Pekora-Almond Effect ザコアドベントカレンダー14

はじめに

 前回は、兎田ぺこら氏の挨拶にまつわる謎を紹介した。まとめると「ぺこらは『どうも』と言っているつもりなのに視聴者には『アーモンド』と聞こえる」という現象だ。今回はこの問題を考えるためにこの現象を整理していこうと思う。
 ちなみに、クリップされた動画だが、やはり本人は「どうも」と言っているつもりらしい。

https://youtu.be/hJqXdn1oFVo

Pekora-Almond Effect

  この問題を扱う上で、まず、「ぺこらは『どうも』と言っているつもりなのに視聴者には『アーモンド』と聞こえる」現象に名前をつけたい。何度も何度もこのセンテンスが文章に登場してはまどろっこしくなってしまうからだ。そこで筆者はとりあえず、当該現象を"Pekora-Almond Effect"(ぺこら・アーモンド効果)と名づけることにした。もしこの記事が学会誌に取り上げられても大丈夫なように、である。嘘である。ただのファンの聞き間違いに学術的な名称をつける馬鹿らしさを演出したかったからだ。
 さて、このPekora-Almond Effectだが、前回軽く触れたが「アーモンド」と聞こえる視聴者もいれば、当然だが「どうも」と聞こえる視聴者もいる。すなわち、人それぞれ、なのである。だからこそ、音声の特徴を論じて「これは実際には『どうも』という音声である」あるいは「これは実際には『アーモンド』という音声である」と結論づけることには意味がない。すなわち、これからの考察では以下の要件を満たす必要がある。

①人によって聞こえ方が異なることの説明
②なぜ「アーモンド」という語なのか
③聞き間違いが起こる要因として、あるいは聞き間違えない要因として何が考えられるか

 以降の分析ではこれらを踏まえた分析に移る。

先行研究 音声的特徴を捉えて

 筆者の分析に先立って、「はやこじ」氏がこの問題について考察した動画があったので、それを紹介する。

https://youtu.be/AYutOc3PaYM

 内容をまとめると、「どうもどうも(domo/domo)」を「ど、うもど、うも(d/omod/omo)」と区切ることで、真ん中の「omodo」が「アーモンド」として聞こえるのではないか、ということである。すなわち、音声の区切れを組み替えて読めば「アーモンド」と聞こえる部分がある、という考察だ。音声的な特徴からPekora-Almond Effectを分析していて、筆者の知るところでは公に出ているもっとも分析的な解説である。しかし、批判点もある。
 第一に、なぜ区切れの移動が起きるのか、ということである。句切れの移動が起きる理由が不明なので、「omodo」部分が「アーモンド」に聞こえるという結論は恣意的に思える。
 第二に、いくら「omodo」部分が「アーモンド」に聞こえるからといって、ぺこーらが意識して発音した「アーモンド」とは別の音声のはずである。どうして視聴者は実際には「アーモンド」ではない発音を「アーモンド」として認識するのだろうか。
 第三に、人によって「どうも」か「アーモンド」かで分かれることの説明がされていないという点である。区切れが起きると仮定して、その場合は「omodo」部分が「アーモンド」として聞こえたのち修正が起こり「どうも」と聞こえる視聴者がいるのか、あるいは視聴者によっては区切れが起きずに「domo」として認識されるのだろうか。
 検討に移る前に、この指摘はこの動画の投稿者である「はやこじ」氏を非難する意図がないことを先に述べておく。これからの筆者の考察はこの分析、すなわち音声的特徴を捉えながらPekora-Almond Effectを考察していく手法を受け継ぐ。つまり、この動画がなければそもそもの筆者の考察はありえない。ここでした指摘は、これから筆者が先駆者の考えをアップデートしてく上での改善できそうだと気付いた点だとして捉えて欲しい。むしろ、視聴者の疑問を解消しようという試みを早くから行なった「はやこじ」氏は大いに評価されるべきである。

仮説1

 ここまでをまとめると、以下のことがわかる
・Pekora-Almond Effectは個人差がある
・ぺこら自身は「アーモンド」と発声しているつもりである
・実際の音声の中には「アーモンド」と聞こえる部分がある
・そして、「アーモンド」と聞こえる人はその部分を「アーモンド」として認識している
 以上をまとめて、筆者は以下の仮説を想定する。
「Pekora-Almond Effectは、ぺこーらの『どうも』という音声が、なんらかの個人差のある要因によって視聴者の脳内で修正され音声的に『アーモンド』に近い部分をもとに、『どうも』を『アーモンド』と読み替えることで起こる」
 ここで筆者が重要であると考える点は、音声の側面脳内の側面を切り分けて考えることである。言葉の認識は「音声そのものを取り入れる」のではなく「実際の音声をもとに脳内で形作られる」と考えるのである。おそらく、Pekora-Almond Effectが起きるのは、ぺこーらの発話の音声的な特徴がトリガーとなっている。しかし、音声が要因であれば、その音声の特徴は客観的な事実なので、100%の人が「アーモンド」と聞くはずである。だが現実はそうではない。筆者の仮説ではPekora-Almond Effectのトリガーは音声上の特徴ではあるものの、視聴者の中にあるなんらかのパラメータXによってトリガーに反応する群とそうでない群にわけられるのではないかと考えている。すなわち、これが「人それぞれ」を生み出す鍵なのだ。そして、「アーモンド」と解釈する群は、トリガーから誘発されたある脳内の処理αによって「どうも」を「アーモンド」に変換しているのではないだろうか。
 つまり、Pekora-Almond Effectは2段階の工程を経て起こる。1段階目で「アーモンド」と聞く人と「どうも」と聞く人で分かれ、第2段階において「アーモンド」の人に対する特殊な脳内の処理が行われることで、Pekora-Almond Effectが完了するのである。

おわりに

 今回は、先行研究をもとに仮説を立てた。次回からは、Pekora-Almond Effectの音声的特徴を捉えていくための下準備の回となる。なかなか本題に入れないが、ご容赦いただきたい。そして、全然VTuberの推し語りじゃねえじゃんと思う人もいるかもしれない。安心して欲しい、最初からそんなことは言ってない。


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