春が二階から落ちてきた。
伊坂幸太郎の作品「重力ピエロ」の冒頭と末尾には、同じフレーズの言葉が引用されている。「春が二階から落ちてきた」と言う言葉で私が今まで読んできた小説には無かった手法です。
この小説の語り手である「私」は、DNA診断やDNAバンクなど遺伝子関係の仕事をしている会社員です。親がどんな気持ちで「私」と弟の名前をSpringにしたのかわかりませんが「私」は泉水(イズミ)で弟は春と言います。
美しい母親似の春は、強烈なストーカーに付きまとわれる程の魅力的な男の子ですが、生い立ちが悲惨でした。
母親が強姦されて産まれたのが春でしたが、血の繋がりの無い父親は春を愛情いっぱいに育ててくれました。「私」は予想もしなかった家族の秘密に混乱しながらも父親に尋ねた。
「父さんは春の事どう思っているわけ?」
父は即答した。
「春は俺の子だよ、俺の次男でお前の弟だ」その父の言葉は「私」を救った。
しかし、春自身は自分を産んだ母親や強姦魔の少年そして産んでくれと言った父親を恨まなかったでしょうか?
「私」が大学生だった頃、真夜中に帰宅するとゴミ集積所に高校生の弟がゴミ袋をめちゃくちゃに蹴り回していたところを見てしまった。
春は春なりに鬱屈した気持ちを何かにぶつけてしまわずには居られなかったのでしょう。
小説の中盤は、公共の場所に落書きされた近くに放火事件が相次ぎ「私」と春、そして癌で闘病中の父親まで巻き込んで犯人探しを始めた。
最初は、こじつけのような気がしたが「私」は放火された会社やビルの頭文字を合わせてこれは遺伝子が関係しているのではないかと考えた。
結局、この辺で専門的な話が長々と続くので2回程読むのを投げ出しました。
後半から目まぐるしく事が運び、父親と整形までしてまだ春をストーカーしていた女性が犯人を嗅ぎつけてしまい、父は「私」に「お前は手を引け」と言うのです。
最後に、実の父親(強姦魔の少年)と相対視した春が長年鬱屈した気持ちを爆発させた。
ーーーーー父親を殺すのか、おまえ。
ーーーーー俺の父親は今、病院で癌と戦っているあの人だよ。悪いけど。
ーーーーーお前を育てただけだろうが?本当の父親はおれだよ。