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後腐れない相手に毒吐きたい─膝枕ナビコ「ナビ主さんは無味無臭です」の巻

このnoteで公開している作品は、2021年5月31日から朗読と二次創作のリレー(通称「膝枕リレー」)が続いている短編小説「膝枕」の派生作品で、外伝「膝枕ナビコ」シリーズの新作です。

「桜井ういよ」あらため「黒井ういよ」

「膝枕リレー2(knee)周年」のアイコンをノリノリで作っている膝番号17桜井ういよさん。

いつもはおいしいものだったり楽しいお仕事現場だったり、「桜井ういよ」の名前の通り、春めいたゴキゲンなツイートをしているのだが、先日のツイートはちょっと違った。

仕事帰りに酔っ払いに遭遇して、楽しい気分を台無しにされ、ご立腹。

「あの人、明日、イボ痔と切れ痔になったらええねーん!」

毒を吐いて、桜井ういよが黒井ういよになっていた。

新キャラ、「黒井ういよ」誕生‼︎

以前、AI生成の宣材画像で膝枕ナビコシリーズにネタを提供してもらい、「アー写にダメ出しよろしいですか?」の巻を書いたことがあった。

毒を吐く黒井ういよ先輩、ナビコ新作のネタにいただきたい。

膝フェスが始まった5月28日、新作アイコンを送ってくれたういよちゃんに「書いていい?」と聞いたところ、「書いてもらえたら浄化されます!」と喜んでくれたので、書いてみた。

「膝枕リレー2(knee)周年」膝フェス記念、蔵出し第6作として公開。ナビ主はナビ搭載膝枕ナビコにお預けを食らい続けて「1年2か月と222日目」というknee(2)尽くし日付設定に。

膝開きは、黒(桜)井ういよさんご本人にお願いします。膝開き後のclubhouse朗読はご自由にどうぞ。

今井雅子作「膝枕」外伝 膝枕ナビコ「ナビ主さんは無味無臭です」の巻

N「ナビ搭載膝枕ナビコにお預けを食らい続けて1年2か月と222日目の休日の朝。独り身で恋人もなく打ち込める趣味もないナビ主は、その日の予定をナビコに聞かれた」

ナビコ「ナビ主さんは、今日、お出かけしますか?」
ナビ主「いつも通り予定はとくにないよけど、ナビコちゃんが予定を聞いてくれるなんてうれしいな。天気もいいし、どっか出かけちゃう?」
ナビコ「いえ、ナビコは出かけません。これからお客様が来ます」
ナビ主「お客様って?」
ナビコ「桜井ういよ先輩です」
ナビ主「ういよ先輩がうちに? 聞いてないけど」
ナビコ「ナビコに連絡がありました。折り入って相談したいことがあるそうです」
ナビ主「ナビコちゃん、いつの間にういよ先輩とそんな仲良くなってんの? ていうか、いつの間にか『桜ういろう』じゃなくて『桜井ういよ』って呼んでるし」
ナビコ「『桜ういろう』は和菓子です。名古屋のお土産です」
ナビ主「ドヤ顔で訂正してるけど、ナビコちゃんがそう呼んでたんだよ? 相当しつこく『桜ういろう』って」
ナビコ「ナビ主さんは、どうされますか?」
ナビ主「どうされるって?」
ナビコ「これから桜井ういよ先輩が来ますが、ナビ主さんはお出かけしますか?」
ナビ主「え? ういよ先輩が来たら、俺、追い出されちゃうの? 何そのトコロテン方式?」
ナビコ「ナビ主さんは、別にいても構わない、とういよ先輩は言っています」
ナビ主「いても構わないって。ナビコちゃん、ここ、誰の家かわかってる?」
ナビコ「ここはナビ主さんのおうちですが、ういよ先輩はナビコに用があります」
ナビ主「俺には用はないって? そんなこと言われたら意地でも出かけたくない」
ナビコ「別にいてくれても構いませんよ」
ナビ主「だからー、ナビコちゃんがそれ言うのおかしいでしょ。ここ俺のうちだからね」
ナビコ「ひどいです。ナビコには帰る家などないと言うのですね」
ナビ主「そうは言ってないけど、俺がいるかどうかは俺に決めさせて。うちじゃなくて、外でういよ先輩と会えばいいんじゃないの?」
ナビコ「人目につかないところで話したいそうです」
ナビ主「俺はヒトとしてカウントされてないわけ?」
ナビコ「ナビ主さんは無味無臭ですから」
ナビ主「無味無臭って何?」
ナビコ「いても邪魔にならないという意味です」
ナビ主「もしかして、無味無臭じゃなくて人畜無害ってこと?」
ナビコ「そうとも言いますね。ナビ主さんは人ナビ無害です」
ナビ主「人ナビ無害ねー。新語作っちゃってるし」
ナビコ「でも、会話におもしろみがない、パンチがない、という意味では、ナビ主さんは無味無臭です」
ナビ主「わかったわかった。もう無味無臭でいいです」

