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隣の庭から

壁を隔てた向こう側の家の庭から、植物が伸びてくることがある。
「ごめんねー、届かへんから切れへんのよ」
申し訳なさそうに隣のおばちゃんが声をかけてくる。
「全然、大丈夫です。こっちで切りますし」
「そう?」
あまり詳しくはないので、植物の名前がわからない。ツル系のやつは特に。
「これはウルシの仲間やし」
おばちゃんの声にちょっと身構える。ウルシといえば、手がかぶれたりするので触るなと言われてきたから。
まぁでも庭に植えるくらいだから大丈夫なのだろう。
こちら側に伸びてきたやつは、切って水に差しておくと根っこを生やすやつもいる。やっぱりツル系はタフなのだなと思う。
そういえばライラックも植えていると言ってた。
庭があるの、いいなぁと思う。うちはプランターばかりでそれも場所によってはすぐに枯れてしまうこともある。
それでも、植えっぱなしのムスカリは毎年花をつけてくれるし、玉すだれはいつ咲くのか予測がつかないけれど、気が付いたら年に数回は咲いてくれている。去年植えた水仙も芽が出ていた。
「球根ばっかりやな」
心の中で苦笑する。球根は植えっぱなしでいいから楽なのだ。今年こそはゴーヤくらい植えようと思うけれど、できるかどうか。
おばあちゃんの畑を思い出す。実ることは豊かだけれど、手入れは大変なのだ。
耕し、日よけをしたり、雨よけをしたり、間引きをしたりする。
それでも実らないものもある。
今の時代には気の遠くなるような工程なのかもしれない。
何かに似ていると思ったら、文章の推敲だと気付いた。

どんな気持ちで畑をやってたのかな、おばあちゃんは。
亡くなってから見つけた日記には、畑のことばかり書かれていたのを思い出した。 
わからなくても、種をまくしかない。
まかなければ芽は出ないのだから。

#エッセイ #庭 #畑

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