蝶結び
以前、勤務していた福祉作業所でのこと。
ある利用者さんの「蝶結び」の練習のお手伝いをしました。
紐を結ぶときの「蝶結び」です。
その方は知的障がいがあり、車椅子利用者でもあります。
手に変形があり、自由もききません。
電動車いすをジョイスティックで操作して移動します。
その方にとって、蝶結びはいろいろな意味での訓練になります。
指先を動かすことはもちろん、どこにどう紐を通したらよいかを考え、工夫すること、等など。
また、蝶結びができるようになることで、その方の仕事の幅を広げることに繋がります。
しかし、なかなかできません。
まぁるくした紐の中に紐の先を通す。
あと一息のところでまぁるくした紐が解けてしまう。
或いは、なかなかその丸の中に紐を通すことができない。
それでも頑張り続けます。
私は、思わず手を出しそうになる気持ちを抑えながら、「そこそこ、そこに紐を通して!」などと声をかけながら横に付いていました。
そして、約2時間の悪戦苦闘の末、ようやく初めて蝶結びができました。
ご本人の嬉しそうな顔を見て、つい涙が出そうになってしまいました。
その後も何度か失敗はしましたが、だんだん失敗する回数が減り、最後にはほぼ確実にできるようになりました。
この成功の理由は何といってもご本人のやる気でした。
2時間もの間、なんとかやり遂げようとした精神力。
それが一番の理由であり、
ご本人にとっても「やればできる」という自信につながったことでしょう。