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原発運転「原則40年」削除の撤回を!大臣と規制委員長に8万筆

2月9日、原発の運転期間延長に反対する約8万筆の署名が経産大臣と原子力規制委員長宛てに提出された。

「原則40年」削除撤回を求める署名

署名は、「原発運転期間「原則40年」規定の削除方針の撤回を求めます」として2月8日までに集まった7万5214筆。

主催団体(国際環境NGO FoE Japan、原子力規制を監視する市民の会、原子力資料情報室、原発事故被害者団体連絡会)の一つ、FoE Japanの満田夏花事務局長が、老朽原発を動かすことは大きな危険を伴う、交換できない部品も多い、電力会社の点検できる範囲も限定的で、休止期間でも部品の劣化は進むなどの理由を読み上げ(以下)、提出された。

「原発運転期間「原則40年」規定の削除方針の撤回を求めます」を読み上げる満田さん

経済産業大臣 西村 康稔 様
原子力規制委員会 委員長 山中伸介 様

原発運転期間「原則40年」規定の削除方針の撤回を求めます

経済産業省は、GX(グリーントランスフォーメーション)の一環として、原発の運転期間の延長を打ち出しました(注1)。それを受け、原子力規制委員会は、10月5日、原発運転期間を原則40年と定めた原子炉等規制法の規定を削除することを容認する意向を示しました。

私たちはこれに強く抗議し、方針の撤回を求めます。

福島第一原発事故の際、第一原発1号炉は運転開始40年の特別な検査に合格したばかりでした。

それでも事故は起きました。この悲惨な事故の教訓に基づき、2012年、与野党合意の上で、「原子炉等規制法」に運転期間を原則40年とし原子力規制委員会の審査を経て1回だけ20年延長できる旨の規定が盛り込まれました(注2)。

老朽原発を動かすことは極めて大きな危険を伴います。運転により原子炉が中性子にさらされることによる劣化に加え、運転休止中も時間の経過に伴い、配管やケーブル、ポンプ、弁など原発の各設備・部品が劣化します。交換できない部品も多く、電力会社の点検できる範囲も限定的です。

また設計が旧いことによる構造的な欠陥も深刻な事故を引き起こす原因となります(注3)。これらのリスクを踏まえれば、運転開始から休止期間も含めて原則40年を運転期間とする現行の規定をゆるめることは到底認められません。

老朽化に関する規制委の審査は電力会社の申請に基づくものであり、実態は、確認すべきデータを確認しなかったり、事業者に配慮して自ら定めた審査のルールを守らかったりなど、万全とは程遠いものです。

規制委の山中伸介委員長は、「原発の運転期間は利用政策であり、規制委が意見を述べるべきではない」としたが、果たしてそうでしょうか。原発の老朽化に関する審査にはおのずと技術的物理的な制約があり、運転期間に上限を設けることは規制の一部として極めて妥当な手段です。

原子炉等規制法を託された規制委はこの規定を設けた立法者意思を遵守する義務があります。利用政策を担当する経済産業省が削除を求めたからといって、それに従うことは、利用政策に規制政策が従属することになります。それは、規制と利用の分離によって、原子力規制を担保するとした、原子力規制委員会設置法の趣旨にも反します。

政府が原子炉等規制法から、原発運転期間の規定を削除することは、福島原発事故から得た教訓を蔑ろにし、国民を守るべき責務を放棄したものです。山中委員長は就任の際に、職員への訓辞で「『福島を決して忘れない』自分自身の心に誓って下さい」と述べたそうですが、そうであるのならば、規制機関として、原発運転期間の原則40年ルールを守り、むしろ厳格に運用すべきではないでしょうか。

私たちは、これ以上、老朽原発の運転期間制限をゆるめず、少なくとも現行の原発運転期間の「40年ルール」を厳格に運用するよう強く求めます。

以下、略

「原発運転期間「原則40年」規定の削除方針の撤回を求めます」全文より

署名提出が行われた衆議院第二議員会館会議室には、主催者の他、岩渕友議員、菅直人議員、山崎誠議員も同席。オンラインでは200名が参加した。福島からは「原発事故被害者団体連絡会」の武藤類子さんが、「原則40年は福島事故を教訓に盛り込まれた。福島事故は終わっていない」と避難者、自死者数を上げ、現在、全国10ヵ所で開催されている「GX基本方針の説明会は福島では開催されない。愚かな選択を止めていきたい」と発言した。

オンラインで発言する原発事故被害者団体連絡会の武藤さん

原子力規制委員会の一人が明確に反対し、結論がまだ得られない中(既報)、この7万5214筆の声は、果たして、西村康稔・経産大臣と山中伸介・原子力規制委員長には届くのか?

【タイトル写真】

「原発運転期間「原則40年」規定の削除方針の撤回を求めます」署名の提出(2023年2月9日筆者撮影)

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