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Si♮-…Do♭

一音だけのアナリーゼというのは楽しいですね。ショパンのバラード1番でもやってみましたが、一音のために曲の全体をみてその響きを味わい解釈していくというのは、心地よさすら感じます。一音々々がいかに大切に書かれたかということがよくわかるからかもしれません。

今日は、同じことをドビュッシーの前奏曲6番「雪の上の足跡」でやってみましょう。2ページの短い曲で、他の前奏曲に比べると演奏も比較的容易なため、弾かれることも多いと思います。とはいえ、その音楽の髄に使われている作曲技法は並大抵のものではなく、やはりそれがこの曲の精神性を高めているように思います。

まずは演奏を聞いてみましょう。

さて、この21小節目のDo♭に注目します。

この音はかなり不思議で、前のSi♮と次のDo♭を異名同音で結ぶ音ですが、なぜか左手はSi♮のままになっています。なぜこんな書き方をしたのでしょうか。このDo♭が必然的に感じられるようになるために、この音の響きが♭の音に聞こえるようになるために、アナリーゼしてみましょう。

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