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線引き

わたしには妹が二人いる。
二人とも協力隊に行っていたというとびっくりされることが多いけれど、わたしから見ると二人とも普通の女子だと思う。
なんなら、わたしよりも二人の妹の方が寂しがり屋で泣き虫だったように思うぐらいだ。
真ん中の妹は5年ほど前から山奥に住んでいる。山奥と言っても店のある場所まで車で一時間弱なんだけれど、そこで古民家を借りて夫婦で住んでいる。
その妹が猟友会に入ったとSNSで知った。そういえば1か月ほど前に、罠をしかける試験があるとかなんとか言っていて、合格したんだというのも聞いたけれど、あ、そうなんだとしか思っていなかった。
鹿やイノシシ、アナグマが捕れた食べたというのはよく聞いていたし、食べるために捕るんだから罠の仕掛け方なんかは生きていくのに必要なんだろうなと考えていた。
猟友会に入ったきっかけは知らないけれど、入るとき、おじさんたちに言われたらしい。
「あんたみたいに命に敏感な人は入らないほうがいいんじゃないか」
姉であるわたしから見てだけれど、妹は弱いものに優しい。
前は罠にかかった小さな鹿を飼っていたこともあったし、おたまじゃくしのためにわざわざ水を張って網をかけたりする。
命に敏感な人、とはどんな人なんだろう。
小さな虫や動物を簡単には殺せない人、ということだろうか。
イノシシや鹿を罠にかけて捌き、食したり売ったりする人は命に鈍感な人たちなんだろうか。

死ぬべきもの、生かすべきもの。
おそらくそこに明確な線引きはないのだと思う。地球規模で考えると、わたしたち人間もおそらくその線の境を行ったりきたりしているのだ。
今度、お姉ちゃんも一緒に解体しよ、と妹からメッセージがきた。
わたしはためらわずに、是非と返事した。
わたしも妹もたぶん、同じ矛盾を抱えている。
抱えていきたいのだ、と思う。

#エッセイ #命 #妹

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