イルカだって友達の喧嘩はほっとけない

Yamamoto, C., Ishibashi, T., Kashiwagi, N., Amano, M. (2020). Functions of post-conflict bystander affiliations toward aggressors and victims in bottlenose dolphins. Scientific Reports, 10, 3776. https://doi.org/10.1038/s41598-020-60423-6

うちの研究室の修了生が博士在学中に行った仕事。
飼育されているハンドウイルカを対象に、個体間で闘争が起こったときに、それに関わらなかったイルカ(第三者)が闘争に関わった自分と仲のよいイルカへ行う友好的な行動(並んで一緒に泳ぐ行動や胸びれで相手を触ったり擦ったりする行動)を観察した。
ハンドウイルカの第三者は、闘争が起こるとそれに関わったイルカへ、友好的な行動を行った。そして第三者による友好的な行動が起こると、イルカたちがその後再び闘争をする回数が減った。さらに第三者は自分と仲のよい闘争個体へ友好的な行動をする傾向があった。ハンドウイルカは、自分と仲のよい個体が闘争したとき、そのイルカへ友好的な行動をすることで、再闘争を抑制して社会的な緊張を緩和していると考えられる。厳格な階級がある社会では、第三者は、勝者に対し行うときはなだめ、敗者に対しては慰めの機能を持つ行動をするが、ハンドウイルカは勝敗ではなくて、自分との関係に基づき闘争後に友好的行動をする相手を選んでいた。これはイルカがより寛容な社会を持つ本種の特徴だろう。

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群れで暮らす動物は、群れを維持するために、闘争で個体同士の関係が悪くなるのをなんとか抑えようとする。それをどうやって行うかは社会の形によっていろいろある。ハンドウイルカは友達が喧嘩したらその喧嘩が悪化しないように行動するのだ。ヒトの社会では、例えば仕事上の付き合いなら、優位な人を宥めたり、下のものを慰めたりするだろう。ハンドウイルカの社会はヒトでの仕事上の付き合いのようなものじゃなくて、友達付き合いのようなものに近いということ。
こういうことがわかるのは飼育下の観察ができるからこそで、そこに水族館で飼育する意味もあるとは思う。でもこういう観察だけでわかるようなことはいずれは野外でもできるようになるのでは。そもそも野生のイルカがこんなにしょっちゅう喧嘩するかはわからないけど。

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