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壮大な計画-Beethoven Op.110-

ベートーヴェンの後期ピアノソナタはとてつもない精神性があるとよく言われるのですが、それは結局どういうことなのでしょうか。

実際に、演奏するのも聞くのも難解至極だったりしますよね。たしかに名曲なんですが、それを「難解だがなんだかすごい」で終わらせないで、言語化してみましょう。

今回のアナリーゼの対象はベートーヴェンのピアノソナタ31番。言わずと知れた名曲です。

まずはいつも通り音源紹介・・・といきたいところなんですが、演奏がありすぎてどれを紹介すればいいのか迷ってしまいます。

Krystian Zimermanの演奏はいかがでしょうか・・・

すっきりしていて素晴らしい演奏だと思います。

作曲年は1821年で、1770ー1827のベートーヴェンの生涯のなかでは最晩年に位置し、完全に聴力を失ってしまったころです。

最後の3つのピアノソナタ30番31番32番はよく並べられるのですが、どれも一楽章は非常に簡素なソナタ形式になっており、全体的に見ても29番のような大作ではなくなっています。

今回のポイントは曲の最後の最後、なぜここに感動するか、にしましょう。

長い長い苦しみと嘆きを乗り越えたどり着いた喜びの音楽・・・なんて表現されることもありますが、それではあまりに詩的すぎます。もっとベートーヴェンの仕掛けた具体的で戦略的な作曲技法について迫ってみましょう。

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