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非公開の記者レクでみえてきたこと:原発事故からの屋内退避と避難

2月28日の原子力規制委員長会見のあとで、非公開の記者レクが行われた。

中身は原子力災害時の屋内退避に関する論点(2024年2月14日原子力規制庁)と、【改定版】女川地域の緊急時対応(全体版)。その詳細説明かと思いきや、一部を5分程度で原子力規制庁新田放射線防護企画課長と内閣府原子力防災担当の専門官が説明。あとは記者からの2時間超の質問に答え続けた。

そこで感じたこと、見えてきた要点だけを、まずはメモしておく。


質疑応答から感じたこと

原子力規制委員会も規制庁職員も

  • 原子力災害対策指針(以後、指針)が破綻していると思っていない。

  • 指針に書いてあることを実行するのはあくまで自治体であると考えている。

  • 実効性ある避難計画ができないとしたら、指針が破綻しているのではなく、指針に書いてあることを実現できない自治体の責任だと考えている。

  • 今の避難計画は複合災害に対応できていないと能登半島地震を見て思ったのなら、原災指針の考え方(=まず自然災害から命を守った後で、放射線被ばくからも身を守る)に沿って機能するように自治体が考えろと思っている。

なぜそう感じたか

説明資料P136を使って聞いた。

女川地域の緊急事態対応その2 p136

Q:屋内退避も避難もできない場合、どうしろとこれは書いてあるのか。
内閣防災:まずは、屋内退避をしてくれという指示があるので、自宅か、近隣の指定避難所にいく、そこで避難する手段を整えていただく。
Q:それができない場合は?
内閣防災:自分がいる場所と避難先の安全を確認し、避難経路は通れるのかを確認し、避難の手段を確保する。
Q:避難先が安全か、避難経路が通れるか、能登で起きたように通信途絶したらどう確認できるか? 道路寸断、避難手段の車もダメな場合、どうするのか?
内閣防災:通信手段は多様化を進めているので使える通信手段を使う。広域避難の場合などは自治体のマッチング作業などで避難先を決める。それができない場合は、不測の事態なので実働組織が動く。
Q:珠洲市では、孤立地域に自衛隊ヘリが着陸する場所がないなどの問題も。
内閣防災:ヘリ以外にも装備はある。

こうした押し問答を行ったのは私だけではなかった。
やりとりを聞いていた記者からは、ついに「屋内退避ができない、道路が寸断、どうするんだとなった時に、『そういうものは自治体の責任であって我々の責任ではない』と言いきれないんですか」という質問が上がった。

これに内閣府防災の専門官からは言い切れるとも切れないともストレートな回答はなく、堂々巡りだった。

「法体系で説明すると、災害対策の下に原子力災害(原子力災害対策特別措置法)がある。自然災害は市町村町が避難に関する指示ができる。一方、特殊性がある原子力は、内閣総理大臣が自治体に指示をして避難をさせる。自宅が潰れているという指摘があれば、自治体が・・・、ダメなら実働部隊が・・・。」(内閣府防災)

緊急時対応も自治体の責任

この内閣府防災が担当する「緊急時対応」(避難計画)についても、国から「機能しないから作り直そう」と言い出すことはないことが見えてきた。

【改定版】女川地域の緊急時対応は、昨年12月26日に「第3回女川地域原子力防災協議会」で改定されたが、「これはこの後、原子力防災会議幹事会→原子力防災会議にあがっていくかいかないか?と尋ねると、これはこのままだという。根本的な改定ではなく、「地域原子力防災協議会」が改定しただけで終わるのだという。

だから、その後に起きた1月1日の能登半島地震を受けて、国側から、それをまた見直そうとは言わないし、見直したければ、自治体が判断して動けということだ。

以上のことから、私は次のように受け止めた。

「できもしないことでも原災指針に書いてしまえば、法律で定められた原子力規制委員会としての役割は終わり。餅を絵に描くだけ描いて、その餅を煮たり焼いたり、どうにでもして住民に食べさせるのは自治体の役割だ。いくら、その餅は絵に描いてあるから食えないと指摘されても、『いや、私たちは描きましたから』という回答しか返ってこないのだ。」

では自治体はNOと言えるのか

この場合、残された問いは、自治体がNOと言えるのかだ。そう考えて、記者レクのあとに内閣防災の専門官に聞いた。

「自治体は、これでは避難計画はできないと拒否することはできるのか? アメリカではニューヨーク州が避難訓練に出ることまでを拒否して稼働できなかった原発がある」と例に挙げると、「新設したけど、稼働できなかった原発ですね?」と、避難計画ができなかったために稼働できなかった原発の存在は知っていた。そして、彼の回答は次のようなものだった。

「燃料がある限りは、志賀でも東海村でも、事故のリスクはあるので、住民を守りたいなら避難計画は作るべきものだ」

それはまるで脅しですね、と問うと、脅しですねと何故か答えた。

電力自由化の時代に、原子力発電という一発電手段を民間事業者が遂行するために、なぜ、自治体が、国に脅されながら避難計画を立てなければならないのか、そんな感想を持った。

なお、この記者レクは非公開で行うとのことだったので、念のために「配信したいので検討してください」と事前に原子力規制庁広報担当に依頼したが、断られた。しかし、2時間にもわたって貴重な時間を割いてくれたこの質疑は、やはり公開で行うべきだったと思う。

【タイトル画像】

女川地域の緊急事態対応(概要版)P5

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