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コナン考察①RUM編のRUM判明以降の展開について:RUMと若狭留美の二人の目的

1 RUMの正体が判明したことにより深まる謎


コミック第100巻・第1066話でRUM編の主題である黒の組織のNo.2RUMの正体が遂に判明した。
ただ、下記の⑴~⑶にもある通り、同話以降1102話現在まで、RUM編ではいまだにコナンと赤井はRUMの正体を掴むに至っていない
読者視点においても、第1066話当時には盛り上がりを見せたものの第1102話現在に至りその余韻は完全に冷めており、これを事後的に評価すると第85巻から今まで長期に渡って引っ張ってきたラムの正体をピーク前に呆気なくネタバレされたような感覚ともいえる。
そこで、RUM編の今後を考察するにあたり、下記⑴~⑶のRUMの正体判明が物語の中でどのような出来事として位置付けられるのか再解釈することにした。
⑴ 1066話では、その前話にてコナン・赤井・優作陣営とRUM陣営との間で、黒の組織の追跡を受けるFBI捜査官キャメルの生死をかけた頭脳戦が展開されたことをうけて、その後半戦の応酬が描かれた。
⑵ この一戦は最終的にコナンと赤井が現場に急行し、キャメルの死を偽装したことによって追跡を頓挫させることに成功し、コナン陣営に軍配が上がった。
⑶ そして、戦いが終わり現場から両陣営が撤退した後に場面が変わり、黒の組織の車の中で、つまりコナンと赤井がそれを視認できない形で、読者だけがRUMの正体を知ることとなった。
⑷ 上述の2話に渡る頭脳戦は、RUMがコナン陣営に対して終始リードしており、RUMの実力の一端が見られた応酬であったことから、いずれ来るRUMとの直接対決の前哨戦として物語の中に位置づけられる。

以上がRUMの正体判明の内実である。
同話を読んだ際は上記⑷にもある通り、いずれ来るRUMとの直接対決の前哨戦であると考えて、これからの展開に期待していたが、上述の通りこの一件から組織編が大きく展開されることはなかった。
そうすると、優作の言う「組織の大きな動き」に見事に対応できたのに、これによってRUMに関して得られた情報は「RUMはふざけた名前を名乗っている」というウォッカの発言で、(これをコナンが頭の中でバーボンの言う「RUMはせっかち」というヒントと組み合わせることで既にRUMの正体に辿りついている可能性は高いものの)毛利一家の身の安全などを考慮するとコナン陣営は受け身でRUMが自分から姿を現すのを待つしかなくなり、RUM調査は頓挫したとすらいえる
むしろ、RUMの正体への手がかりであったはずの羽田浩司殺害事件の真相解明より先行していたため、主題が別の物と入れ替わるような、物語の転換点を象徴する出来事だったと解釈してよいのではないだろうか?
これによって取り残された羽田浩司殺害事件の真相と真相に密接に関わり合っているであろう事件の当事者たちの秘密にまつわる伏線が今後の展開にどのようにかかわってくるのかという問題が生じて、羽田浩司殺害事件の謎がより存在感を増したといえる。

2 サンデー1月号1103話ティザー映像

そんな中、2022年11月22日にYouTube公式チャンネル週刊少年サンデーTVにて、サンデー1月号(11月30日)掲載のコナン1103話のティザー映像「The Untold Tale」が公開された。
このティザー映像の「there is the untold tale」及び「-17y」という描写によって、RUM編の主題が、RUMの正体から第1話以前の17年前に起こった羽田浩司殺害事件へとシフトしたことが明らかとなった。

3 本考察の目的

ティザー映像にて羽田浩司殺害事件がクローズアップされたことに加えて、1103話から始まる新シリーズが7話構成であること及びそのあらすじが公式発表されている。
新シリーズのあらすじでは、羽田が渡米先で羽田浩司殺害事件に巻き込まれるきっかけの一つであるチェス大会にコナンが参加することがわかっている。
このことから新シリーズでコナンが羽田浩司殺害事件の謎に迫ることは明らかであるが、それでもなお羽田浩司殺害事件の真相解明とその後に待ち構えているRUM編のクライマックスには大きな距離がある。

