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金融機関の借入金返済が難しくなったときは


はじめに

 今回は、金融機関の借入金返済が難しくなったときの対策の一つとして、経営改善計画について記載します。
 資金繰りが悪化している会社はもちろんのこと、現在は業績が好調な会社も、将来の備えとして、経営改善計画のことを知っていただければと思います。

1 銀行借入の返済が苦しくなったら

 業績が悪化し、金融機関の借入金返済が難しくなった場合、追加融資や借換融資を依頼したり、他の金融機関に新規融資を依頼することが考えられます。
 しかし、金融機関がこれらの依頼に応じてくれない時は、どうすればよいでしょうか。
 その際、経営改善計画という計画書を作り、金融機関に金融支援を依頼する方法があります。ここでいう金融支援は、元金の返済を猶予してもらう(リスケジュール)、返済を楽にするための借換融資を行ってもらう、経営改善に必要な資金を新たに融資してもらうなどです。
 時々、金融機関の借入金の返済を優先して、税金や社会保険料を滞納したり、個人で消費者金融などから借入を行い、会社の資金に回したりする社長さんがいらっしゃいます。
 しかし、税金や社会保険料を滞納すると、延滞税等の負担が大きくなりますし、最悪の場合、滞納処分といって会社財産が差押えられるおそれもあります。また、社長個人が消費者金融等から借入を行っても、会社の資金繰りを支えるには不十分ですし、利息の負担も大きく、社長個人の収支が回らなくなるおそれもあります。金融機関に消費者金融の借入を知られると、金融機関の評価が下がり、支援を受けづらくなってしまいます。
 そのため、経営改善計画を作り、金融機関に金融支援を依頼する方法を知っておいていただきたいと思います。金融機関に対して説得力のある経営改善計画を示すことができれば、通常、金融機関から支援を受けられるためです。

2 経営改善計画とは

 経営改善計画とは、金融機関への返済が困難になった企業が、事業や財務状況を改善するための道筋を明確にし、金融機関へ金融支援を依頼する計画をいいます。
 計画では、自社の現状、経営が苦しくなった原因、事業の課題等を分析したうえで、今後の事業方針や課題解決に向けた行動を明確にし、財務状況の改善予定を数値で示し、金融機関に求める支援内容を明確にします。
 経営改善計画には、以下のような内容が含まれます。

  • 会社概要表(株主、役員構成、役員等との資金貸借、沿革等)

  • ビジネスモデル俯瞰図

  • 経営課題の内容と解決に向けた基本方針

  • アクションプラン及び伴走支援計画

  • 貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書等の計数計画

  • 資金繰表(実績・計画)

  • 金融機関に依頼する金融支援の内容

  • 資産保全表 など

 なお、上から4つめに「伴走支援」という言葉がありますが、伴走支援とは、第三者が企業と一緒になって計画の進捗を確認し、進捗の要因や今後の対策を協議したり、助言したり、金融機関と情報を共有したりするといった支援のことです。伴走支援を受けることで、経営改善計画の達成可能性を高めることができます。

3 経営改善計画を作るメリット

 経営改善計画を作るメリットは様々ありますが、ここでは経営者の視点から、次の3つをお伝えします。

  • 金融支援を受けられることで、資金繰りが改善する

  • 自社の現状や課題と向き合うことができ、課題解決に向けた行動を明確にすることができる

  • 財務状況の改善予測を数値化するため、改善への道筋が見え、経営者のモチベーションを高めることができる

4 認定支援機関による計画策定支援、伴走支援

 認定支援機関とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関(税理士、公認会計士、中小企業診断士、弁護士、商工会・商工会議所、金融機関等)のことをいいます。当事務所の正岡も認定を受けております。
 経営改善計画を作るためには、現状や課題の分析、具体的な行動の設定、細かな計数計画の策定、金融機関との協議などを行う必要があり、とても大変です。
 経営者が自力で経営改善計画を策定することは難しいため、認定支援機関に依頼して、計画の策定を手伝ってもらうのです。
 また、計画を作った後は、認定支援機関に伴走支援をしてもらうことによって、計画の達成可能性を高めることができます。 

5 費用の補助制度

 認定支援機関による経営改善計画の策定支援費用や伴走支援費用の3分の2(事業規模ごとの上限額あり、最大300万円)を国が補助してくれる制度があります。
 この補助制度を利用すれば、企業が認定支援機関に支払う報酬の自己負担は3分の1で済みます。
 ただし、社会福祉法人、一般社団法人、学校法人など、補助の対象にならない法人があることには注意が必要です。

6 誰に相談すればよいか

 経営改善計画の策定に取り組もうと考えたときに、誰に相談すればよいか悩む方もいらっしゃると思います。ここでは、考えられる相談先をいくつか挙げます。

顧問税理士

 顧問税理士が認定支援機関になっていれば、経営改善計画に関する相談に応じてくれるはずです。認定支援機関でなくとも、顧問税理士から知り合いの認定支援機関を紹介してもらえるかもしれません。
 なお、認定支援機関は以下のサイトから調べることができます。
 https://www.ninteishien.go.jp/NSK_CertificationArea(認定経営革新等支援機関検索システム)

メインバンク

 経営改善計画の策定にはメインバンクの協力が不可欠です。メインバンクと信頼関係が築けている場合は、メインバンクに相談することが考えられます。メインバンクに融資の相談をしたときに、メインバンク側から経営改善計画の策定を勧められることもあります。

中小企業活性化協議会

 中小企業活性化協議会は、地域の中小企業の経営改善や事業再生を支援する公的機関で、各都道府県に設置されています。上記5でお伝えした費用補助制度の事務局でもあります。中小企業活性化協議会には、金融機関出身で経営改善の知見を持つ職員がおり、経営改善計画に関する相談に応じてくれます。実績のある認定支援機関を紹介してもらうこともできます。

商工会議所、商工会

 商工会議所や商工会には経営指導員がおり、経営改善の相談に応じてくれます。また、実績のある認定支援機関を紹介してくれたり、専門家派遣制度を使って専門家との相談を設定してくれたりします。

7 さいごに

 長くなってしまいましたが、この記事で特にお伝えしたいことは、次の2点です。

  • 借入金の返済が厳しくなった時の対策として、経営改善計画を作り、金融機関に金融支援を依頼する方法があること

  • 経営改善計画の策定等にかかる費用の3分の2を補助する制度があること

 この記事が少しでも皆様のお役に立つと幸いです。

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