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資金調達の基礎知識-HATSU鎌倉イベントレポート


起業家養成講座

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起業家養成講座とはなにか。
HATSU鎌倉にて、定期的に行われている一般参加可能な会員様向けの講座です。

以前、開催された講座には、”共感を呼ぶ事業計画”であったり、”儲けのカラクリ”などがあり、起業を志す上で必ず必要となる知識ばかりですね。

今回は、僕が参加した”資金調達の基礎知識”に焦点を当てた講座のレポートを書いていきます。

講師紹介

廣川 克也/Katsuya Hirokawa (@Hirokawa_IM)
一般財団法人SFCフォーラム事務局長兼ファンドマネージャー
1993年上智大学経済学部卒業。同年住友銀行入行。1998年通商産業省出向、債務保証審査事業、全国新規事業発展基盤調査事業、起業家精神涵養教材開発事業等に従事。2000年7月銀行復帰、成長企業取引推進担当となり、ベンチャー企業、株式公開志向企業に対する将来性評価による融資業務を担当。2004年1 月同行退職、同年2月より北海道大学知的財産本部着任。2005年12月より慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスインキュベーションマネージャーとして着任、起業家に対する事業計画作成、資金調達、販路拡大支援等を実施。2017年SFCフォーラムファンド設立、ファンドマネージャー就任。I2P Global Competition にて、慶應チームを世界一に導く。

※HATSU鎌倉では”支援仙人”として、起業を目指すチャレンジャーのサポートをしています。

資金調達の際、考えるべき4つのこと

1 いくら必要なのか
2 いつまでに必要なのか
3 何のために必要なのか
4 誰から、どのように調達するのか

この4つの項目を1番から順番に明確にしないと、資金調達は出来ません。
資金調達をしたいのであれば一番に考えたい事柄です。

やってはいけないミス・・・”ざっくり1億円、月末まで。”
これだと、全てが曖昧すぎて誰も資金を出してはくれません。

みなさんも、こんな人にお金を貸したいと思いませんよね。
稀に「君になら!!」と言ってお金を出してくれる場合もある様ですが、珍しいですよね。

考えが纏まったら、次は資金調達の方法です。

資金調達の方法

・自己資金
・出資
・融資
・助成金
・クラウドファンディング
・ICO など

聞いたことのある方法も、聞いたこと無い方法もあるのかなと思います。
それぞれ、出してもらう相手や、時期、形態が違ってきますので、上から順番に今回は自己資金・出資・融資・ICOの違いについて解説してもらいました。

・自己資金

自己資金→自分で用意するお金
自分、親・家族、親戚、友人、恩師、元上司、元同僚など、3F【Friend(友人)・Family(家族)・Foolish(馬鹿)】と呼ばれる人たちから、原則、会社設立時か設立後の資金繰りが安定している場合に、資本金もしくは貸し付けという形で出してもらう方法。※Foolishに関してはジョークの様です。

一般的な場合、親や兄弟、友人のお金が、自分のお金になってから新会社のお金になるという流れになります。

・出資

出資→会社に投資してもらうこと
ベンチャーキャピタル(VC)、エンジェル、事業会社(CVC)、銀行から、会社設立時から株式公開前までの間に、資本金および資本準備金として出してもらう方法。

一般的な場合、自分のお金、親・兄弟、友人のお金、VC等のお金が直接、新会社のお金になるという流れになります。

【 出資を受ける前に知っておきたい事柄 】

・出資とは
投資家が株券と引き換え資金を拠出すること

出資を受ける側のメリット:借入金ではないので、返済義務がなく、安定した資金を手に入れることができます。
出資を受ける側のデメリット:出資してくれた投資家に対し、利益が上がったときの配当金を支払う義務や、株主として経営に参加する権利を与えてしまう事になります。

※「出資」は投資を行う側の呼び方であり、受ける側は「増資を行う」と言います。 違いが分かっていない方もいると思うので理解しておくと良いと思います。

・資本政策とは
上場時における最適の株式数、株主構成及び資金調達等を実現するための施策のことで、資本制作の失敗は修正が困難なので、慎重な資本政策の立案が極めて重要なんですね。