今までの黒の組織編がクライマックスに入る直前には、例えばベルモット編ではベルモットが灰原からコナンを引き離すためにコナンをハロウィンパーティに招待したことや、バーボン編では毛利探偵事務所のパソコンに送信された幼児化が解除された灰原の姿が写った映像がバーボンに確認されたことにより黒の組織に灰原がミステリートレインを利用することを察知されたことなど、コナン側と組織が対峙するようなきっかけが発生していたが、羽田浩司殺害事件の真相解明又はそのヒントを得てコナンがRUMへの手がかりを得るだけではコナンがRUMと対峙するきっかけが生まれない。
加えて、RUM編においては、FBIのコナン側だけではなく、黒田・降谷が率いる公安やメアリー世良が率いるMI6などの勢力が組織との直接対決に備えており、これと同時期にRUM候補がコナン側に接触し始めている意図も明かされずに取り残されている。

これらの伏線が示唆することは、コナンがRUMと対峙することが引き金となり始まるRUMが率いる組織vsコナン・FBI・公安・MI6の一大決戦によってクライマックスを迎えるという流れであると思う。

では、結局のところコナンはどのようなきっかけによってRUMと対峙することになるのか、今までの黒の組織編におけるコナン側の各人物及びRUMを主とする黒の組織の動向と目的を以下のRUM編概要で振り返りながら考察していく。

本考察は複数の記事に分け、本記事を①番目とすることにした。本記事ではRUM編概要における物語の振り返りと少しの考察にとどめて、本格的な考察は考察②から展開していくこととする。

RUM編概要①RUM編序章:毛利探偵事務所が黒の組織の標的となった経緯

シェリー編でコナンは米花町にて遭遇した黒の組織のジンの愛車に発信器と盗聴器を仕掛けて追跡するがジンにそれを看破され、元組織のシェリーこと灰原が杯戸町近辺に潜伏していること及びその協力者の存在ジンベルモットに察知されてしまう。
⑵ 次のベルモット編では幼児化のことを知るベルモットが灰原とその協力者であるコナンの正体を知っていたため阿笠邸とその隣にある工藤邸がベルモットの監視対象となった。
⑶ これに対し次のキール編ではコナンが黒の組織のキール宅に仕掛けた発信器と盗聴器が偶然キールのパンプスの靴底に付着し、キールのパンプスがジンの手に渡ったことで再びジンに看破された。
それらがシェリー編でコナンが仕掛けた発信器と盗聴器と同じものであったことから、ジンは最後にキールと接触した毛利小五郎が灰原の協力者であるとみて毛利小五郎及び毛利探偵事務所が組織の標的となってしまった。毛利探偵事務所に向かったジン率いる組織を待ち伏せしていたFBI捜査官・赤井秀一のおかげでジンの注意を毛利小五郎からFBIにそらすことができたが、この一件から毛利小五郎は組織に警戒されることとなった

RUM編概要②RUM編開幕

⑴ その後、コナンは黒の組織に潜入していたキールことCIA諜報員・水無玲奈の協力によって赤井秀一の死の偽装に成功する。
続くバーボン編では黒の組織・バーボンが赤井秀一の死を疑い、生死を確認すべく米花町でFBIに、シェリーに協力している疑いのあった毛利小五郎に接触し、さらに工藤邸毛利探偵事務所を調査し始めたが、ミステリートレイン編と緋色編でコナンは幼児化した灰原と沖矢昴として活動する赤井秀一の二人の秘密を守り抜き、これによりようやくキール編を発端とするジン・バーボンを主とする黒の組織の米花町での活動を頓挫させることに成功した。
公安として組織に潜入するバーボンを牽制したことにより沖矢昴による灰原の警護体制も盤石となり、工藤邸に対黒の組織の拠点が完成しつつあった
⑵ そんな中、コナンは赤井秀一のスマートフォンに届いたキールからの「RUM」という3文字のメッセージにより黒の組織のNo.2RUMが動き出したことを知り、RUM編が開幕した。
その序盤においてRUMの目的、活動場所に関する情報は皆無に等しく、唯一の手がかりはRUMの見た目で、灰原が組織内で聞いた噂によれば、その特徴は「片目が義眼」で、「老人」や「女のような男」、「大男」だった。
⑶ 上記の情報をきっかけに、元々繋がりのある者や新しく接点を持った周辺人物に対してRUMの特徴と一致する見た目に翻弄されたり疑心暗鬼になるコナンだったが、羽田秀吉が口にした羽田浩司という故人の棋士の名前がAPTX4869を服用し死亡した人物リストに載っていたことが判明し物語は進展する。
コナンと灰原、赤井の三人は、インターネット上で何者かによって繰り返し投稿されては削除される記事から羽田浩司が殺害された17年前の殺人事件の情報を入手する。
これをきっかけとしてコナンと赤井はRUMに急接近することとなる。

