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東京電力福島第一原発 既設の何かの「溶断」で無許可の煙上がる

「福一での汚染水放出工事の様子について最新の映像を公開しました」というツイートを秋田放射能測定室「べぐれでねが」さんからいただいた。そのYouTube画像「汚染水放出工事の詳細等、福島第一原発のより詳細な映像について公開します。(2023.02撮影)」を早回しで見てみた。

モクモクと風にたなびく煙

すると、23分目あたり、モクモクと煙が立ち上がっている。

モクモクと煙が左右前後に揺れるのを見ながら、政府の廃炉・汚染水・処理水対策チーム会合や定例会見(どちらも開催場所は東京電力ホールディングス本社)で東京電力が使った「中長期ロードマップ進捗状況(2023年4月27日)」【資料3-1】「汚染水・処理水対策」で見かけた図を思い出して、煙が立ち上がっている場所を確認。

秋田放射能測定室「べぐれでねが」YouTube画像「汚染水放出工事の詳細等、福島第一原発のより詳細な映像について公開します。(2023.02撮影)」の筆者スクリーンショットに
オレンジ色枠加筆(画面下が北、上が南)
出典:「中長期ロードマップ進捗状況(2023年4月27日)
【資料3-1】汚染水・処理水対策で85枚目/127枚 (図の左が北、右が南)

世界初の作業周辺で無許可の煙

火のないところに煙は立たない。東京電力に電話取材を試みた。担当者につながり、動画を開いて見てもらった。
「23分目あたりからです。炎なのか何か、光るところもあります。」
「煙の右下ですね」
「そうです。何かを燃やしているように見えるのですが、これは何をやっているのでしょうか?特定原子力施設の実施計画原子炉等規制法第64条の3で許可を得ている行為ですか?
実施計画の許可を得ている行為ではありませんが、これはウチ(東電)が提供している画像ではありませんので、何か修正されていないかどうかもわかりません」

呆れてムッとする気持ちをコンマ1秒で抑えて、「秋田放射能測定室は、民間で非定期的に許可を取って空撮をされています。修正するメリットは何もありません。確認していただけませんか」

特定原子力施設」とは、原子炉等規制法第64条の2で事故を起こし、指定された原子炉だ。原子力規制委員会は「直ちに、措置を講ずべき事項及び期限を示して、当該特定原子力施設に関する保安又は特定核燃料物質の防護のための措置を実施するための計画(以下「実施計画」という。)の提出を求めるものとする」と規定されている。もちろん福島第一原発は、現在、日本で唯一この「特定原子力施設」の指定を受けている。

東京電力は、実施計画を策定して、原子力規制委員会委員会の許可を得て、それを実施するのだ。煙をモクモクさせている行為が何であれ、実施計画にはない行為であることはわかった。

原子炉等規制法第64条の3で許可を得ていない煙
出典:秋田放射能測定室「べぐれでねが」2023.02撮影画像23分10秒目
筆者スクリーンショット(画面下が北、上が南)

たかが煙だが、周辺で作業している人が無用な被ばくをしていないか。ここは汚染水の海洋放出を目指して作業を行なっている場所だ。世界で初めて原発事故で汚染されたトリチウム+基準以下だと称する他の核種を海洋放出する場所だ。現在、汚染水タンクにはまだ7割が基準以上に留まっている。基準の2万倍近い汚染水もあり、小さな油断や見過ごしが、大きな事故になり得る現場だ。

不用意な行為が許される労働環境を見過ごせば、それは常態化して悪化していく。最低でも30年40年続けていく作業であり、実際、それは政府と東電の願望に過ぎず、もっと続く。被ばく労働を許してはならない。その緊張感を無くしたら終わりの現場だ。

原子力規制庁にダブルチェック

東電担当者が、画像の修正を疑うようでは、この問合せがどのような扱いを受けるかわからない。そこで、原子力規制庁の広報部にもメールと電話で、動画URLをつけて、問い合わせをしておくことにした。

溶断の許可は不要?

午後、取材へ出かける途中、歩いていると携帯が鳴った。東電からだった。「歩きながらなのでメモが取れず、不明点は後で確認させてもらいますが、どうぞ」というと、担当者は回答を話し始めた。

担当者:お尋ねの「何をやっていたのか」についてですが、既設のものを溶断していて、激しく煙が出たようです。
Q:ヨウダン?溶かして、断じるですか?
担当者:はい。それから「特定原子力施設に係る実施計画」についてですが、溶断は、発電所で許可が必要とされるものではなく、自主ルールで行っていたものです。
Q:自主ルール?下請けですよね。防護策は?全面マスク?
担当者:何次請か不明ですが、溶断前に線量の確認はしている。作業開始前と後には、元請が確認を行なっている。火気対策もやっています。

東電は元請に任せきりか

溶断という言葉に驚き、何を溶断したのかを尋ね忘れた。溶断は普通の発電所では許可は要らないにしても、「特定原子力施設」では無許可にやっていいことではないのではないか。誰が不用意な被ばく労働から労働者を守るのか。巨大な被ばく労働現場において、東電が元請けに任せっきりではないのか。

GX関連法案は動いている。西村経済産業大臣は今日10時からの参議院本会議で「原子力については、安全性の確保を大前提とした上で、その活用を進める」とGX脱炭素電源法案の趣旨説明をおこなっている(参議院本会議(動画)を聞きながらこれを書いている)。煙一つ、何次請の下請け会社が出しているのかも、当事者である東電はわからない中で、事故を忘れたかのように。焦る。

【タイトル画像】

秋田放射能測定室「べぐれでねが」YouTube画像「汚染水放出工事の詳細等、福島第一原発のより詳細な映像について公開します。(2023.02撮影)」の筆者スクリーンショット


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