資本制作の目的

①安定株主確保
自由な経営判断ができる権限を確保すること。
投資家とWin-Winの関係が気づけない場合、取締役を解任されることもあります。
②投資家から出資を受ける際の株価の算定
・株価が低すぎる場合
多くの持株比率を確保されるため、調達額は少ない場合が多いです。
・株価が高すぎる場合
追加の投資(増資)を募集しづらくなります。
安定株主の持株比率の増加が難しくなります。
③税務や法務のリスク回避
・税制適格要件を満たさないストックオプションの発行。
権利行使時に多額の所得税を課税される可能性があります。
所得税支払いの為に株式を売却せざるを得ず、持株比率が低下する場合があります。など

株主の権限

2/3超を保有
 株主総会の特別決議(定款変更、取締役解任、合併や解散など)が可能です。
 創業オーナーの場合は、できる限りこの2/3超を保有すべきだと考えます。
1/2超を保有
 株主総会の普通決議が可能。単独保有ならその会社で一番権力を有すると言えます。
 但し、特別決議は単独で可決できず、絶対権力とは言えません。
1/3以上を保有
 特別決議を単独で阻止することが可能です。
 1/3以上保有する株主について、創業オーナーとしては相当意識する必要があります。
3%以上を保有
 株主総会の招集、帳簿の閲覧が可能です。
1%以上を保有
 株主総会における議案提出権が認められます。

投資家の属性と特徴

個人投資家
 成功した起業家や大手VCからの転職者が、個人の資産を運用する形で投資家となります。
 投資額は数十万円〜数百万円が多いです。
 個人投資家は、個人の裁量で決議できる為意思決定は早いのですが、コミュニケーションを大事にした方がいい場合がよくみられます。
ベンチャーキャピタル
 独立系、銀行系、商社系、事業会社なのど関連会社として運営しています。
 投資額は数百万円から二桁億円前幅広いです。
 ベンチャーキャピタルの場合、情報開示、経営参画、確実なexitが求められます。
事業会社(海外企業、CVC含む
 メーカー、鉄道会社、不動産、生活関連産業など、増加傾向にあります。
 投資額は数百万円から数億円まで、評価が高くなる傾向にあります。
 フィナンシャル面より、事業シナジーを重視、安定株主化も期待できます。
一方で、系列の拘束を受ける可能性もあるので意識した方が良いです。

本当に怖いファーストラウンド

バリエーションが高い方が有利?
大手VCから入れてもらうのが有利?
VCからの勧誘に対応する方法?
付帯条項って?
個人投資家(ビジネスエンジェル)との付き合い方

・融資

融資→お金を貸してもらうことです。
銀行、稀にエンジェルや事業会社に、売上がたち、経常収支黒字が見込める段階で、借入(短期・長期)、資本性ローンとして出してもらう方法です。

一般的な場合、自分のお金、親・兄弟、友人のお金、VC等のお金が直接新会社のお金になるという流れになります。
※出資と違う点は、お金を返す必要があるということです。

よく言われている言葉があります。
なぜ銀行は晴れた日に傘を貸し、雨が降ると回収するのか。
これは、収益モデルを見ることで理解できます。

VCの収益モデル
 VCがスタートアップ企業100社×100万円=1億円の投資をしたと仮定します。
 その100社の内10 社が10 倍になれば、1億円となり、V Cは元手回収が出来ます。
 仮に、残りの90社が最悪倒産してしまっても(=回収できなくても)良いと考えます。
銀行の収益モデル
 銀行がスタートアップ企業100社×100万円=1億円の融資をしたと仮定します。
 金利3%として、計300万/年の収益です。
 3社倒産すると、残り97社全てから全額回収しても、
 97社×103万円=9991万円となり、赤字になってしまいます。
 →銀行としては、返済機能が疑わしい事案については早急な回収が必要となるのです。

・ICO

ICO(Initial Coin Offering)→企業等が仮想通貨を用いて、新規事業を立ち上げる際などに資金を調達することです。

クラウドファンディング+独自の仮想通貨といったイメージです。

ICOの事例

1.QASH
2.COMSA
3.ALIS 
4.サンタルヌー
5.Avacus
6.AMPLE! 等

ICOの事業者のメリットと投資家のデメリット

事業者のメリット
・面倒な手続きがなく資金調達ができる
・初期コストが少なくて済む
・仲介業者を挟むことなく、世界中から資金調達をすることができる
・投資家に経営権を渡さなくてもよい
投資家(特にVC)のデメリット
・議決権、資料閲覧権などの権利がないこと
・信頼性の担保(ホワイトペーパーの信頼性)が困難であること
・薄外しさんであること
・システムのリスク

Which should we bet? Jockey or Horse.

