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契約するときに大切なこととは?その①

 こんにちは。弁護士・中小企業診断士の正岡です。

 みなさんは、契約をするときに大切なことは何だと思いますか?

 契約するときに大切なことといったら、「契約書を作ることでしょ!」とお叱りを受けそうですが、私は、日々の業務の中で、契約前に①相手と契約内容について十分話し合うことが大切だと感じています。十分に話し合えたら、②話し合った内容をきちんと契約書に表現することも大切です。

 そこで、今回と次回の2回に分けて、契約を締結するときに大切なことについて、私の日々の業務で感じていることを書いていきたいと思います。
 今回は、①相手と契約内容について十分話し合うことについて、契約とは何か、契約書の作成までにどのようなプロセスがあるかなどを踏まえてお伝えしていきます。
 ②話し合った内容をきちんと契約書に表現することについては、次回の記事で書かせていただきます。 

1 契約って何?

 契約とは、簡単に言ってしまうと、2人以上の当事者間でなされる合意、つまり、約束です。この場合の当事者には、個人だけでなく会社などの法人も含まれます。
 一方が申し込みをして、相手がその内容を承諾し、「両者の意思が合致すること」で契約は成立します。
 たまに「契約書にサインしなければ契約は成立しないのでは。」とご質問を受けることがありますが、ほとんどの契約は口約束でも成立します。(書面の作成が必要とされる契約など例外はあります。)

2 契約書完成までのプロセス

 契約書を完成させるまでには、「話合いのプロセス」と「表現のプロセス」があります。
 「話合いのプロセス」とは、約束の内容やお互いの気になる部分について、相手と話し合い、確認をとっていくプロセスです。
先程「両者の意思が合致すること」で契約は成立すると書きましたが、お互いの意思を合致させるためには、お互いの考えを聴きながら、契約の内容について一つ一つきちんと話し合うプロセスを経ることが重要になります。
 「表現のプロセス」とは、話し合った内容をきちんと契約書に反映させるプロセスです。口頭で契約できるとはいっても、トラブル予防の観点からは、やはり契約書はきちんと作っておいた方がよいです。この表現のプロセスについては、次回の記事でお伝えします。

3 話合いのプロセスを踏まなかったら?

 それでは、「話合いのプロセス」をきちんと踏まずに契約した場合、どのようなことが起こるのでしょうか。

 話合いのプロセスを踏めていない状態とは、お互いの考えの理解や約束の内容のすり合わせができておらず、お互いの認識がずれたままの状態です。
 重要な部分にズレがあるため、自分は約束通りに義務を果たしたつもりでも、相手から「きちんとしてくれ」と言われたり、相手のやり方に不満があったとしても、「約束通りにした」と言われてしまい、トラブルに発展することがあります。

 業界や企業、担当者が違えば、それだけ異なる考え方、文化、慣習があり、自分の常識は相手の非常識であることも多いものです。しっかりと話合いのプロセスを経なければ、互いの考えを共有することはできず、お互いに不満を持つ結果になってしまう危険があります。
 これに対し、相手と十分に話し合い、契約に関する共通の理解がしっかりできていれば、不測の事態が生じた場合にも、円満に対処できる可能性が高くなります。

4 ご相談を受けて感じること

 私がご相談を受ける中で特に感じることは、相手と十分に話し合うことに意識が向いていないことが多いということです。
 例えば、契約書作成の相談では、相談者の方に、「この部分は相手とどのような話になっていますか。」と聴くと、「そこは話していません。」という答えが返ってくることがあります。

 契約違反の責任を問う部分など、法的知識が絡む難しい箇所であれば仕方がないところもあるのですが、どのような仕事をいつまでにどこまでやるのか、物をどこに納品するのか、その物にはどの程度の品質が求められるのか、代金をいつどのように支払うのか、契約期間はどうするのか、契約の更新やその方法はどうするのか等といった重要な部分が話し合われていないことがあるのです。

 契約書を作ることは多くの方が意識されるのですが、契約前に相手と中身について十分に話し合うことに意識が向いていないことが結構あるのです。
 弁護士等の専門家は、契約上の注意点をお伝えしたり、話し合われた内容を契約書に表現したりすることはできますが、相手と深く話し合うことはできません。
 これができるのは、様々な事情を知っていて、決裁権を持っている契約の当事者自身です。
 契約書の作成に専門家を活用する場合でも、当事者の方には、相手と十分に話し合うことを意識していただく必要があります。

5 まとめ

 それでは、最後にこの記事でお伝えしたいことをまとめます。

  • 契約書を完成させるまでには、話合いのプロセスと表現のプロセスがある

  • 話合いのプロセスを踏まないと、重要な部分で互いの認識がずれたままになる

  • 契約前に相手と十分な話合いを行うこと(話合いのプロセス)を意識する
     
    この記事が少しでも皆様のお役に立つと幸いです。


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