RUM編概要③17年前のアマンダ・羽田浩司殺害事件

1 黒の組織が関与した未解決事件


⑴同事件は、被害者である羽田浩司の名前が組織の管理するATPX4869に関するデータに同薬による死亡確認が表記されていたことから黒の組織がその殺害に関与したものであることが確定している。
⑵ところが、事件の被疑者とされている浅香という人物については謎が多く、事件当時生前のアマンダから"浅香"と呼ばれ資産家でありFBIやCIAに顔が利いていたアマンダのボディガードとして帯同していたこと以外には雇われた経緯も含めて身元不明であること、事件同日以来失踪していて消息不明であること、唯一の手がかりは事件現場に残されていた手鏡から欠けた文字をRUM ASACAと並び替えると浅香が黒の組織のNo.2のRUMであると読めることであるが、黒の組織の一員であった灰原は浅香という名前を組織内で聞いたことがなかった。
それらに加えて、同日に起こったアマンダ殺害事件の現場が何事もなかったかのように綺麗だったことに比べて、羽田殺害事件の現場は荒らされたまま放置されていて、灰原によるとそれは黒の組織の仕業とは考え難いことであった。
⑶ 続く堀田凱人殺害事件では、ジンが羽田浩司殺害事件のことを「ラムがぬかった仕事(ころし)」と表現したことにより、少なくともRUMが羽田浩司殺害事件に関与していたことが確定した。
また、生前の堀田凱人が入手した情報によれば、姿を消した浅香が羽田浩司殺害現場にあったものと同じ手鏡を持っていたところを目撃した人物がいたことから、浅香が目撃された時点では生存していること及び浅香が女性であることが確定した。
⑷ ところが事態は急転して、羽田浩司殺害事件を手がかりとしたRUM調査は思いがけない方向に展開する。
羽田浩司殺害現場に残されていた手鏡のアナグラムについて工藤優作と赤井秀一が話し合い、羽田が残したのはRUM ASACAという二つの単語ではなく、CARASUMAという一つの名前であるという結論に達した。

そのため、①浅香は犯人か②浅香は組織の人物か③浅香は生きているか④浅香=RUMか、以上の4点の真相がRUM編当初から現在まで続くテーマとなっている。
このうち、③については後述の①②④の真相へのアプローチ過程の前提となることから生きていることとする。

2 事件を知る登場人物のセリフから推察できること

コミック103巻時点では、①②③④全ての真相について手がかりが登場している。
①については、コミック第99巻の、生前の羽田が肌身離さず持っていた将棋の駒が事件現場の羽田の所持品の中で唯一紛失していたことから、将棋の駒を持っているのは犯人しかありえないとの羽田の遺族の主張が手がかりとなる。
拾った駒の特徴が羽田浩司の所持していたものと酷似していたことから上記の羽田の遺族の主張を想起した降谷は、その駒の持ち主のことを羽田浩司を殺害した殺人犯(=浅香)だと推測している。
この一連の流れで確認しておきたいことは、降谷(バーボン)は羽田殺害現場の手鏡のRUM ASACAというアナグラムを知らないという点である。
バーボンはRUMの正体を知っているにもかかわらず、浅香について殺人犯だったという認識しかないということは、そもそもバーボンは羽田浩司殺害事件について「ラムがぬかった」仕事(=RUMが関与している事件)だという事実を知らないということであり、そこから同人はRUMと浅香は別人であることを前提としていることが確定する。
もし浅香が羽田浩司にAPTX4869を飲ませて羽田を殺害したのであれば、APTX4869のデータに羽田浩司の名前がある以上は浅香が黒の組織の人物であったことになるが、例えその後浅香がRUMや組織を裏切ったとしても、羽田浩司殺害が「ラムがぬかった仕事」にはならないはずである。

考察②に続く。


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