電気料金は下がるが、原発のおかげではないこと
原発再稼働を見込む東京電力、東北電力、中国電力の3社の値下げ効果を検討すると、東京電力と東北電力で月122円、中国電力では月200円の効果に過ぎないとの試算が、原子力資料情報室の松久保肇事務局長によって明らかにされた。これは、一定の仮定を置いた試算だが、そこに触れる前に、結論として、電気料金は下がるが、国策であり原発のおかげではないことを記録しておく。
東電:柏崎刈羽原発6、7号機再稼働を前提に値上げ申請
2023年6月からの電気料金について、大手電力会社10社のうち7社が値上げを申請し、経産省が5月19日に認可した。そのうち、東京電力(以下、東電)の申請と許可の中身を見てみる。
東電は柏崎刈羽原発6、7号機が再稼働する想定で(これ自体、破廉恥な想定だが、それはここでは横へ置く)28%(36円/kWh→46円/kWh)の値上げを申請。
経産省:申請圧縮+再エネ賦課金+燃料費調整+激変緩和策で値下げ
経産省は東電の28%値上げ申請を圧縮して、14%の値上げにとどめて認可した。しかし、消費者が払う電気料金はそれで決まるわけではない。
経産省は、今回、”標準的な家庭の電気料金”に対し、再エネ賦課金(22年度3.45円/kWhから23年度1.4円/kWhへ)を820円減額する。また、燃料費調整として1180円減額、さらに激変緩和策として2800円を減額する。国策で合計4800円の減額となる。
つまり、東電の電力料金は14%値上げだが、国策で逆に19%値下げになる。
電気料金が月額14,444円だった家庭なら、11,722円に下がる。
再稼働あるなしに関わらず、他社も値下がり
結果として東電だけではない、原発再稼働のあるなしに関わらず、大手電力会社は、再エネ賦課金の減額+燃料費調整による減額(中部と関西と九州以外)+激変緩和策による減額で、各社とも電気料金は下がる。
松久保さんの仮定:単価で言えば0.47円/kWh値下げ
冒頭で上げた松久保さんの試算は、月260kWh(7644円)の電力を消費する家庭での料金を想定したもの。柏崎刈羽原発6、7号機を(稼働率80%で)再稼働させ場合と、させなかった場合の差額は0.47円/kWh(122円)にとどまる。(なお、経産省の“標準的な家庭の電気料金”は月14,444円、つまり松久保さん試算の約2倍を想定している。)
この試算は、昨日(2023年6月6日)、衆議院第一議員会館(およびオンラン)で開催された「国会エネルギー調査会(準備会)」(超党派議員と有識者による会合)で明らかにされたものだ。
いずれにせよ、原発が再稼働すれば安くなるとの印象操作が、西村経産大臣らによるGX関連法案審議の国会答弁などにおいても微妙な言い回しで行われていたが、必ずしもそうではないことを、経産省自身のデータが物語っている。
電気料金については、他にも書いておきたいことがあるが、今日はここまでにとどめる。
【タイトル画像】
経産省サイト「電気料金の改定について(2023年6月実施)」の標準的なご家庭における電気料金の試算結果 より
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