ユニバーサルデザインの強化書173 自立と依存の真実
自立と依存の真実
はじめに
現代社会では「自立」という概念が広く称賛されています。しかし、完全な独立は現実的に不可能です。
実際の自立は、単に他者からの依存を断ち切ることではなく、多様な依存先を持つことによって成立します。
つまり、自立と依存は対立概念ではないというのが結論です。
本コラムでは、自立と依存の関係を再定義し、インディペンデントからマルチディペンデントへのシフトがいかにして自立を促進するかを、人・モノ・しくみの具体例を交えて探ります。
1. 自立と依存の再定義
従来の自立の定義は、何かに依存しないことを強調しますが、実際にはそれは不可能です。現代の自立は、多様な依存先を持つことで成り立つものです。この依存先は、人だけでなく、モノやしくみにも及びます。
2. 人への依存
人との関係は、自立において非常に重要です。多様な人々とのネットワークは、支え合いや情報交換を可能にします。
事例
家族や友人や恋人:
家族や友人や恋人は、感情的なサポートや実際的な助けを提供してくれることがあります。例えば、緊急時に頼れる人がいることは大きな安心感をもたらします。
職場の同僚:
同僚との協力関係は、仕事の効率を高め、ストレスを軽減します。互いにスキルや知識を共有することで、自己成長にも繋がる期待が持てます。
3. モノへの依存
モノへの依存は、技術やインフラを活用することで、自立を支えます。一方で、現代ではモノに依存し過ぎることによる課題も生じがちです。
事例
テクノロジー:
スマートフォンやコンピューターは、情報へのアクセスやコミュニケーションを容易にし、独立した生活をサポートします。例えば、スケジュール管理アプリを使うことで、自分の予定を効率的に管理できます。
例えば視覚障害者の場合でも、スマートフォンの音声読み上げを活用することで、QOL(生活の質)が劇的に向上しています。
また、聴覚障害者も、スマートフォンの音声→テキスト変換により、情報理解やコミュニケーションが容易になっています。
インフラ:
公共交通機関やインターネットは、移動や情報収集を可能にし、自立した生活を支えます。これにより、遠距離でも仕事を続けることができるなどの柔軟性が生まれます。
4. しくみへの依存
社会のしくみや制度への依存も、自立を支える重要な要素です。
事例
社会保障制度:
健康保険や年金制度は、個人が経済的なリスクに対処する手段を提供します。これにより、病気や老後の不安を軽減し、安心して生活を送ることができます。
障害者や介護福祉の制度もこれに当てはまります。
教育システム:
学校や研修プログラムは、知識やスキルの習得を支援し、自立した生活を営むための基盤を築きます。例えば、キャリアチェンジを考えている人が職業訓練を受けることで、新たなスキルを習得し、再び独立した生活を送ることが可能になります。
また、発達障害・知的障害者には、タブレットデバイス・デジタル図書の活用により、多様な発達・学習進度に応じた学びのしくみを得ることができます。
5. マルチディペンデントの実践
多様な依存先を持つことで、より強固な自立が実現します。以下のステップは、マルチディペンデントな生活を実現するためのガイドラインです。
1. ネットワークの拡充:
異なる背景やスキルを持つ人々との関係を築くことで、多様な視点と支援を得ることができます。
2. テクノロジーの活用:
最新の技術を積極的に取り入れることで、情報収集やコミュニケーションを効率化し、自立をサポートします。
3. 制度の活用:
社会の提供する制度やサービスを最大限に活用することで、経済的・精神的な安定を確保します。
結論
自立とは、孤立することではなく、多様な依存先を持つことで成り立ちます。
インディペンデントからマルチディペンデントへのシフトは、人・モノ・しくみの各要素に依存し、それぞれを効果的・複線的に活用することで、真の自立を実現します。
多種多様な依存先を持つことで、柔軟性と安定性を兼ね備えた社会生活を築くことができ、新たな社会参加を可能にします。
追伸
私たちが朝起きて〜夜眠るまで、いかに多くの人・モノ・しくみに依存しているのか、今一度数えてみましょう。
その依存先の多さに、きっと驚くことでしょう。
さらに、依存できない人が居ることも、想像してみましょう。
例えば、駅の階段=モノへの依存ですが、車椅子ユーザーは、階段は利用できず、依存先として成立しません。
我々が普段あたりまえのように使っている階段が、もし存在せず、急な坂道であれば、移動に困難をもたらすことは明らかです、
特に、いわゆる障害者は、依存先が少なくなりがちです。
社会では、多様な人々が、自立した生活を送り、社会参加ができるよう、多様な依存先を増やすことが重要です。
様々な障害は、自分に宿る(医学モデル)のではなく、社会に宿る(社会モデル)。
この考え方を発展させることが、マルチディペンデントの意義の本質と言えるでしょう。
Think Universality.Think Difference.
m.m
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?