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日本の潜在成長率を欧米並みに引き上げる方法

政府は2022/6/7、骨太の方針を閣議決定しました。岸田首相が掲げる『人への投資』に重点を置き、3年間で4000億円を投じます。付加価値を生み出せる人材の育成が成長のカギを握ります。
社会人のリスキリング、デジタルなど成長分野への労働移動、兼業・副業の促進、生涯教育の環境整備などが主な課題になり、デジタルスキルは職業訓練の講座の割合を今の2割程度から3割超に高めます。
 
日本の問題はすでに明らかになっています。『少子化・人口減少への対応』『エネルギーの安定供給と脱炭素の両立』『デジタル改革などによる生産性向上』『社会保障と財政の安定確保』などです。この状況で政府の役割は山積みする課題の解決策を国民に示して、説得し難しい負担調整を伴う改革を断行することです。
 
経済の地力を示す潜在成長率が、日本は2000年代半ば以降1%にも届きません。OECDの2021年のデータでは日本は0.5%で、ギリシャ(0.4%)、スペイン(0.6%)と同水準、アメリカ(1.8%)、ドイツ(1.3%)との差は大きいです。みずほリサーチ&テクノロジーズの試算によると、潜在成長率を欧米並みの1%台半ばまで引き上げるには、官民の人への投資額を現在の1.6兆円から年3.9兆円まで増やす必要があります。
内閣官房によると、企業による人への投資額はGDP比で2010年前半は0.1%、アメリカは2.08%、フランスは1.78%で圧倒的に少ない状況です。
経済産業研究所の試算では、教育訓練投資の累積額が2倍になると、労働生産性が2.2%上昇し、特にサービス業は2.5%高まります。
デンマークは職業訓練の内容を労使が協議し、ニーズに合うスキルアップを支援します。手厚い失業給付とセットの雇用政策はフレキシビリティと呼ばれヨーロッパ各国に広がります。スウェーデンは就学休暇と仕事復帰の権利を保障する教育休暇法があります。
 
英人材サービス大手ヘイズスペシャリストリクルートメントジャパンが日本や中国などアジア5カ国地域で転職を考える理由を聞いたところ、給与と回答した人は平均で73%となりました。いずれも前回の調査に比べて10ポイント以上増えました。中国は83%、シンガポールは78%と高水準です。日本では新たな挑戦が56%と最も高かったです。 
 
パーソルキャリアの大手転職情報サイト『DODA』によると、IT技術職の毎月の新規求人倍率は2019年に3〜5倍でしたが2021年に初めて10倍を超えました。一方平均年収は438万と、2019年比で4%減りました。
米マーサの2021年の調査によると、人材不足の米国や中国はIT・ネット職の年収中央値が全職種の中央値を8〜10%を上回りますが、日本は全職種中央値より2%低い状況です。 
 
日本政府は優秀な外国人材を日本に呼び込みたいと考えていますが、上記調査でわかる通りアジア人材が重視するのは給与です。ただし日本の給与はこの30年間ほとんど増えていません。すなわち日本に優秀な人材は来ないのです。逆に日本の優秀な人材が海外に行ってしまう輸出超過の状態が続いています。
 
私がもし首相であれば、せっかく骨太の方針で『人への投資』を掲げたのですから、この3年間だけは GDP 比で世界ナンバーワンとなるように人への投資をします。予算は年2.3兆円の上乗せとなりますが、この2.3兆円は社会保障費から持ってきます。社会保障費は44兆円ですので特例法で3年間だけ、社会保障費の5%を人への投資に回すようにします。単純にこの5%を回すだけで、潜在成長率が欧米並みの1%半ばまで引き上げられるのです。あれこれ難しいことをする必要はありません。賃金の面で魅力的な環境が整えば、アジアの優秀な人材が来てくれるのは立証されています。日本人だけではなく世界中の優秀な人を集めることが、日本の復活に大きく役立つのは間違いないでしょう。 
 
要はお金の使い方だと思います。国家予算で日本は110兆円あります。この国家予算をどう使うかだけなのです。今まで通りの配分でやっていては成長しないことは平成で立証されています。ぜひ日本の将来に希望が持てるような予算編成を国会、各省庁にしてほしいと思います。 


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