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なぜ嬰ハ短調なのか-ベートーベン弦楽四重奏14番-

調性にはいろいろ意味を持つことがあります。調性とその意味に関してはいろいろな人がいろいろな意見を持っていてそれがまとめられた本もいくつかありますね。ただ、調性はそのシンボル的な意味合い以外にも意味を持つことがあります。

たとえば、ベートーベンの交響曲3番「英雄」は変ホ長調ですが、変ホ長調は軍隊の調性です。なぜかといえばMi♭管のホルン、変ホ調に調律されたティンパニが軍隊でよく使われていたからです。楽器を馬の上でも演奏できるように、そして遠くまでよく響くように設計されたからでしょう。

シンボル的な意味合いでは、歴史的にニ短調は荘厳かつ厳粛な調性として用いられますし、バッハの「マタイ受難曲」でイエスが神を疑う場面において変ホ短調(♭6つ!)で「あり得ない」ことを意味していたりもします。

楽器の構造やシンボルと密接にかかわる調性ですが、ベートーベンの弦楽四重奏14番がなぜ嬰ハ短調だったのか、それが必然的に見えるように分析してみましょう。

まずは聞いてみます。

なんと7楽章まであり、40分近い大曲です。
1楽章はフーガで始まり、民謡、レチタティーボ、変奏曲、スケルツォ、コラール、ソナタ形式のフィナーレ
と、ベートーベンの全ての粋が詰まった集大成と呼ぶにふさわしい大曲です。

そんな大曲なのにもかかわらず、ベートーベンは嬰ハ短調という異質な調性を採用しています。なぜ異質かというと、嬰ハ短調は非常に弦楽器と相性が悪い調性だからです。

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