落語「一眼国」
(ネタバレあり)
江戸時代には珍しいものを見世物にする商売があり、そのようなことを生業にしている人を「香具師(やし)」と呼んでいたそうです。
ある香具師が全国を巡礼して歩いている六部(ろくぶ)に何か珍しいものがないかを問うと、ある所で一つ眼の子供を見たという話をする。その香具師は早速その場所へ行ってみる。そして、一つ眼の子供を見つけ、捕まえて一目散に帰ろうとする。その子供の悲鳴を聞きつけた近隣の百姓たちが駆けつけ、逆に香具師が捕まってしまう。奉行所へ突き出され、奉行から「面を上げよ」を言われて周りを見ると皆一つ眼。驚いたのは香具師だけではなかった。奉行も驚き、「これは珍しい。眼が二つある。調べは後回し。早く見世物に出せ。」
落語には荒唐無稽な噺がいくつかありますが、この「一眼国(いちがんこく)」もその一つ。
何も難しいことを考えずに、ただ笑っていれば良いのですが、それができないのが私の性分。
見世物の中にはインチキなものも多かったようですが、今では笑えないようなものもあったようです。
最近はこの噺を聴いていないので、そのあたりをどう描写しているのか分かりませんが、要するに障がい者を見世物にしていた時代があったのです。
この「一眼国」という噺のように、皆と違うと「珍しい」「変わっている」とされる。
見世物にこそされませんが、このような感情は今でもあるのではないでしょうか。
障がいを「個性」と呼ぶべきかどうかは意見が別れるところですが、お互いがその違いや個性を認め合い、思いやり、尊重し合う。
そういう気持ちを忘れずにいたいと思います。