ピンポーン。

ナビ主「あ、ういよ先輩来たんじゃない?」
ういよ「(入って来て)お邪魔しまーす」
ナビコ「桜井ういよ先輩こんにちは」
ナビ主「先輩こんにちは」
ういよ「あ、いたんだ」
ナビ主「いますよ」
ナビコ「ナビ主さんもいますけど、気にしないでください」
ういよ「もちろん」
ナビ主「ちょっとは気にしてくださいよ」
ナビコ「ナビコに折り入って相談したいことって、なんですか?」
ういよ「昨日、仕事帰りに電車で隣の席に座ったオジサンが酔っ払ってて。もたれかかってきたり、わざとかどうかわかんないけど、お尻触ってきたりして、最悪だったの!」
ナビ主「それってわざとじゃないんですか?」
ういよ「(スルーして)でも、手の甲だったから、当たってるだけかもしれないかなって。だけど、しつこくて」
ナビ主「それ絶対わざとです!」
ういよ「(スルーして)それで毒を吐きたくてたまらないんだけど、黒井ういよになったところを人に見られたくなくて。ほら、一応、こういうお仕事だし。ナビコちゃんなら後腐れないかなって」
ナビ主「俺も一応いますけど。俺にはどう思われてもいいってことですよね? なんか複雑です」
ういよ「ナビコちゃん、黒井ういよになって毒吐いてもいい?」
ナビ主「スルーされた」
ナビコ「後腐れのないナビコ、聞きます。あなたのスッキリをナビゲート、ナビコです。さあ、黒井ういよ先輩、思いきり毒を吐いてください」
ういよ「はい。黒井ういよ、行きます」
ナビ主「あのー、俺のこと見えてます?」
ういよ「私を触りまくったあの酔っ払い、許せない! あんなやつ、便秘になって一生トイレから出て来れなったらええねーん!」
ナビコ「気が済みましたか?」
ういよ「まだ全然スッキリしないです」
ナビコ「便秘ってスッキリしないですよね」
ナビ主「(ブツブツ)そっちのスッキリじゃないんじゃないかなー」
ナビコ「あなたのスッキリをナビゲート、ナビコです。くしゃみと鼻血としゃっくりが止まらない、というのはどうですか?」
ナビ主「(ブツブツ)出してスッキリってこと?」
ういよ「そっちのほうがいいかも。私を触りまくったあの酔っ払い、くしゃみと鼻血としゃっくりが止まらなくなったらええねーん!」
ナビコ「スッキリしましたか?」
ういよ「うーん。なんか、イキってる小学生みたいで、まだスッキリしないです」
ナビコ「イキってる小学生みたいで、失礼しました。もっと大人っぽく懲らしめてやりましょう。月を見たら吠えたくなるというのはどうですか?」
ナビ主「(ブツブツ)オオカミ?」
ういよ「うーん。だったら、オレンジのものを見たら、『ミックスじゅーちゅ』って言っちゃう罰ゲームはどうですか」
ナビコ「オレンジのものを見たら、『ミックスじゅーちゅ』と言っちゃう罰ゲーム、ですか?」
ナビ主「(ブツブツ)意味不明」
ういよ「『ミックスじゅーちゅ、くだちゃい』がいいです。うん。そっちのほうが恥ずかしい」
ナビ主「(ブツブツ)そっちのほうが小学生ぽいのでは?」
ナビコ「他にどんな呪いをかけますか?」
ナビ主「(ブツブツ)いつの間にか、呪いになってるし」
ういよ「歩くときは、ずっとスキップになってて、立ち止まるときはヒンズースクワットになっちゃうとか」
ナビ主「(ブツブツ)なんでヒンズースクワット?」
ナビコ「いいですね。他にどんな呪いをかけますか?」
ナビ主「それくらいで、いいんじゃないですか?」
