猫は策略家

昔飼っていた猫が子供を産んだ。
あの時は4匹ぐらい産んだだろうか。

最初はうちで飼っていたが、さすがに五匹は大変だなということになり、親の友達などに何匹かもらってもらう事になった。
その中で、シュウという名前のチャトラがいた。シュウは僕にとても懐いていて、もらわれてしまうのは悲しいなと思っていたが、譲り先の方がとてもいい人たちだったので、僕も子供ながらに渋々受け入れた。

もらわれてしばらく経ったある日、シュウの元気がないと飼い主さんから連絡が来た。
とても元気な猫だったし、食べ物を毛嫌いするようなこともないヤツだった。

「住むとこが変わって緊張してるのかな」

と思った。
僕は好きだった缶詰を教えて、好きだったおもちゃを送ってあげることにした。

それから何日か経ち、また飼い主さんから連絡が来た。
食欲もなく、病院に連れて行っても原因がわからないと言う。
僕は親に頼んでシュウに会いに行った。
シュウはうちにいた頃より痩せていて、僕の顔を見てか弱く鳴いていた。

「急に兄弟や親と離れて、寂しいのかもしれない」

と、シュウを一度うちに戻すことになった。
僕は「やった!」と思うと共に、「シュウがこのまま死んでしまったらどうしよう」という思いでいっぱいになった。

シュウをうちに連れて帰り、ひとまずエサをあげることにした。

バクバク食べるではないか。
元気な猫より元気ではないか。
兄弟たちと走り回り、僕にもじゃれついて来る。
あのか弱い鳴き声は何だったのだろうか。

多分元気がなかったのは演技で、うちに帰るための策略だったのだろう。
それからシュウは、兄弟の中で一番長生きした。

人間も猫も、したたかなヤツが生き延びるのだ。

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