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会社の沿革を共有する効果とは

1月号①

1月号②

中途採用者。即戦力として活躍できる人と、既存メンバーが教育に労力を割くことになってしまう人の差はどうして生まれてしまうのでしょうか。

前回はペルソナの設定の前に、御社が採用したい人物にはどんな職務経験を持っていてほしいのか、スキルを抽象化して考察することの重要性を述べました。

さて今回は、中途採用者が即戦力として活躍してもらう上で大切な帰属意識について考えていきます。

帰属意識とは、「特定の集団に所属しているという意識」のことを指します。帰属意識が高ければ高いほど組織の問題を自分ごととして捉え、会社に対して愛着を持つことにつながっていきます。

ときには帰属意識のことをエンゲージメントと表現したりもしますよね。では、なぜ今さら帰属意識について考えることが大切なのでしょうか。

マネジメントが難しい時代になっていく

終身雇用の限界が叫ばれ、これからは「個」の時代になると言われて久しいです。

個人の市場価値、つまり「会社としての看板がなくなったら、あなたにはどんな価値があるのか」という問いや漠然とした不安を抱えながらも、それでも組織に貢献することを求められていきます。

マネジャーにとって、マネジメントが難しい時代になりました。

社員はともすれば目の前の仕事に対して「今後の自分のキャリア形成に役立つかどうか」という視点で、ひとつひとつの仕事を損得勘定で値踏みするという行動基準を持ちかねません。

地方移住でリモートワーク、出社とリモートのハイブリッド型、完全出社の原点回帰など、働き方も様々になり、社員の価値観も多種多様になっていきます。
 
うちの会社?この会社?

既存の社員ですらそれだけの多様な選択肢と価値観と、そして情報に触れながら組織に貢献していくことを求められる中、中途採用者はどのような想いで働いていくのでしょうか。

あなたの会社では、中途採用者が「うちの会社」と言い始めるまで、どのくらいの期間を必要としていますか。もしかしたら、入社して何か月間も経つのに、まだ「この会社」と一歩そとから意見を述べている社員もいるかもしれません。

では、中途採用者の帰属意識を高めて、「うちの会社」といち早く発信してもらえるようになるには何をしたら良いのでしょうか。

会社の沿革を共有する

私がお勧めしているのは、中途採用者の入社時に会社の沿革を詳細まで共有する、ということです。沿革といっても、パンフレットなどに記載されている年表についてただ読み合わせをすることを推奨しているわけではありません。

入社時の説明として会社の危機や転機について共有していただきたいのです。なぜなら、会社が掲げる経営理念やミッション、ビジョンには、会社を経営してきた中でのこれまでの経験が必ず裏打ちされているからです。

会社の危機や転機において、どんな経営判断がなされ、何を大事にしてきたことで「今」があるのか、ぜひ経営陣の想いを共有してください。

どんなことを共有するのか

危機や転機といっても、これまで必死に駆け抜けてきた経営陣にはイメージが湧きづらいかもしれません。そのため、共有したほうが良い事例を次に列記していきます。

・なぜ、創業したのか
・新規事業を立ち上げた経緯
・経営理念を定めたときの背景
・ミッションに込めた想い
・今の取引先とはどのようにして関係を築いてきたのか
・同業他社とはどのように切磋琢磨してきたのか

それぞれ簡単に補足していきます。

1)なぜ、創業したのか

自分が入社した会社がなぜ、どのような想いで創業されたのか、中途採用者はHPやパンフレットに書かれた簡易的な内容しか知りません。

そこで経営陣の口から、社会のどんな課題をクリアしたくて創業したのか共有することで、中途採用者であっても会社の事業を自分ごととして捉えられる社員が現れます。

2)新規事業を立ち上げた経緯

1)で創業時の経緯を共有された後、次に知りたいのは新規事業を立ち上げた経緯です。会社によっては一見すると、創業時の事業とは相乗効果が得られるのか不透明な新規事業を手掛けていることも少なくありません。

もちろんシナジー効果が期待できる事業である場合もありますよね。いずれにしても、なぜその新規事業を立ち上げようと考えたのか、背景を共有してください。

そうすることで、中途採用者の中にはそれまでの自分の経験の中から、会社に貢献できる新規事業を立案できる社員も現れます。

3)経営理念、ミッションに込めた想い

経営理念を定めたときの背景やミッションに込めた想いは、中途採用者が入社してしばらくはその重要性を訴えられる機会に触れることはあっても、なぜ、その言葉にまとめられたのか背景を知る機会はなかなか訪れません。

ただし、経営理念やミッションは、社員の行動基準や判断基準に大きな影響を及ぼす大事な指針になります。

中途採用者が即戦力となってもらうためには、様子を見る期間をなるべく縮小し、主体的に行動できる積極性を発揮してもらう必要がありますよね。

自信を持って行動や判断をするためには、会社が大事にする価値観を深く理解しておくことが肝要です。そのためにも経営理念やミッションに込めた想いは時間をとって共有をしてください。

4)今の取引先とはどのようにして関係を築いてきたのか

中途採用者にはそれぞれ、様々な取引先とのつながりを持った人材も入社してきます。

そのため会社がこれからも大事にしていきたい取引先と、今より高品質でコスト削減につながる企業であれば代替可能なのかどうかその判断基準を共有しておくことで、中途採用者がそれまで培った人脈を発揮してくれるタイミングが早まります。

5)同業他社とはどのように切磋琢磨してきたのか

中途採用者には異業界、異業種からの転職組もいます。そこで業界の説明をする会社や、配属された部署でOJTに教育を任せっきりにする会社も多いです。

ただ一番腹落ちしやすいのは経営陣自らが同業他社とどう差別化を図ろうと経営戦略を練り、実行してきたのか、そしてこれからどんな打ち手を考えているのかビジョンを共有することです。

そのビジョンの実現に向けて、自分はどう会社に貢献していけばいいのか、中途採用者であっても具体的に想像してもらえるきっかけになるからです。

これらの1)~5)について、入社日に経営陣が自ら共有することで、中途採用者が「うちの会社」と呼ぶまでの期間が早まります。

会社も社員もお互い様子見などはせず、会社の沿革を共有することで、中途採用者が具体的な貢献を果たしてくれるまでの期間が必ず早まります。

これまで簡単な入社手続きしかしていなかった会社は、ぜひ試してみてください。

【経歴】
立教大学を卒業後、学校法人三幸学園に入職。8年間教員として従事。3,000人をまとめるプロジェクトリーダーを経験。9年目からは専門学校の責任者としてトップマネジメントに従事。携わった学校全ての粗利向上、人材定着、退学率の低下を達成。直近の保育士幼稚園教諭系専門学校では2019年度の入学者177名に対し、2021年度は237名。退学率は着任前の2017年度9.6%から2020年度は2.4%まで低減。それらの経験を活かして現在は転職し、経営企画部として経営コンサルティング、グループ3社の新卒採用に従事。また、個人事業として専門学校経営のコンサルティング・企業の人材教育・中間管理職の育成を担う。経営から採用、人材教育まで事業領域は多岐に渡る。著書:『あなたに代わって中堅社員を優秀なリーダーにする本』

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教育参謀 本間 正道
Email: playbook.consultant@gmail.com
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