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アナリーゼの初歩の初歩のまた初歩(応用編)

楽曲分析のことをアナリーゼと言います。音楽理論を勉強する際の三大柱の一つだと思います。私の考える音楽理論の三大柱とは、

楽曲分析
音楽書法
音楽史

です。音響学なども大事ですけどね。音響学は音楽学の一分野であって、音楽理論の外のような気もします。ここら辺の構造と階層は一体どうなっているのでしょうか。これに関しては別の機会に考察してみることにしましょう。

ちなみに楽曲分析はフランス語でAnalyse、音楽書法はÉcritureで、日本語でのカタカナ表記のアナリーゼ、エクリチュールと対応していますね。

私はカタカナ表記があまり好きではないので、楽曲分析などと言っていますが、今回に関してはアナリーゼのほうが通りが良いかもしれませんので、アナリーゼと書いていきます。ちなみにフランス語での発音はアナリーズです。

さて、これからアナリーゼをしようという皆さん。今勉強中ですよ、という皆さん。アナリーゼの初歩の初歩を伝授しましょう。ただし、和声解析がどうの、とか、形式がどうの、とかいうことではありません。ただ、実りある、意味のあるアナリーゼにするための心構えです。

なお、これは私が数年アナリーゼを勉強してきてたどり着いた私流のアナリーゼですが、おそらく音楽大学の試験や入試、あるいは論文を書くにあたっても役に立つことだと思います。自分の先生と言っていることが違う!と思われる文章もあるかもしれません。しかし、実はそれでよいのです。これについては後述します。

第一。小節番号を振る。

最近の楽譜には必ず小節番号が振られているのでその場合は大丈夫です。ですがもし小節番号が振られていなければ必ず振りましょう。

もし私の生徒さんで、小節番号が振られていないことがあれば、もうその時点でやり直しです。

ちなみに小節番号を振るコツは、丁寧に二段目の最初の小節番号を書き、そこから二段目の小節数を数えて、二段目の最初の小節番号+二段目の小節数を三段目の最初の小節番号にすることです。

300小節くらいなら2~3分で振り終えられるようになりますから、サッサと振ってしまいましょう。

小節番号を振る理由ですが、なによりも、言明したい小節に名前を付けられることです。
「第二主題の開始から3小節目のフルートの旋律は・・・」
などと言うより、
「85小節目のフルートの旋律は・・・」
と言ったほうが厳密でわかりやすいからです。そもそも第二主題がどこを表すかというのが主観に依存する場合も多くあります。ベートーヴェンのソナタで第二主題と言われると意見が分かれる曲は多いですね。

さて、小節番号を振り終わったら、いよいよ楽曲分析に取り掛かりましょう。このときに大事なことは、大まか→細かいという流れで見ていくことです。

そして、アナリーゼの二大柱は、「作曲背景」と「形式」です。この二つをとても大まかなところから見ていくのが大切です。

簡単には、作曲背景は
どんな時代に書かれたか
どこの国で書かれたか

何派の音楽か
作曲家は誰か

その作曲家のどの時期に分類されるか
同時体の作曲家や芸術の影響はあるか

何年に作曲されたか、そのとき何歳か
その作曲の動機、献呈はどうなっているか

その曲が他の曲に及ぼした影響はあるか
初演者は誰か

というように見ていきます。

形式については、
管弦楽曲か、室内楽か、ソロか、歌曲か

楽器は具体的に何か

何楽章形式か

のように大きく見ていきますが、これは細分化がどんどんされていくので、この記事においては省略します。いずれ詳しく書きたいと思っています。

なんにせよ、大きくみて、だんだん細かく、という流れが大切です。(シェンカー分析はその逆を辿る方法で、これもとても興味深いですが)

ここまでで、2つの大事なことを述べました。

小節番号を振ること
大きく→細かく

これを徹底すれば音大で必要なアナリーゼのレベルには簡単に達すると思います。しかし最後に一つ、さらに本質的なアナリーゼをするために一番大事なことを述べます。

「その曲はなぜ感動するか、この曲に秘められた精神は何か、これを自分の聴覚と知覚に徹底的に問い、それを文章化すること」

これにつきます。アナリーゼにおいて、
何が第一主題で、その和声がどうなっていて、どの主題がどう変形して…
ということは副次的なことであって、「その曲はなぜ感動するか、この曲に秘められた精神は何か、これを自分の聴覚と知覚に徹底的に問い、それを文章化すること」のためのツールに過ぎません。

ああ、この主題がこう繋がり、これが伏線になって、こうやって解放され、それがこのような効果をもたらすから、この部分で感動するのだ

ということを厳密に述べるために、和声分析をして、形式を理解して、作曲の背景を考察するのです。

アナリーゼは実は主観的な作業です。「私」がこのような理由によって感動するのだ、ということを明確にしてください。

つまり、先生によって教えることが違う、分析の仕方が違うというのもある意味当然で、先生という一人の人間が受けた感動を伝えられているからです。ただ、その言葉が非常に明確であるということは共通していると思います。

そのようにして為されたアナリーゼは、自分の演奏に生かすとき、その曲の解説を書くとき、その曲を魅力的に紹介するとき、そしてその曲をさらに深く知り好きになるために、必ず役に立つことでしょう。


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