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人財獲得は日本の国策

<教育投資は低下>
 
世界経済フォーラムが2020年に発表した『将来必要なスキルへの投資』の国別ランキングで、フィンランドが1位、デンマークやスウェーデンなど北欧諸国はいずれも上位で、過去10年間の労働生産性など技術でトップ集団です。 
文科省科学技術・学術政策研究所がまとめた『サイエンスマップ2018』によると、国際的に注目される902の研究領域のうち日本が引用するトップ1%に入る優れた論文を手がけているのは30%で、アメリカの85%やイギリスの60%を大きく下回ります。新領域に挑む尖った研究者を大事にできていない状況です。 
米国のスタートアップ企業のうち25%は、留学生として渡米した人材が設立しています。2021年は米ハーバード大の出願者は前年比1.4倍、米MIT は1.6倍に増えました。
ユネスコや文科省によると、2000年から19年の間に海外留学生は中国やインドが7倍、韓国も1.5倍に増えましたが、日本は2割減です。米国における海外留学生も1990年代は日本が1位でしたが、2019年は8位まで落ち込んでいます。課題の一つは学費の高騰です。米国留学は年約800万円かかりますが、親世代の収入が頭打ちとなっており、社費留学も減っています。国の支援は学部留学生数で年45人、支援額は最大400万円弱に止まります。 
 
<優秀な人材は不足>
 
米コーン・フェリーは、2030年に世界で専門人材の不足が約8500万人に達すると予測し、人材不足がなければ得られたはずの約8.5兆ドルの成長機会が失われると見込みます。
 
総務省が2022/7/5、2022年2〜3月に日米独中の企業300社を調査した2022年の情報通信白書を公表しました。『人材不足』をあげた割合は日本の68%に対し、中国は56%、ドイツは51%、アメリカは27%でした。特に AIデータ解析の専門人材の状況は『大いに不足』と答えた日本企業は30%を超え、『米国やドイツと比べて不足状況が深刻』と指摘しました。DXを進める目的では各国ともに『生産性向上』や『データ分析活用』が多く、日本企業は効果が『期待以上』とした回答が米中独に比べて少なく、『期待するほどの効果を得られていない』の回答が4カ国中最も多かったです。 
 
情報システム企業の業界団体情報サービス産業協会は、IT分野の高度人材を産学官連携で育成するプログラムを始めます。NTTデータなど会員企業に加え東京工業大学などの専門職が講師陣を務め、群馬県が実地研修の場を提供します。2026年までにAIやデータサイエンスなどの分野で100人以上のトップ人材を目指します。 
 
<人財獲得は日本の国策>

この5年で技術の進歩は凄まじいものがあります。一方で人間自体はそこまで進歩していません。そのためITを含め技術が使いこなせる人材というものが極端に不足する事態となっています。まさに『人財』難の時代なのです。人は財産であり、その人材を得るのが非常に難しい時代となっています。これは日本だけではなく世界共通の問題点となっています。そのため優秀な『人財』の争奪戦が行われており、各国がしのぎを削っている状況なのです。
リスキリングは『人財』を自分の国から育てようという試みの一つに過ぎません。優秀な人材を高待遇で受け入れる税制の整備等は『人財』を海外から得るための手段です。 
日本は『人財』という考え方に気づくのが遅れました。その結果優秀な『人財』は海外に出て行ってしまい、日本の国力は低下しました。今後日本が復活するためには優秀な『人財』の獲得が国策となります。

技術と違い人は簡単には育ちません。そのため目に見える効果が現れるためには、10年単位での月日が必要となります。北欧で生産性向上、リスキリングが注目されたのは2000年前半であり、それが今花を開き国家の生産性向上に役立っています。要は20年かかっているのです。アメリカは移民という形で海外人財を集めているため、引き続き世界最大のGDPを誇っています。日本はこの30年間『人財』を流出し続けた結果、世界におけるプレゼンスが低下したと考えられるでしょう。
 
国の制度や技術はパクって来ることができます。そのため数年あれば先進国にキャッチアップすることは可能です。一方『人財』は海外からの移民であれば数年で対応可能ですが、日本人で補おうとすると10年単位でのスパンで考える必要があります。要は日本の人材獲得に向けて2、3年ではできないのです。そのことを自覚した上で、皆がリスキリングや生涯学習等に励むと20年後ぐらいに結果が出るかもしれません。 

もし日本を復活させるのなら、まずは『人財』の獲得を日本の国策と据えた上で、短期的には優秀な海外経験者の日本人の確保及び優秀な日本人の海外流出の阻止、長期的には日本人で優秀な人材を成長させるという両軸で考えていくのが最も合理的だと考えます。岸田首相の内閣改造後の公約でこのような政策が入っていたら面白いのにな、と思っております。


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