎ、暦学や天体観測、測量を学ぶ ▼道具や技術が不十分な中、根気強く、様々な創意工夫を重ねて地図を完成

伊能忠敬は、人生二毛作の生き方、という意味でも、現代でも参考になると思います。

3.コロナ禍の移動距離の伸ばし方

コロナ前には、私も普通に移動し、1日に2万歩以上歩くこともありました。移動の途中で、思いがけない人に出逢い、予期しない出来事に遭遇し、新たな展開へー「偶然」から新しいものが生まれた経験は、少なくありません。

コロナ禍の中、物理的な移動は大きな制限を受けていますが、一方、デジタル・オンラインでは、これまで以上に、自由に、距離を超えて移動し、つながることができるようになりました。

巣ごもり生活をしているようで、実は、全国各地の、これまでは顔を合わせることさえ考えもしなかった人と、オンラインで普通に会話し、つながることができます。

▼昨日参加した、キャリアコンサルタントのオンラインイベントでは、オンラインだからこそ、全国各地の多様な人たちと語り、つながり、これまでにない新しい気づきを得られたように感じました。

そして、移動距離を伸ばすもう一つの方法は、本を読むこと、特に、古典や歴史に触れることではないでしょうか。読書を通じて、距離(空間)だけではなく、時間の旅も味わえるという意味で、ここにもイノベーションのもとがあるように思います。

八月や六日九日十五日:コロナ禍、巣ごもり生活が続く8月ですが、小さな光明が見えたように感じています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?