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完全一度への視点-旋律編-

簡単なことについて語ってみましょう。

簡単なことについて語るのは楽しいことです。そして、それは大抵の場合深淵な探求につながることができます。
水が0℃で凍ること、ひらがなの成り立ち、1+1=2、嘘つきのパラドックス、・・・

そんなこんなで、今日は、完全一度について考察してみます。

完全一度、それは音楽においてもっとも単純な音程であってもっとも単純な和音です。ほとんど単音と区別がつかないので、これはもしかしたら和音とは呼べないかもしれません。

完全一度は同じ音の高さですから、これはだれが初めに使ったかなどはわかりようもないことでしょうね。同じ旋律を一緒に歌えばそれが完全一度です。

さて、ではどんな切り口で完全一度を解剖していけるのでしょうか。

まずは、旋律としての完全一度を見てみましょう。

グレゴリオ聖歌から、Ave Maria

グレゴリオ聖歌のAve Mariaはたくさんありますが、このAve Mariaはメリスマが非常に豊かです。同時に音域はとても広く、跳躍音程も多いので歌うのはかなり難しいでしょう。この旋律のMa-ri-aのriに5音連続でDoの音か当てられています。(この時代ではDoとは歌わないですね。ソルミゼーションでSolと歌うのがよさそうです)

この完全一度は声を建物に響かせるためのヴィブラートのような効果を放っています。

演奏も是非お聞きください。

さて、この完全一度とは全く違う効果の完全一度をお見せしましょう。

スカルラッティのニ短調ソナタ

ものすごくかっこいいですよね。同音連打というのは実際にも演奏が難しいですが、技巧的な効果が高くよく用いられます。

それにしてもこの曲和声感も近代的な不協和音が目立ち、ジャズっぽいカッコよさがあります。ピアノで聞いてもチェンバロで聞いても面白いです。せっかくなので両方お聞きください。

ほとんど電子音楽のような響きがしますよね。初めて聞いたとき、なんだこのすさまじくかっこいい音楽は!と感動したのを覚えています。

アルゲリッチの演奏です。これがバロックの音楽だと思うと震えるところがありますね。

同音連打による技巧は古典からロマン派にしっかり受け継がれ現代に至ってももちろんよく使われています。非常に魅力的だと思います。

ヴィブラートの同音連打と技巧の同音連打が同じ文脈で使われ、それが変幻自在に移り変わる音楽もお見せしましょう。

プロコフィエフのフルートソナタより第一楽章

それから展開部の途中から。

2小節めの三連符はヴィブラートのような効果の歌うような完全一度の旋律ですが、それが展開部になるとだんだん混ざっていき、トランペットのような同音連打の様相を呈していき、だんだんと技巧的になってきます。この同音連打は三楽章にも引き継がれ面白い効果を得ます。

これも演奏がありますので是非お聞きください。


さて、ここまでいろいろな旋律としての完全一度を見てきましたが、和音としての完全一度についはまだあまり語っていません。

これは次回に回すことにしましょう。

記事のお読みいただきありがとうございます。 即興演奏を通した様々な活動と、これからの執筆活動のために、サポートしていただけたら幸いです。