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「岸田政権による原発回帰がもたらす10の問題」(メモ)

原子力市民委員会(CCNE)が、1月20~23日までに意見募集の締め切りを迎える原発政策について、緊急リレートーク「岸田政権による原発回帰がもたらす10の問題」をオンライン開催した。

本来なら、政府が説明・公聴会を行うべきところ、民意を掘り起こすべく、関心ある市民による努力が続けられている。約400人が参加したという。以下は私自身のために作ったメモ。偏りがあるので、前半と後半で動画が配信されている。両方を見ることをお勧めしたい。

【Part1】緊急リレートーク!「岸田政権による原発回帰がもたらす10の問題」(2023.01.15)

資料:http://www.ccnejapan.com/?p=13342%E3%80%80

1.法的な問題

海渡雄一(弁護士、脱原発弁護団全国連絡会 共同代表、CCNE原子力規制部会)
 エネルギー、原発政策の重要なことを閣議決定だけで決めるやり方が慣例化している。
 原発を止めるには、ドイツがやったように国会による法制定、または行政によるエネルギー基本計画で脱原発を明記させるかだが、福島原発事故後、脱原発法を提案したが成立しなかった。やり方を変えていかなければならない。(日本の裁判所はなぜ福島原発事故を未然に防ぐことができなかったかの分析も、海渡資料にあり)

2.原子力規制委員会の問題

満田夏花(国際環境NGO FoE Japan 事務局長/理事、CCNEアドバイザー)
 今回パブコメにかけられているGX案には、「原子力規制委員会により安全性が確認されない限りは」などの言葉が散りばめられ、原子力規制委員会は原発推進の隠れ蓑になってしまっている。満田資料

3.原発の安全性の問題 

小倉志郎(元東芝 原発技術者、CCNE原子力規制部会)
 1967年、日本でBWRの原発が初めて建設される頃、原発メーカーに就職し、2002年まで35年間働いたエンジニア。入社した頃、日本には原発を作れるメーカーはなく、規制能力のある官庁もない状態。原発の設計・建設は米国のGEやウェスティングハウスが電力会社から受注。その頃、原発の安全性とは事故があっても原発の外に放射能を漏らさないこと。対策は5つの壁(核燃料ペレット、燃料棒、原子炉圧力容器、原子炉格納容器、原子炉建屋)だと。
 2011年3月の事故で5つの壁はいとも簡単に破られ、放射性物質は広い範囲に広がった。
 その後、原子力規制委員会ができて新規制基準ができた。しかし、どこにも「安全」の定義が書かれていない。原子力規制委員会は、新規制基準を満足しても、原発の安全性を保証するものではないと公言。ではどうすればいいのか。放射能が原発の外に出る可能性がある原発の運転は許さない基準を作るべきだ。その基準ができれば、日本には原発は一つもなくなるだろう。

4.原発の運転延長の問題

後藤政志(元東芝原発設計技術者、CCNE原子力規制部会部会長)
 物が古くなると劣化して壊れやすくなる。科学的に正しい当たり前のこと。一般的な機械の故障の発生率を示すバスタブ曲線とは。縦軸に故障率、横軸に時間経過をとる。初期故障期には設計ミスなどがあり故障率が高いが、問題を潰して故障率が下がり、偶発的に起きる故障期に入る。どんなものでも最後は劣化して急激に傷んでくる摩耗故障期に至る。技術者は当たり前に考えていること。政府はこれを無視している。

出典:後藤資料

 故障のあり方には、腐食や亀裂、脆化などがあり、中性子の脆化は深刻な事態をもたらす。
 また、福島事故で分かったのは、水位計が誤作動したり、非常用復水器の冷却機能が失われたり、爆発を防ぐために格納容器内の水素をベントで出そうとしたら逆流して爆発したり、安全を確保する機能ができてなかったこと。
 老朽原発の検査には限界がある。内面、側面を見る目視点検でも、非破壊検査(超音波検査やX線検査)でも見落とす可能性がある。技術的に技量が足りない場合もある。「特別点検」という老朽化原発に行う点検でも一部しか見えていない。設計自体が古い。1970年代にできたものは、色々な機器に設計上の問題がある。
物が古くなると劣化するという科学的技術的問題を欠いた政策判断はありえない。後藤資料

5.新増設・リプレイス、新型炉の問題

松久保肇(原子力資料情報室事務局長、CCNE委員)
 政府は「次世代革新炉の開発・建設」に取り組むという。革新というからには何かしら新しい技術が導入されているんだろうと思うが、国際的には通用しない区分だ。The Generation IV International Forumでは以下のように分類。
  日本で「革新炉」は第3世代、第3世代+に入る。既に海外で導入され、日本では導入されていないか一部導入されているものに新しい名前をつけただけ。
 また「高速炉、高温ガス炉、核融合」などがGXの目標・戦略にあり、確かにこれは「第4世代」だが、「第1世代」にも「ナトリウム冷却高速炉」「高温ガス炉」とある。うまくいかず、商用炉のメインストリームとなったのはPWRやBWR。今後も、高速炉、高温ガス炉がメインストリームになると想像するのは難しい。

出典:松久保資料

 一方で、いわゆる「革新軽水炉」(第3世代)で頻発しているのはコスト超過と工期遅延。コストは3倍、工期は4年が16年になることがある。

出典:松久保資料

日本でも海外でも原発の発電コストも上がり、日本では「事業環境整備」と称して費用を国民に転嫁する議論が行われている。政府は「GXを実現する官・民の投資」として10年間で原子力に約1兆円投じようとしている。)松久保資料

Part2に続く

タイトル写真【「原子力市民委員会」ウェブサイト】

http://www.ccnejapan.com/?p=13342%E3%80%80


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