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#3 キャリアの「転機」に、私が出逢った2つの言葉

1.「目の前の偶然に心を開く」

19年前に私が出逢った松永真理さんの言葉です。自分の、そしてクライアントの、キャリアの転機に遭遇すると必ずこの言葉を思い出します。「iモード」の名付け親でもある松永さんは、2002年9月16日付の日経ビジネスの特集記事(高橋俊介さんとの対談記事)の中で、この言葉を使っています。リクルートからドコモに転じた思いを語る文脈の中で使われたこの言葉に、私は、強いインパクトを受けました。丁度、その日は、CDA養成講座の初日でした。

当時、私は金融市場部門のフロント(マネー)のヘッドから事務管理部門に、突然の異動となり、「キャリアショック」とも言える現実を受け入れられずにいました。「自分は何をやりたいのか、何ができるのか」、1年以上悶々とする日々が続く中で、ある日、日経新聞の「キャリアコンサルタント(CDA)養成講座」の小さな広告に目が留まりました。「もしかしたら、これかも知れない」との思いで、講座に参加したのです。

「目の前の偶然に心を開いた」その先にあったCDA養成講座は、講師のY先生の深い人間性に裏打ちされた講義と実践ワークで、実に新鮮でやりがいのあるものでした。Y先生とは、今でもやり取りが続いています。80歳になられる今でも、新しいテーマで研究を続けておられ、いつも良い刺激をいただいています。また、当時のメンバーが中心になって発足した勉強会のネットワークは、私にとって貴重な財産になっています。

2.「プランド・ハップンスタンス理論」


日経ビジネスの対談の中で、高橋俊介さんは、「プランド・ハップンスタンス理論」(=キャリアの80%は偶然の出来事に左右されるが、良い偶然が発生する確率には影響を与えられる)、すなわち、キャリアの偶然を必然化する5つの要素として、①好奇心、②持続性、③柔軟性、④楽観性、⑤冒険心を紹介されました。現在では、日本でも広く流布している米クルンボルツ教授のキャリア理論ですが、高橋俊介さんは、日本で最も早くこの理論を紹介した方だと思います。

キャリアコンサルタントとしての学びの第一歩で出会った2つの言葉、「目の前の偶然に心を開く」そして「プランド・ハップンスタンス理論」は、私自身が転機を乗り超える上でも、また、クライアントの転機に、共に在り、伴走する上でも、キャリア支援の軸となっています。2002年のメモとして、2つの言葉を大事にブログ書き留めています。

プランド・ハップンスタンスの5つの要素が、実際の行動として、蓄積・累積し、一定のレベルに到達すると、真に、「目の前の偶然に心を開く」という行動変容に繋がるように思います。私の経験上、そう理解しています。

3.クライアントが主役、キャリアコンサルタントは脇役(パートナー)


あくまで、キャリアの主役はクライアントであり、意思決定はクライアントです。キャリアコンサルタントとクライアントの関係で念頭においているのは、「啐啄同時(そったくどうじ)」の言葉です。 これも、松永真理さんの著書(「なぜ仕事するの」(角川文庫))を読んで、初めて知りました。

鳥の雛が卵の内側から声を発して殻から抜け出ることを告げるというのが「啐」(そつ)。 親鳥が殻をつついて雛が出るのを助ける「啄」(たく)。機を見て両者が相応じるという禅宗の考え方ですが、支援は、早すぎてもいけない、遅すぎてもいけないのです。

殻が割れるタイミングは、転機における「脱皮、パラダイムシフト、蛻変」とも言えます。このタイミングは、クライエント、一人一人、違います。千差万別です。キャリアの転機に最適な支援のタイミングを計るための力をつけるには、日々の絶え間ない学びと精進の継続しかない、と考えています。
キャリアコンサルタントとしての真価が問われるところだと思います。

#キャリア #転機 #プランド・ハップンスタンス

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