一般的人的資質
 リーダーシップ/コミュニケーション能力/プレゼンや交渉術
 楽天的/慎重な性格/誠実さ/正直さ/忍耐強さなど
特定人的資質
 学位/研究キャリア/各種ノウハウ(製造、流通、営業、品質管理など)
 職務経験/起業経験/失敗経験/業界知識/商慣習知識など
経済的資質
 自己資金/保有リソース/権利や資格/知的財産など
社会関係資質
 創業メンバー/アドバイザー/活用可能なネットワーク/表彰履歴

5つのP

Poor Planning
 Produce
Poor Performance
 (出典)デイビッド・メッキン「財務マネジメントの基本と原則」 

金融機関との付き合い方

「計画的」であること、に尽きます。
・キャッシュフローをきちんと管理していれば、資金ショートはある程度予想でき、取引銀行への資金調達の依頼も余裕を持って交渉できます。
・銀行も貸さないと儲からない。会社が成長してくれないと資金ニーズも出てきません。
・月次でどれくらい入金があって、どれくらい支出があるかの管理という、当然のことが出来ない無計画な会社に、大事な資金を提供することはできません。これはVCも同じです。
・但し、相手はプロかもしれないが神ではありません。

おすすめの本

成功しない組織

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廣川さんがこれまで多くの起業家と会ったり、投資を行う中で感じた、あくまで廣川さん個人の主観での「成功しない組織」を教えて頂きました。
これからも、どんどん増えていくんじゃないかとのこと。
自分自身が、このリストに当てはまる人間にはならない様に気をつけようと思いました。

HATSU鎌倉とは

今回のイベントの主催でもあり、会場でもあるHATSU鎌倉に関しては、下記のnoteを読んで頂ければどの様な施設なのか分かります。


感想

今回のイベントの内容はタイトルの通り「資金調達」についてでした。

資金調達って正直「難しそう、大変そう、調達したというニュース見て凄い!(理由なしw)等々」のイメージだと僕は思っていました。

でも、どうでしょうか。
廣川さんの講座を振り返ってみると、資金調達=会社を運営していく為のお金を”どこか・誰か”から調達する事なんですね。(あれ、意外と単純な話です)

自己資金(貯金等)や親や友人からの借入れを新会社の資本とするのも資金調達であり、VCから出資を受ける事や、銀行から融資を受ける事だけが”資金調達”じゃ無いんですね。

僕自身は正直、すぐに資金調達をする予定はありませんし、今後もするかは分かりません。

では、なぜ今回の講座に参加しようと思ったのか。
それは、これからの僕に絶対大事!!だと感じたからです。

そもそも、資金調達(投資・融資等)は身近には無いものなので、名前だけは知っていて、大雑把に知識はあるけれど細かくは知らない。そんなものなんですよね。
 
僕は社会人9年目ですが、中学・高校の時に資金調達なんて勉強しませんでしたし、社会人になっても会社のイチ社員には”資金調達”はそうそう関係ないんですよね。なので、今の今まで知ろうとも思いませんでした。

しかし、お金の流れであったり仕組みはどんな事業をするにも必要不可欠ですし、資本主義の日本で仕事をしていくには知っておく必要がある事です。
 
もし、今後資金調達が必要になった時に増資先や銀行、VCとの関係性の持ち方だったりを事前に知っておくだけでも話す内容も気持ちの持ち方も変わるなと思いました。
 
株主の持ち株比率に対する権利の違いの詳細やVCや銀行の収益モデル等
全くもって知らなかった事も沢山知る事が出来ました。
 
何より廣川さんの講座は事例なども踏まえて細かく分かり易く教えて頂けるので、納得しながら聞けて自分の知識になる感覚があります。
参加して本当に良かったです。

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