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(1分読み)ユニバーサルデザイン(UD)の教科書74 高信頼性組織

高信頼性組織

高信頼性組織(High Reliability Organizations、HROs)の発祥国は、アメリカ合衆国です。

HROsの概念は、主に1980年代から1990年代にかけてアメリカで研究され、発展しました。

原子力産業や航空産業、医療分野などで、非常に高い安全基準が求められる状況で、HROsの原則が適用され、安全性と信頼性の確保が重要視されました。

アメリカを発祥国とするHROsの概念は、その後、世界中のさまざまな産業や組織に影響を与え、安全性と信頼性の向上を目指す取り組みが広まっています。

1. 原子力産業:

•高信頼性組織の概念は、原子力産業において初めて顕著になりました。原子力発電所では、非常に高い安全基準が求められ、システムの安定性と信頼性が重要視されました。原子力産業がHROsの基盤となる分野の一つとして挙げられます。

2. 航空産業:

•航空産業もまた、高い信頼性を求められる分野であり、航空機の安全性には非常に厳格な基準が適用されています。航空産業は、安全性を確保するためのプロセスや文化を発展させる上での重要な役割を果たしています。

3. 医療分野:

•医療分野においても、HROsの概念が応用されるようになりました。手術室や医療施設では、患者の安全が最優先であり、リスクを最小限に抑えるための手法や文化が整備されています。

4. 軍事:

•軍事は、高度なリスクを伴う状況での活動を行う組織であり、安全性と信頼性が非常に重要です。HROsの原則は、軍事組織にも適用され、戦術や作戦の計画・実行において安全性を確保するための手法が取り入れられています。

5. 他の産業への拡大:

•高信頼性組織の原則は、上記の分野に限らず、他の産業や組織にも拡大しています。例えば、製造業、エネルギー産業、情報技術などでもHROsの考え方が応用されています。


◎HROsの特徴

HROsの特徴的な要素の一つは、意識的な安全意識を、徹底的に持ち続けることです。これは組織全体に浸透し、

「個々のメンバーや部門が、自発的に安全に対する責任を感じる文化」

を形成します。また、

「情報共有やコミュニケーションが重要」

であり、
適切な情報が迅速に伝達されることで、問題が早期に発見され、解決される仕組みが整います。

さらに、HROsは絶えず状況を監視し、予期せぬリスクに対応するための機敏さを持っています。リーダーシップ層は、リスクの特定、評価、管理に熟練し、情報を的確に判断する能力を持っています。また、訓練やシミュレーションを通じて、実際の状況に備えることが重視されます。

HROsの成功の鍵は、

「絶えず学び続け、改善を重ねる姿勢」

にあります。失敗や問題を恐れず、それらを機会として捉えることで、システム全体の強化につなげる文化が根付いていきます。

高信頼性組織は危険な状況に直面する組織でありながら、安全性を確保し続けるための
・文化
・戦略
・リーダーシップ
が備わっている組織。絶えず学び、改善を続ける姿勢が持続的な成功に繋がります。


◎ 当事者研究と高信頼性組織の関係

東京大学先端科学技術研究センター熊谷晋一郎准教授が進めている「当事者研究」と「高信頼性組織」の関係について考察します。

当事者研究は、熊谷晋一郎准教授の専門領域です。
当事者研究とは、障害や病気を持った本人が、仲間の力を借りながら、症状や日常生活上の苦労など、自らの困りごとについて研究するユニークな実践である。当事者研究は統合失調症を持つ人々の間で行われ始め、徐々に、依存症や脳性まひ、発達障害など、様々な困りごとを持つ人々の間に広まりました。
※参考
https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/research/people/staff-kumagaya_shinichiro.html

当事者研究は、様々な困りごとを抱えた当事者が集まり、研究の主体となって行う手法です。

この研究手法は、当事者自身の極限状態の体験談の共有や、当事者同士によるそれらの共感を通じ、困りごとの捉え方の再構築や社会参加の機会づくりに向けた、自己回復のための気づきを得ることを目的としています。

一方、高信頼性組織(HROs)は、非常に危険な環境で活動する組織であり、安全性を確保し続けるための文化や戦略を持つ組織です。

関連する点としては、当事者研究においても、当事者の声や体験を尊重し、それを基にした改善や支援の道筋づくりが重要です。このようなアプローチは、高信頼性組織の文化にも共通する要素があります。例えば、HROsでは、従業員が積極的に、安全に対する責任を感じる文化が根付いていますが、当事者研究でも、当事者が自らの体験を通じた語りを行うことが奨励されています。

したがって、当事者研究と高信頼性組織の共通する側面は、
・当事者の語りや体験を尊重し
・それを活用して安全性や支援の向上を図る
姿勢にあると言えます。


◎ユニバーサルデザインとの関係性

高信頼性組織、当事者研究、ユニバーサルデザインのいずれも、
・当事者の多様な体験・思考・行動・ニーズを尊重し
・改善を重ねる姿勢
が共通しており、
当事者による様々気づきが
人・組織・社会に良い影響をもたらすものと考えられます。

例えば心理的安全性が、企業活動の様々な場面で、その重要性が何度も認識されている今、これらの考えは、ますます重要になってくると、私はとても強く思います。

Think Universality.

Think Difference.


m.m

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