ナビコ「ナビ主さんは酔っ払いの味方ですか?」
ナビ主「味方っていうか……」
ナビコ「もしかして、ういよ先輩を困らせた酔っ払いって、ナビ主さんですか?」
ナビ主「え?」
ういよ「そうなの? 最低!」
ナビ主「ちょ、ちょ、ちょ、なんでそうなるの? 俺だったらわかりますよね?」
ナビコ「ナビコ、ショックです」
ナビ主「違うって。昨日、ずっとうちでナビコちゃんと一緒にいたよね?」
ナビコ「そうだったでしょうか。なにせナビ主さんは無味無臭なので」
ナビ主「ナビコちゃーん」
ナビコ「お酒はほどほどにしてください」
ナビ主「俺じゃないって! 濡れ衣着せるのやめて!」
ナビコ「ボラギノールを服用しますか?」
ナビ主「そんなこと言ってない!」
ナビコ「便秘が長引いて痔になりましたか?」
ナビ主「それ、ういよ先輩が言ってたお仕置き。俺じゃないし」
ういよ「いい呪い、思いつきました。あの酔っ払いがこれから飲むお酒が全部、青汁の味になりますように」
ナビ主「ういよ先輩、ずっと考えてたんですか?」
ナビコ「お酒が青汁の味になる。いいですね。でも、まだ黒さが足りませんね」
ういよ「もっと黒くしたいです」
ナビコ「醤油を混ぜるのはどうですか?」
ナビ主「(ブツブツ)黒ってそういうこと?」
ナビコ「他に黒い食品を調べてみました。オイスターソース、黒酢、黒ニンニク。黒胡麻。イカ墨。ピータン。海苔」
ういよ「全部混ぜちゃいましょう。あの酔っ払いがこれから飲むお酒が全部、青汁と醤油とオイスターソースと黒酢と黒ニンニクと黒胡麻とイカ墨とピータンと海苔を混ぜた世にも奇妙な味になりますように」
ナビ主「なんか寿限無みたいになってますけど」
ういよ「(スルーして)今の、全部まとめて毒吐きたいです」
ナビコ「黒井ういよ先輩、どうぞ」
ういよ「黒井ういよ、行きます! 私のこと触りまくったあの酔っ払いが、くしゃみと鼻血としゃっくりが止まらなくなって、オレンジのものを見たら『ミックスじゅーちゅ、くだちゃい』と言ってしまって、歩くときは、ずっとスキップになって、立ち止まるときはヒンズースクワットになって、これから飲むお酒が全部、青汁と醤油とオイスターソースと黒酢と黒ニンニクと黒胡麻とイカ墨とピータンと海苔を混ぜた世にも奇妙な味になりますように」
ナビ主「先輩のファンが聞いたらドン引きですよ」
ナビコ「さすがナレーターだけあって、立て板に水、いや、立て板に毒ですね」
ういよ「ナビコちゃんうまいこと言っちゃって」
ナビコ「よ、真っ黒井ういよ先輩、スッキリしましたか?」
ういよ「だいぶスッキリしました。ういよの中にある真っ黒成分を13%ぐらい出せた気がします」
ナビ主「え、まだ13パーセント⁉︎」
ナビコ「まだまだ行きましょう、ドス黒井ういよ先輩」
ういよ「はい! ドス黒井ういよ、まだまだ行きます!」
ナビ主「あのー、これ以上聞くと、俺の中の桜井ういよ先輩が崩壊してしまいそうなので、ちょっと外の空気吸ってきます」
ナビコ「あれ? ナビ主さん、まだいたんですか?」
ういよ「え? いたんだ?」
ナビ主「すさまじいな、俺の無味無臭感」

N「ナナメ上行くナビ搭載膝枕ナビコ。果たしてナビ主がナビコに膝枕される日は来るのか? その前に、黒井ういよ先輩はいつになったら帰るのか?」

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