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これから投資すべき分野は?

<労働投入量は減少>
 
内閣府は2022年度の経済財政白書で労働投入量に関し、2パターンの推計をまとめました。出生率や就業率が比較的高水準の中位シナリオでは、労働投入量は2025年から2040年まで平均0.6%、2041年以降は年1.0%のペースで減ります。低位シナリオでは2025年から2040年は1.1%、2041年以降は1.3%のペースで落ち込みます。2065年の労働投入量は中位シナリオで2019年比約7割、低位シナリオでは6割を切る水準になります。 
 
<リスキリングと年収は正の相関関係>
 
2022年度の経済財政白書はリスキリングの効果を検証し、大学など職場外でのOff-JTや自己啓発によって、年収が約7%増えるとの分析を示しました。日本の社会人教育が柔軟性に欠け、労働市場のニーズを満たしていないとの課題も指摘しました。
 
リクルートワークス研究所の全国就業実態パネル調査では、Off-JTの実施者は1年目から年収が増え、3年目は何もしていない場合より5.9%高くなり、自己啓発も組み合わせていると6.7%とさらに伸びが大きいです。
 
<人財投資と企業業績も正の相関関係>
 
日興アセットマネジメントは新ファンド『日本株人材活用戦略』を運用します。従業員の上限や人件費などの情報から企業の人的投資効率などを算出しスコア上位に投資します。1998年以降の過去データではスコア上位20%の累計投資リターンは28%と、最も低い企業群のマイナス25%に対して大幅に高い状況です。
 
社員口コミを収集分析するオープンワークは、社員や元社員が5段階で評価する『企業評価スコア』と業績や株価の関係を分析しました。『待遇面の満足度』『社員の士気』『風通しの良さ』『社員の相互尊重』『20代の成長環境』『人材の長期育成』『法令順守意識』『人事評価の適正感』の8項目と『総合スコア』の計9項目を使い、2021年時点での上位20社と下位20社を分けて調べました。
『総合スコア』を分析したところ、上位の株価は2016年末に比べ72%上昇、下位の18%を大幅に上回りました。2021年度まで5年間売上高も上位は4割強と下位の1割強に比べて大幅に上回りました。特に『一人当たり売上高』の伸びと『20代の成長環境』の関連が高かったです。 
 
<AI人材は不足>
 
経産省によるとAI人材の不足は2030年に12.4万人と2025年より4割増えます。AI開発のエクサウィザーズが4700人を対象にデータサイエンスのスキル数学への理解や好奇心などを数値化して調査した結果、DX推進部署以外でも5人に1人、企画部門の3人に1人、営業で4人に1人が素養が高いことが判明しました。
 
日本IBMは世界中の企業経営者ら7500人にAIの導入状況に関する調査結果を公表しました。
『ビジネスにAIを活用している』と回答した世界の企業は35%、地域別では中国が58%、インドが57%です。『AIの展開を加速させている』と回答した企業も中国が84%と最も高かったです。『AIを検討中』とした企業も42%です。 
業界別では自動車業界が67%、金融サービスが54%で関心が高かったです。
AI導入の推進力となっている要因について聞いたところ、『AIの進歩によりAIがより身近になったこと』が43%、『コスト削減と主要プロセスの自動化の必要性』が42%と上位を占めました。
今後1年間の投資計画に関しては『研究開発』が44%で首位でした。
サステナビリティの目標達成に向けてAIの適用を計画している企業も66%ありました。 

<これから投資すべき分野は?>

日本は人口統計上、今後労働投入量が減っていくことは避けられません。これは確実な未来です。内閣府の低位推移で仮定した場合、今と同じ生産性であれば2065年のGDPは6割以下となり、350兆円を切る計算になります。GDPは『一人当たり生産性✖️人数』で決まるため、投入量=人数が増えないのであれば、一人当たり生産性を増やすしか方法はないです。
 
では一人当たり生産性を増やすためにはどの分野に投資すべきなのでしょうか。リスキリングの重要性は高まっていますが、どの分野へのリスキリングをすべきかという話はまだ十分に議論されていない気がします。我々の時間は有限であるため、全ての分野を勉強することはできません。リスキリングが効果を発揮し、社会全体で人材の再配置が進むのに5〜10年程度の時間がかかります。生産性を伸ばすためにはどの分野かに集中して投資=勉強する必要があると考えています。実は生産性の7割は、どの分野に身を置くかでほぼ決まります。 上記オープンワークの調査で『成長環境』と『一人当たり売上高』が正の相関関係があるのもそのためです。
 
ここで中国に目を向けてみます。中国は10年後には世界最大のGDPとなる見込みで、中国国内でも最大市場です。中国政府は2021年3月に定めた5カ年計画で欧米に比べて劣勢とみられる『AI、量子情報、半導体、脳科学、遺伝子、バイオテクノロジー』などの強化を掲げました。
私見ですが、現時点ではこの6分野が今後投資すべき分野だと私は考えます。少なくとも中国はこの分野にニーズを感じているため、中国に対して販売することが可能です。営業マンとして、顧客のニーズを知り、ニーズに合ったものを提供するというのが販売の基本です。中国は現在世界第2の経済大国であり、2028年にはGDPでもアメリカを抜くことを考えれば、中国のニーズに合わせた投資をすべきとするのが一番賢いやり方だと思います。今から5年かけてこの分野に投資すれば、中国が世界最大の市場となった時に、そのニーズを汲み取って中国で販売を伸ばすことが可能になると思います。
 
マーケティングではまず対象を絞り込むターゲティングが必要となります。その上で自社の立ち位置のポジショニングを決定します。これは企業のみならず個人としても通じる考え方だと思います。
5年後の中国市場をターゲティングとし、その上で中国で必要となる6分野『AI、量子情報、半導体、脳科学、遺伝子、バイオテクノロジー』のどれかに強みを置くポジショニングを考えるのはいかがでしょうか。 
 
未来の事は正直誰にも分かりません。ただ、未来のために戦略的に投資が必要であることは中国が教えてくれました。自分の5年後、10年後を考える上で何が来そうなのか、何に投資すべきなのか、自分の時間を何に使うべきなのかを考え、実行するのは100年人生幸せに生きるためには必要なことだと思います。 


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