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ワールド制作レコード write nest編

VRChatワールド『write nest』を作ったときに考えていたことを書きました。立て続けにVRChatワールドを2つ作ったのですが、どうにも出発点が近いようなのでそれぞれ記事を書いて同時公開としました。よかったらあわせて読んでみてください。

実際の技術は後日Qiitaに書こうと思います。

発端

QvPenでいっぱい書ける場所がほしかったのが始まりです。QvPenはいろいろなワールドに置いてあって、作者のureishiさんやワールド制作者の方々には本当に頭が下がります。
自分は考えごとをするときノートにいろいろ書くようにしています。言語化すると気持ちが落ち着いてそれまで見えていなかったことが出てきたりするので、たびたび行なっています。これは安全で落ち着けるところでないと実行は難しいです。
このワールドは実用性もですが、そういう場所があるという事実がほしくてVRでの再現を試みた側面が大きいです。心象風景的とも言えるでしょう。

また、会議室のような使われ方も想定しています。VRで手書きすることのメリットは他者とリアルタイム共有できること、多層的に書けることが大きいと思います。
先日実際に書きながら話す機会があり、実用に耐えうる造りになっていると感じられました。

名前と設計

ペンを広く使えるワールドという構想は2020年9月にはできていて、名前もそのとき既に決まっていました。機能が最初からはっきりしていたからですね。

writeはそのまま【書く】、nestは【入れ子】【巣】【隠れ家】という意味を込めています。
ロバート・マッカーター著『名建築は体験が9割』に書かれたnestという語の使い方が好きで自分でも使ってみました。
この本を最初に読んだのは2018年5月頃でした。建物の内部空間から得られる体験についての建築論の本で、空間をつくるということを考える発端になりました。

最初は太陽のさす薄暗い部屋を想定していて、9月に作りはじめたあと頓挫していました。おそらくこの頃の自分には時期が合わなかったのでしょう。
改めて着手したのは2020年12月です。名前先行→広さと静謐さがほしい→市川春子建築にしよう→ドームに切れ込みを入れる→二重にしよう(ネスト化) という流れで造形を考えました。
『名建築は体験が9割』に書かれたことの再現というよりは、そこから受けたインスピレーションが反映されています。

音楽について

造形はだいたい決まりましたがライティングなどは未定でした。このときフレンドのTDKRさんがワールド音楽の作曲の機会がほしいと話していたので、今回お願いすることになりました。この依頼の過程でとりまく環境を考えることができたので感謝しています。
ワールド音楽は『Contemplate』という名前です。作曲に関してたくさん注文してしまいましたが(入場音も後から追加依頼しました……)対応していただいてありがとうございました。
今のところこれらを聴くためにはVRChatのアカウントが必要ですが、ぜひ聴いてほしいです。

入場音が欲しかったのは、考えごとをしているとき人が来たら、なにか知らせがあると助かるからです。
TDKRさんからは、その人はなにかヒントを持っているかもしれない、そう思って作ったとお話を聞きました。

音楽を提供いただいたのに音量スライダーを設置することについては、よく考えたうえでの判断です。TDKRさんにも設置前にお話してあります。

目標

ワールドを作るうえで、以前(floating star)とは違った要素を盛り込みたいと考えていました。

・アセットを使う
-noribenQuestWaterShader
-QvPen
-BiroPen
・クレジット表記をする
・音量スライダーを作る

noribenQuestWaterShader
わたしのワールド原体験となったワールドが2つあります。CAP.さんの『Gray Square』とおめがさんの『Teapot garden』です。

https://vrchat.com/i/holder-turkeyomoto-27d98

https://vrchat.com/i/scarlett-ladyring-bda5e

noribenQuestWaterShaderは『Teapot garden』で知って使ってみたいと思っていました。
波の高さを維持しつつ床上に出てこないよう……ということで何度かモデリング側の調整をしました。

QvPen
字を書きやすくするためペンの大きさを80%、インクの太さを60%に縮小しています。Questでも動作確認済です。また消しゴムとボタンの色をワールドに合わせて変えています。

BiroPen
フレンドさんがQuestでも書けるホワイトボードがほしいと話していたのを聞いて後から追加してみました。使う人のことをよく考えたつくりになっていて、感動しながら導入しました。ペンのお尻の消しゴムでは一気に消すのが難しいので、改変して大きい消しゴムを増やしています。
BiroPenの改変経験はおおいに勉強になりました。のちのギミック作成にも活きています。

Hakobutaくん
フレンドのあいだでワールドに置くのが流行っていたので導入しました。全部で3匹います。

音量スライダー
割とかんたんに自作できると知らなかったのでboothを探したりしたのですが、以下の記事を見つけたので自作できるようになりました。

VRChatのワールドでuGUIを使う
https://qiita.com/gatosyocora/items/cc13445bfb18d55077c4

スライダーはデフォルトだとバランス等が恰好よくないので、線の細さとバックの色を変更しました。これはスマホのUIを参考にしています。変えすぎると操作が伝わらなくなってしまい、UIとして機能しなくなるので気をつけます。

テクスチャ

今回テクスチャはワールド名にちなんですべて自作しました(paintでしょというのは無しで)。と言ってもゼロから調合したわけではありません。コンクリートはAzPainterでボロノイを生成、skyboxは写真からスポイトした色で雲を描いています。

クレジット表記とスライダーのテロップもテクスチャです。逆にテキストだとメッシュの陰になっても隠れずどこまでも表示されちゃうし字詰め等が厳しい(つらい)のでテクスチャでやります。Affinity Designerはいいぞ。
フォントはタイプラボの『ルイカ』を使用しております。
https://www.type-labo.jp/

おわりに

『write nest』は誰しもへ開かれていますが、しかし、全員に合うということは難しいでしょう。人はみんな違う存在です。そのために創作はある。

Descriptionは「obscure scene notes」です。obscureは【世に知られていない】【不明瞭な】といった意味です。sceneはunityでもよく見る単語で【場面】や【(劇・小説などの)背景】などの意味があります。noteは名詞で【記録】、動詞で【注意を払う】という意味です。
ワールドは思考の場面を想定して作られた背景です。秘密にしたいこともわからなかったことも、このワールドは包みます。ここで書いたことは、あなたのものだよ。

『write nest』は自作のなかではじめてコミュニティラボを抜けパブリック化したワールドです。パブリック化したことで、このワールドを必要とする人が見つけやすくなっていたら幸いです。

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参考(順不同)

VRChatのワールドでuGUIを使う
https://qiita.com/gatosyocora/items/cc13445bfb18d55077c4

VRCでuGUIを使ってギミックを作る備忘録
https://note.com/solphy/n/n655b4cad234c

【VRChat】uGUIを使ったワールドメニューのサンプル公開+解説
https://rakurai5.fanbox.cc/posts/436158

uGUI - VRChat 技術メモ帳 - VRChat tech notes
https://vrcworld.wiki.fc2.com/wiki/uGUI

【VRChat】【SDK3(Udon)・SDK2対応】Qv PenをQuest対応する方法!
https://till0196.com/post12596

ロバート・マッカーター『名建築は体験が9割』
https://xknowledge-books.jp/book/9784767824666/

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