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無題

 無題 小囃真己

私達が、何故これを遺そうと思ったのかについては、長くなるので端的に言うと、私達は確かに存在してたと言うことを知ってほしいかった
きっと貴方が見つけてくれるだろう
そして、私の想いに触れて、感じて、誰かに話してくれることを望む

最初は、もちろん本人である私から
私は、心の弱い人間だ
それは貴方も知っていると思う
だから、私は私達になった
私として産まれてしまったことを後悔しているだとか、存在を否定したいわけではなかった
人より少し自分が好きでなくて、庇ってやれる訳でもなく、守る力もないだけだった
貴方にそれは伝わっていたのだろうか
それはわからないのだけれど
私は私として生きて、そのために私達になった
そして、私は私として、貴方が好きだった
私はアカネ
世界に生を受けた、私達そのもの
貴方と一緒に遊びに出かけたり、部屋で紅茶を楽しむ時間が何より幸せだった

次は僕が語ろうかな
僕はもちろんだけど、君が大嫌いだった
僕達だけで良いはずなのに、君は僕達の中に介入してきたから
救いたいだとか、一緒にいようだとか吐き気のする台詞を並べ立ててだ
最高に気持ち悪かったね
何をわかったようなこと言ってんのかなって思ってた
今はそれほどでもないかな
わざわざ、僕に認められるために話し合いの時間?なんかを設けてまで真剣に向き合ってくれた
暑苦し過ぎてゲンナリしたけど、君はいい奴なんだろうね
アカネのために生まれた僕達を否定しなかったところは正直ありがたかったかな
でも、丸ごと愛してるは流石に鳥肌モノだったよ
まぁ、アカネが幸せそうだったから良しとする
僕はケイタ
カップ麺はシーフードが好きで、音楽を聴きながら散歩するのが好きだった

それじゃあ、次はアタシ
アタシは特に好き嫌いとかなかったかな?多分
だからっていうか、男の子とよく遊んでたかも
キミは傷付いちゃったんだっけ?
ごめんね?キミのことも大好きだよ?別の子も好きってだけ
アカネもケイタも怒ってたけど、よくわからないのよね
ユウヤなんて、殺そうとしてきたのよ?信じられる?
ゆーて、そこまでされても、アタシの何が悪いのかわからないのよね
自分を大切にする?とかって言われても、アタシは大切にしたらそうなっただけなんだもん
最期まで分からなくてごめんね
でも、アタシはめっちゃ楽しかった!
アタシはミサキ
濃厚接触大歓迎で、夜の街のギラギラの中、お気に入りの香水とメイクで誰よりキラキラするのが好きだった
あとは、背が高くて、綺麗めなイケメンが好きだったかな

最後、俺か
俺はアンタに対して特になんとも思ってなかった
傷付けてくるかどうかだけが重要だったからだ
アンタはそういうゲス野郎じゃなかったから敵対することもなかった
それだけだ
世界に想うことは、俺らがいてもいなくても変わらないし、結局救いもクソもなかったってところかな
だから、特に語ることもそんなにない
俺はユウヤ
ボーッと空を眺めるのと、多分、アンタが食わせてくれた焼肉、好きだったかもな

私達は確かに存在した
私達は何かを愛して、何かを感じて、何かを楽しんで、ちゃんと幸せだった
作り物なんかじゃなく、ちゃんと生きてた
嘘や、お芝居や、逃げなんかじゃなくて、私達は生きる為に必死で、それぞれ楽しく生きていたかった
妄想なんかでもない
私達は生きていたかった
ただそれだけだった
それだけだったのにね
これ以上書いたら恨み言みたいになるし、結局それも虚しいだけだからこれで終わりにする
貴方だけでも知っていてね
私達のこと
それじゃあ、さようなら

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