イグアナの娘
先日ある友達とランチしながら子育てや親子関係の話題になり、その友達が、私がkindle本に母との関係を書いているところを読んで「イグアナの娘を思い出した」と言いました。
「イグアナの娘」という菅野美穂主演のテレビドラマがあっていたそうで（１９９６年放送）、友達がそのあらすじを話してくれたところ面白そうだったので検索してみました。
すると原作は少女漫画家の萩尾望都さんでした。萩尾望都さんは少女漫画家としては珍しい秀逸なSF作品をたくさん描いています。若い頃に一時期はまって読んでいたことがありますが、この作品は読んだことがありませんでした。
幸せな結婚、そして待望の第一子の女児誕生。けれど母親にだけは生まれて来た赤ちゃんの顔がイグアナに見えてしまうのです。どうしても長女・リカを愛することができず子育てに葛藤する母親に、第二子のマコが誕生します。今度の赤ちゃんはどこからどう見ても愛らしい普通の女の子。母親は次女のマコにだけ一心に愛情を注ぎ、長女である主人公のリカは常に妹と比較され、母親に疎まれながら育ちます。
「私は醜いイグアナの娘」。本当は美貌にも才能にも恵まれているリカなのですが、母の目に映る醜いリカの姿は、そのままリカ本人の自己概念となっていきます。
「イグアナ」とは母親自身の内側にある、最も受け入れ難い自分自身の一部である、母親自身のシャドーです。
母親は、自分が赦すことのできない、自分から切り離してしまったシャドーを長女リカに投影して見ています。
この、我が子やパートナー、または身近な人間関係にある人に、自分が切り離したシャドーを見るということは日常茶飯事に起きています。
ほぼすべての他者に対するネガティブな反応やジャッジは、自分が赦し受け入れることのできない自分の一部を、相手に投影して見るからこそ起こります。
奇跡のコースでは、他者への攻撃（裁き）は必ず自分自身への攻撃であると教えます。
きのうは夏野菜を植え付けたあと、支柱立てを母にも手伝ってもらおうと、母と一緒に畑に出掛けました。
なんとか畑が形になったところで「他の人が見たら、あの畑はあんな植え方をしてると笑われるかもしれんよ。」と母が、いかにも母らしい(笑)一言を言い放ちました。
この「人様が見たら」の呪いをこれまでもずっとかけられて来たなーと、内心苦笑しながら「人と比べてたら何をしても楽しくないよ。」とさらっと返しました。
母は以前「あんたみたいに人の目を気にせんで生きられる人間が羨ましいよ」と、皮肉とため息交じりに言ったことがあります。
本当はこんな風に生きたかったのに叶わなかった。それを平然と体現している人間を目の前にした時、心に抵抗が走るのは人の性（さが）として致し方ないのかもしれません。
自分が自分に禁じて抑圧した何かを、抑圧することなく表現している他者に対して、咄嗟にジャッジは起こるものです。
もし子どもやパートナー、身近な人が「自分の主義に反した」行動を取るのが腹立たしいと感じるならば、その人はあなた自身が自分に禁じた本当の欲求を、目に見える形で知らせてくれているのかもしれません。
不愉快な他者というものは、「あなたが切り離してしまった自分の一部に気づいて、それを受け入れてね」というメッセージをいつも携えて、目の前に現れてくれているのかもしれませんね。
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