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本屋さんって、何を目指すのかな……?

私は以前、企業理念を作るためのアイデア出しの会議に、ファシリテーターとして参加させていただきました。「うーん、理念、理念……」と唸るクライアントに、私は「きっと、会社の理想像を表す言葉は、その人の人生の中にあるのだろうな」感じ、生い立ちを丹念に聞いていくことで、キーワードをいくつかクライアントの中から言語化することができました。

今、考えると、企業理念のことは本を読んだ程度でしか知識がなく、よくやれたなと思います。しかし、最近になって元気な企業は企業理念がしっかりしており、従業員にまで浸透しているという話をあちこちで聞くようになり、気になって、自分でも色々調べてみたり、詳しい人に話を聞いたりしてみました。

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さらに、お薦めしていただいた色々な本を読んでみて、クライアントの生い立ちから言葉を紡いだのは、あながち間違いではなかったなぁ、と思いました。さらに、時間をかけて作った経営理念や行動指針が従業員にまで浸透するには、ボトムアップ的な組織づくりが必要なんだと感じました。

「企業理念・行動指針を作ったから、みなさん守りなさい」ではなんの効果も期待できず、むしろ疲弊感や反感を引き出してしまうのかなぁ、と思いました。

さて、出版業界にはあまりいい話は聞こえてきません。書店に関してはその数を減らし続けており、様々な問題を抱えています。ですが、比較的元気な書店や、評判のいい書店はあります。

それらの書店は、その手法や経営戦略などが話題になりますが、それをそのまま他の書店がやってもうまくいくとは限りません。もちろんそれらも大事なのですが、何か真似のできない、根本的なものがあると感じます。

それらは、ひょっとすると企業理念や、それらを元にしたビジョン、行動指針(クレド)などがしっかり作られ、それが従業員に至るまで浸透しているからかもしれません。

いくつか例をあげてみましょう。

まずは大垣書店さんです。

大垣書店さんは、京都を中心に店舗展開されていますが、着実に店舗を増やし続けています。元気な書店チェーンの1つと言えるでしょう。

その大垣書店さんの企業理念はこちらです。
企業理念はこちらです。

一番初めに読者だけでなく、出版社や販売会社も顧客であると位置付け、感謝報恩の精神を持つことを掲げています。

私は、以前出版のプロデュースをさせていただいたのですが、その本が発刊となり、書店さんに営業に行かせていただきました。その時、もちろん大垣書店さんも行かせてもらったのですが、どこのお店でもとても親切に対応していただき感激しました。

また、大垣書店さんでは毎年報告会が開かれているのですが、そこには出版社の営業担当者さんもたくさん招かれます。そこでは各店舗の店長のブースが設けられ、営業担当者さんが自由に商談できるようになっているのです。出版営業担当者さんは、何が一番ほしいのか?それは書店さんからの注文です。そんな営業担当者さんのニーズに応えるところも、企業理念に即した行動だと思います。

次に明屋書店さんです。

四国・中国地方を中心に展開している明屋書店さんは「従業員を大切にする」を掲げて、本当にそれを実行して経営を立て直し、「週刊ダイヤモンド」地方元気企業ランキングで1位になりました。当時の社長小島俊一氏はコミュニケーション→モチベーション→イノーべションというステップを掲げ、社員一人一人に興味を持ってコミュニケーションをとるところからスタートされたそうです。

明屋書店さんの企業理念はこちらです。

https://www.haruya.co.jp/company/ideology

3番目に三洋堂書店さんです。

http://ir.sanyodo.co.jp/corporate/corporateprofile/concept/

すごくしっかりとした企業理念や行動指針を作っておられる印象があります。1991年当時に副社長をしておられた加藤宏氏の言葉はとても重みがあります。「書店の空白地帯をなくす」を地道にされておられます。三洋堂書店さんはアルバイトの方が入社されると、いきなりレジに入れられるようなことはなく、まずこの企業理念などの教育を受けられるそうです。

最後に岡山の啓文社さんです。企業理念がこちらです。

「人」というところに明確な方針があるところが素敵です。私は、啓文社さんには行ったことがないのですが、聞いた話によると社員間の情報共有などに工夫があるようです。どんな工夫なのか、もう少し調べてみたいです。

他にも、経営理念を掲げている書店はたくさんあります。しかし、形骸化していて、そんなものがあることにすら気が付いていない従業員も多いのではないでしょうか。

書店のとしてのビジョンや行動を明確にできていない、あっても従業員が共有できていない。こういうところは、個々が好き勝手に「自分が正しい」を主張して、まとまりがなくってしまうような気がします。

本屋が本屋として何を目指し、どこへ行くのか……。それが理念だと思います。自分なりにもこれから考えていきたいテーマです。そして、そのビジョンに向かってみなで進んでいく方法も、私は持っているような気がします。



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